明けましておめでとうございます
本年もよろしくお願いいたします
四谷のしっぽ
年末年始、引きこもりテレビの前でゴロゴロしていた私も
仕事始めを前にようやく玄関の扉を開けてみました。
少し雨が降ったのでしょう。
湿った空気の中に土の匂い。
元日のピンと張りつめた神聖な空気感はどこかへ去り
外の世界は日常を取り戻していました。
特別な日々はもう終わり。
またいつもの生活が始まる…
正月気分を切りかえて現実に戻らなければ。
何気ない匂いが私の背中をポンとたたいたような気がしました。
新たな気持ちでがんばろうと意気込んだと思ったら大寒波がやってきて
寒い、寒い…
と、またコタツで小さくなっています。
温かい家でぬくぬくしながら
今年は何をしてみよう、どこに行ってみよう…
頭の中ではすでにいろんなことが起こっています。
やる気がみなぎる日もあれば、何もしたくない日もあり。
妄想と現実を行ったり来たりしながら今年も進んでいくのでしょう。
その繰り返しの中でよいめぐり会いがあるように
興味を持ったらやってみる、行ってみる
その精神を忘れず今年も様々なことを吸収できればと思っています。
本年も四谷のしっぽをよろしくお願いいたします。
もう15年ほど前の話になりますが
1年間、アメリカで生活をしたことがありました。
はじめの4か月間ホームステイしたのは老夫婦の家で、
二人は清潔な部屋を用意して待っていてくれました。
~ホームステイ先・私の部屋~
部屋には窓がひとつ。
白い枠で上下スライド式。
窓辺に小さな机が置かれていて、
私はここに座り日本の友人たちにメールを打ったり
「今日も英語がよくわからなかった…」
と気休めに辞書をめくってみたり、
何かと心の折れる海外生活のスタートを
ひとりになれる静かなこの窓辺が癒してくれました。
~右から2つめの窓が私の部屋~
私の部屋は家の前の庭に面していたので、
小さな窓枠から家の前を通る人や
お父さんが芝を刈る姿がよく見えました。
貨物列車が通る音、鳥の鳴き声、長閑な風景をながめながら
言葉や習慣に慣れる日が来ることを待っていたのです。
大きな窓からながめる風景も開放的、絵画的で素敵だけれど
小さな窓枠から見る限られた世界はとても人間的で、心くすぐられるものがありました。
大きな絵画の中の一ヶ所にカメラがズームして寄っていくように
小さなフレームの中で繰り広げられる他愛もない日常の映像には
ストーリー性が感じられたのです。
~大学のキャンパスからホームステイ先の住宅街を望む~
~大学のキャンパス~
アメリカ南部の田舎町、
緑に囲まれた町にはいつも芝の匂いが漂っていました。
日本の公園にある芝とは違い、とても力強い匂いを放ち
窓を開けると風にのって部屋に入り込んで来ます。
時にむせ返るようなその匂いは息苦しく感じることがありました。
今でも芝の匂いを嗅ぐと胸が苦しくなるのは
当時の失敗や楽しかった思い出がグチャグチャになって
フラッシュバックするからなのでしょう。
我が家にも窓辺の書斎が欲しい。
緑の匂いが漂う小さな窓辺に座って書き物がしたい。
そう思い続けてきました。
我が家の2階に小さな窓があります。
そこからは隣りの家の庭が見下ろせるようになっていて
目線の高さに なんじゃもんじゃの木(ヒトツバタゴ)が見えます。
書斎をつくるならここしかない…
そう思い、数年前、長机を購入。
こっち向きかな、それともこっち向きかしら…
ああじゃない、こうじゃないとレイアウトが決まらないまま疲れて
結局、取り込んだ洗濯物の置き台に。
ところがこの夏、なぜか急にやる気になり書斎づくりにとりかかることにしました。
思い立ったが吉日。
猛暑の中、
「おりゃ~」
っと机を持ち上げ、物置部屋を大改造。
机にはアメリカのキャンパスで撮った写真を飾りました。
大学のアリーナで行われる卒業式を見に行く際、知人に撮ってもらった写真です。
新緑の時期、フレッシュな緑の芝に囲まれたキャンパス。
1年の滞在期間が間もなく終わり、帰国を間近に控えた私は
とてもすっきりした笑顔を浮かべています。
大都会の東京でもあの芝の匂いと緑色の風を感じていたいと思い
数ある写真の中からこの一枚を選んだのです。
この部屋はエアコンがないので夏は蒸し風呂状態。
暑くて今はまだ座れません。
もう少しして秋になったら、ここに座って書き物をしたり
デザインをしたり、何かを作ってみたりしてみよう。
きっと楽しいアトリエになることでしょう。
若く、こわいもの知らずだったあの頃のように
また何かにチャレンジしてみよう。
そんな気持ちが湧いて来るのを感じています。
夜になると「リン、リン」と虫の声が聞こえるようになりました。
昨日まではまったく聞こえなかったのに。
秋が近いのだと知らせてくれているのでしょう。
涼しい風がこの窓辺にやわらかな空気を運んでくる日を待ちわびています。
我が家で一番日当たりがいい場所、それはベランダ。
カニ歩きをしてようやく一人通れるくらいの狭く小さな空間です。
お日さまの光がいっぱい当たるのでプランターを置き、花を育てています。
暖かな日差しとやわらかい風を浴びて、彼らはとても気持ちよさそうです。
休日になると窓辺に座り、彼らの様子を確かめます。
芽は出そうかな。
成長しているかな。
お隣りの庭にやって来る鳥の声と
明るく暖かな光が差し込む窓辺、
そこに流れる穏やかな時間。
洗濯物が風に揺れる度、その光は揺らぎ、
静かなひとときに、時折変化をもたらしてくれます。
至福の時。
ペースを落とし、ゆっくり楽しむ、
刺激を求めた若い頃とは違い、静かで穏やかな生活に喜びを感じるのは
少し年をとったからでしょうね。
近頃、ブログの更新も少しゆっくりになってきました。
このページも我が家のベランダと同じ、小さな空間です。
美味しいお茶とお菓子を用意して、
何にも追われることのない、ゆっくり流れるささやかな時間を
楽しんでいただけたらと思います。
このブログを始めてから、嬉しい出来事が舞い込むようになりました。
たまに吹いてくる予想外の風が、
平凡な生活に小さな変化をもたらしてくれています。
可能性で満たされ、美しく花開く蕾のように
またいつか ポンッ とはじける心地よい瞬間が訪れる日を心待ちにしています。
また1年よろしくお付き合いください。
昨年、挿し木に挑戦したバラが蕾をつけました。
http://angel.ap.teacup.com/yotsuyanoshippo/394.html
http://angel.ap.teacup.com/yotsuyanoshippo/396.html
日に日に数を増やし、ふくらみ、
美しく花開いたその姿を皆さまにご披露できる日も、
さほど遠くはないようです。