吉川英治の『三国志』を吉川英治全集第27巻で読んだ。第2巻では「臣道の巻」(つづき)、「孔明の巻」、「赤壁の巻」、「望蜀の巻」が掲載されている。
劉備の謀臣であり軍師となった諸葛亮孔明の出蘆、そして曹操を迎えての赤壁のたたかいなど、三国志中最も華やかで、息詰まるような展開を続ける巻である。この巻は、蜀を支配しようとして劉備軍が蜀に入るが、「劉璋を殺してでも」という周辺に対し、相変わらず「そこまでしては」と迷う劉備。仁君なのか優柔不断なのか劉備玄徳という人物の良くわからない面がここでも書かれている。
全集が刊行されたのが1966年だから、『三国志』が執筆されたのは、相当前のことになるのだろう。やはり吉川『三国志』においては文体が古く、決して読みやすいとは言えないが文学としての香り高さを持っている。