昭和の前半(…って、あいまいですね)に活躍された小説家。知らなかったのですが、たまたま短編をひとつ読む機会がありもう少し読んでみたいなーと思っていたところで見つけたのがこの本。
短編4編とシリーズ物「顎十郎捕物帳」「平賀源内捕物帳」から計27編が収められています。
今の小説とは 日本語の美しさが違う。 …美文、というとまた違ってきますがコトバの使い方が美しい。時折混ざるカナ文字と漢字につくルビが若干文章を読みづらくしているけれど、それでも心地よく読むことができます。
久生十蘭という方は口述筆記で原稿を作り、しかも推敲に推敲を重ね何度も口述を繰り返し作品を仕上げていたそうで、耳から入ってくる文章だけによいリズムを持つ文章となったのでしょうね。
さて
内、何編かご紹介
「湖畔」
父がわが子に犯罪告白を書き遺す、というスタイルで書かれている作品。冒頭に妻=子の母を殺した と告白しているのですが、その罪はすでに裁かれ放免されており
ではなぜ彼は失踪しなければならないのか・・・
異相で自分に自信を持てないしかしプライドの高い主人公が美しい妻の愛情を疑い殺してしまう という筋立ての話はなんとなくよそでも読んだことがありそうなのですが
あらら。
あれれ?
おお、なんてことでしょう~犯罪小説というよりラブストーリィ・・・
主人公が(を)愛するご婦人ですが、昭和初期のご婦人の話し方というのはこんなだったのでしょうか:
ボートに乗るよう誘いかけたが乗ろうとしない主人公に
「アラ、お厭ですの、お乗り遊ばせよ。実にどうも、大変に愉快ですわ」
主人公に斬新な情意(どんなもの?)をこめて囁くコトバ
「よく来て下すったわねェ、嬉しいこと」
仮名遣い原文のままですが、あまぁーーい感じがしますね。
いかなる犯罪が行われたのか、そもそも犯罪は行われたのか?
最終的に 愛 を選びとった主人公です。妙にさっぱりとした読後感でした。最後のシーンがああなのに。妙に。
「水草」
短編というかショートショート?!という長さの作品。語り手と同調することによって、余韻が残ります・・・。どうして、そしてどうなったかの説明は一切なし。読者の脳内で想像力が回転することでしょう。
「骨仏」
・・・・・・・・。
ぽつん。とおかれた一文の重さよ・・!小さな切れはしの中にいろんな情念が凝縮されています。かといって煽情的な言葉や文体が使われてるわけではありません。
言葉は生き物といいますが、同じ日本語なのにこの変容ぶりは驚きです。
それにしても 世の中にはいろいろな小説があるものだ。すべてを読むわけには行きませんから、これは と思った作家の本だけでもきっちり読んでいきたい。
ふふふ、今「青空文庫」で十蘭作「キャラコさん」を見つけて読んでいますが
おもしろいっ。
短編4編とシリーズ物「顎十郎捕物帳」「平賀源内捕物帳」から計27編が収められています。
今の小説とは 日本語の美しさが違う。 …美文、というとまた違ってきますがコトバの使い方が美しい。時折混ざるカナ文字と漢字につくルビが若干文章を読みづらくしているけれど、それでも心地よく読むことができます。
久生十蘭という方は口述筆記で原稿を作り、しかも推敲に推敲を重ね何度も口述を繰り返し作品を仕上げていたそうで、耳から入ってくる文章だけによいリズムを持つ文章となったのでしょうね。
さて
内、何編かご紹介
「湖畔」
父がわが子に犯罪告白を書き遺す、というスタイルで書かれている作品。冒頭に妻=子の母を殺した と告白しているのですが、その罪はすでに裁かれ放免されており
ではなぜ彼は失踪しなければならないのか・・・
異相で自分に自信を持てないしかしプライドの高い主人公が美しい妻の愛情を疑い殺してしまう という筋立ての話はなんとなくよそでも読んだことがありそうなのですが
あらら。
あれれ?
おお、なんてことでしょう~犯罪小説というよりラブストーリィ・・・
主人公が(を)愛するご婦人ですが、昭和初期のご婦人の話し方というのはこんなだったのでしょうか:
ボートに乗るよう誘いかけたが乗ろうとしない主人公に
「アラ、お厭ですの、お乗り遊ばせよ。実にどうも、大変に愉快ですわ」
主人公に斬新な情意(どんなもの?)をこめて囁くコトバ
「よく来て下すったわねェ、嬉しいこと」
仮名遣い原文のままですが、あまぁーーい感じがしますね。
いかなる犯罪が行われたのか、そもそも犯罪は行われたのか?
最終的に 愛 を選びとった主人公です。妙にさっぱりとした読後感でした。最後のシーンがああなのに。妙に。
「水草」
短編というかショートショート?!という長さの作品。語り手と同調することによって、余韻が残ります・・・。どうして、そしてどうなったかの説明は一切なし。読者の脳内で想像力が回転することでしょう。
「骨仏」
・・・・・・・・。
ぽつん。とおかれた一文の重さよ・・!小さな切れはしの中にいろんな情念が凝縮されています。かといって煽情的な言葉や文体が使われてるわけではありません。
言葉は生き物といいますが、同じ日本語なのにこの変容ぶりは驚きです。
それにしても 世の中にはいろいろな小説があるものだ。すべてを読むわけには行きませんから、これは と思った作家の本だけでもきっちり読んでいきたい。
ふふふ、今「青空文庫」で十蘭作「キャラコさん」を見つけて読んでいますが
おもしろいっ。