角田 光代 著作
図書館で予約して数ヶ月経ち、やっと自分の番がやってきた、直木賞受賞作品。
女性にはさまざまな生き方がある。
大きくわければ、結婚の有無、そして子供の有無。
それによってライフスタイルや人生観も大きく異なってくるだろう。
この本は、シングルで会社社長を営む葵と既婚者で小さな娘を持つ小夜子が
共に仕事をすることになることから話が始まる。
大きくかけ離れた相手の住む世界。
それは、この本の題名「対岸」を意味するところである。
しかし、住んでいる世界が違う、価値観が違う・・ということは
それほどまでに相手を理解しがたいことなのだろうか?
この本を読んだ時、男性はこの話を理解できるのだろうか?と思った。
そこには女性独特のものがあるような気がした。
とにかく女性は、同じ環境や趣味、同じ立場の同姓と群れたがる。
それ以外の価値を持つ人たちとは、群れたがらない・・というか
拒絶する傾向があるように思う。
たぶん、そうすることが楽だからだろう。
この本の登場人物、小夜子もそのように感じた。
葵とは住む世界が違うのだと・・。
しかし、だからといってこの話はそれで終わらない。
この二人は最終的には相手を理解し、共に新たに仕事を始めるのだ。
ほんとうのところ、相手のことをどれだけ理解しているのか。
表面的な事だけで判断し、案外相手の本当の姿は見ていないのかもしれない。
対岸のような場所にいるであろう相手でも、
きっと根本的には理解できる身近な存在なのではないかとこの本を読んで感じた。
自分の中で、勝手に「対岸」を作らないようにしたい。