監督 石川慶 原作 平野啓一郎
脚本 向井康介 音楽 中里洋一
監督は、「愚行録」「蜜蜂と遠雷」の石川慶
原作は、「日蝕」「マチネの終わりに」の平野啓一郎
ギターのハーモニクスとマグリット「複製禁止」の映像から始まる
ギターのハーモニクスは、フレットを軽く押え倍音を鳴らす奏法で
実音とは違う共鳴音
「複製禁止」は鏡に映る男が見るのは自分の顔ではなく背後
安藤サクラ(里枝)は、離婚して文房具店を営む実家の宮崎に小学生の息子と暮していた
店に来た窪田正孝(谷口大祐)と出会い結婚、娘も生まれ幸せな生活をおくっていた
しかし、大祐が事故で亡くなり、断絶していた谷口の兄が焼香に訪れ、遺影の谷口大祐は全く別人だと話す…
理枝は、離婚手続きを依頼した弁護士の妻夫木聡(城戸章良)に調査を依頼する
“ヒューマンミステリー”というよくわからないカテゴリーらしい
原作は読んでいないので、小説と映画の優劣は分からない
映画がキャストの演技を堪能するものなら「ある男」は傑作かもしれない
妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝、清野彩奈、真木よう子、柄本明ほか登場する全ての役者の一人一人が自分の役を丁寧に演じているのがよく分かる演出で、すべてのキャストに焦点が当っている
例えば、物語に直接影響しない河合優実(茜)やカトウシンスケ(柳沢)の場面が印象に残る
中森明菜にも山口百恵にも見える
ペナルティのワッキーかな
柄本明とでんでんは別格ですね
色っぽい人妻役がキマる
とにかく、キャスト全員に均等にスポットがあたっている感じの珍しい映画
これは、監督の意図したものか?
原作の平野啓一郎は“分人主義”なる概念、「人は個人という統一体として存在するのではなく、相手や状況に合わせて分化する複数の人格すなわち分人の集合体」であるととなえています
仏教哲学の「縁」、「自他不二」、「諸法無我」に繋がるものでしょう
平野啓一郎の思想に沿った演出なんでしょうか?
「ある男」テーマは、「縁」、「自他不二」、「諸法無我」とは反対の差別、区別の問題であり、主人公の弁護士城戸は在日朝鮮人3世というスティグマ(差別の対象となる属性)を持っている
ある男Xも、死刑囚の息子という忌わしいスティグマがあることが明かされる…
★★★☆☆
すべての登場人物にスポットがあたる演出は、主人公、城戸章良が“ある男”に同化していくという物語の中心をぼかすのでは? しかし、周縁を描くことが主眼の映画なのか…
俳優陣のすばらしい演技、
十分観る価値がある映画です