宮崎駿監督の『風立ちぬ』を鑑賞して、この作品のもとになった堀辰雄の『風立ちぬ』という同名の小説があると知った。ミステリーや時代小説を主に読んでいる山クジラは堀辰雄という名前ぐらいは聞いたことがあっても、その作品について触れる機会はなかった。
そこでまず堀辰雄のこと。1904年東京生まれ。東京帝国大学国文科卒。一高時代、芥川龍之介、室生犀星に師事し、大学在学中は中野重治らと活動。詩、エッセイ、ランボーの翻訳等を発表した。1930年に処女短編集『不器用な天使』を刊行、その後本格的に小説を発表し始める。プルーストやリルケの影響を受け、独特の抒情的な作風を確立した。
今回読んだのは、角川文庫版でアニメ『風立ちぬ』が評判になるとさっそく文庫版が書店に並んだので購入しておいた。本書には『美しい村』『麦藁帽子』『旅の絵』『鳥料理』などといっしょに『風立ちぬ』がおさめられている。『風立ちぬ』を読みながら、堀越二郎の出会う女性が肺結核でサナトリウムで治療する場面が出てくるが、堀の『風立ちぬ』は全部がそのサナトリウムでの物語である。そして、「風立ちぬ、いざ生きめやも。」という、映画の中にも登場した言葉が出てくる。結核という不治の病、戦争の悲惨、こうした困難な時代にあって、生きぬこうという呼びかけが映画『風立ちぬ』で貫かれているだと思う。
それにつけても、私には堀辰雄の『風立ちぬ』は抒情的に過ぎて、いささか疲れる読書だった。そういう人間になってしまったのかもしれないと若干反省。