先日、東京日本橋の三井記念美術館で開催されている、奈良の古寺と仏像展を観てきまし
た。この三井記念美術館は、日本・東洋の優れた美術品を収蔵している三井文庫別館が、日
本橋に移転し平成17年10月に開設された新しい美術館です。今回の展示会は、平城遷都
1300年を記念する特別展で、奈良の寺院に祀られる国宝、重文を含む優れた仏像を集め
たものでした。
美術館は、夕方に行ったにも係わらず多くの人が来ていたのには驚きました。これが仏教
ブームの影響なのかと思いました。展示会場内には50体ほどの仏像がありましたが、素晴
らしいと思った仏像は残念ながらありませんでした。その時の観る側の心の状態が乱れてい
たのかも知れません。
しかし興味を持った仏像としては、かつて奈良西大寺の五重塔に安置されていたと伝わる
釈迦如来・阿弥陀如来・室生如来・阿閦如来の4体がありました。奈良時代の後半から平安
時代の初期にかけて作られた4体でどの仏像も穏やかで清楚な暖かさをもった仏像でした。
また、美術館のガラスケースの中に座した仏像は拝む対象の仏像ではなく、美術品として
観る対象に変わってしまっているのが少し残念です。詳しいことは分かりませんが、このよ
うな美術展に仏像を出展する場合は、事前に魂を抜いて持ってくるのだと思うので、これら
の影響があって何か足りない感じを受けるのかも知れません。
一般的に寺の本堂に置かれている仏像を拝む時は、やはり何かしら仏像から出ているエネ
ルギーのようなものを感じられますが、都会のビルの中のさらにガラスケースの中に入れら
れた仏像はどうしても観る対象となってしまいこちらからのエネルギー放出の方が多いと思
います。さらに、その場に立ち尽くして観るということは出来ないのと、展示ルートに沿っ
て観なければならないとの制約があることから疲れてしまいます。
今回の展示会に行って感じたことは、仏像は本来あるべき寺で心静かに拝顔し祈る行為が
最も大切であり、単なる美術品として観るべきものではないと思われました。
合掌