9月10日(土)の夕方、久しぶりにNHK交響楽団定期演奏会へ出かけました。9月4
日の(日)に東京都交響楽団の演奏で素晴らしいモーツァルトの曲を3曲も聴いたあとの演
奏会なので、N響の演奏にはさらにレベルの高い音楽を求めたいと思いながらNHKホール
へ足を運びました。
演奏曲目はシベリウス:ヴァイオリン協奏曲ニ短調作品47とドヴォルザーク:交響曲第
9番ホ短調作品95「新世界から」の2曲で、指揮はヘルベルト・ブロムシュテット、ヴァ
イオリン独奏は竹澤恭子でした。当初はレオニダス・カヴァコスが演奏することになってい
ましたが健康上の理由により来日が不可能となり代わって、竹澤恭子が演奏しました。原発
の関係で来日を控えたのではとの声が休憩時間にいろいろなところから聞かれました。
今回の演奏会で感じたことですが、前半のシベリウスのヴァイオリン協奏曲は、個人的に
好きな分野の作品ではないので、大きな感動は起こりませんでした。ただ竹澤恭子のヴァイ
オリンは低音が非常に暖かく膨らみのある音色で聴いていて和みました。
演奏の内容ですが、あまりにも竹澤が自分の世界に入ってしまった結果オーケストラとの
協調の面で一体感がなかったような感じを受けました。演奏しながら曲の中にどっぷりと浸
かっている様は、体全体で弾いているアクションから十分に受け取れるものでした。
竹澤が奏でるシベリウスの旋律ですが、時々音程が若干低くなるような箇所があり個人的
に違和感があった演奏内容でした。レオニダス・カヴァコスの代役なので練習面で時間的な
問題があったのかもしれませんが少し音程に関して気になりました。その他の表現の面では
そこそこ良い内容の演奏であったと思います。今日の演奏を聴いた限りでは、シベリウスで
なくブラームスのヴァイオリン協奏曲を弾いてほしいと個人的に思った次第です。
後半のドヴォルザークの交響曲第9番ホ短調は、ヴァイオリンのパートを除けばその他の
パートは非常によくまとまっていたと思います。なぜ毎回弦楽器のなかで特に第一ヴァイオ
リンのパートに問題が起きるのか不思議です。その他の弦楽器であるビオラやチェロ、コン
トラバスの演奏は音が響き演奏内容もブロムシュテットの意図が伝わって良かったと思いま
す。
今回第一ヴァイオリンは8プルの規模で演奏されていましたが、音に厚みがなく細く単調
な音になっていたのが気になりました。もっと音の厚みと全員による瞬発力のある音にして
欲しいと思います。ヴァイオリンの音がか弱いので常に管楽器の音に完全に負けてしまい、
全体のバランスが崩れていまいとても残念でした。
もともとブロムシュテットの指揮は華麗な指揮さばきでなく、どちらかというと硬さを感
じるものですが、指揮のなかから作り出される音楽は暖かさと美しさと清らかさを感じさせ
るものがあります。
第二楽章では池田昭子のコールアングレイの演奏が特に光りました。夕陽と人生の晩秋を
感じさせる音色を聴きながら涙が出ました。この時のヴァイオリンは弱音でありますが美し
くサポートしていたので少しだけ安心しました。この部分でもヴァイオリンが足を引っ張る
ようであると最低の内容になっているところでした。
東京都交響楽団のヴァイオリンのパートと一度入れ替えて演奏すると、最高の演奏内容に
なるような気がしてなりません。昔のN響のヴァイオリンはもっとレベルが高かったのです
が、どうしたのでしょうかね。最近いつもN響を聴くとこのような感想を持ってしまいます。
会場の聴衆の反応ですが、シベリウスのヴァイオリン協奏曲のときはホールの中が拍手の
渦とブラボーの声でもの凄い状況でした。それに対してドヴォルザークの交響曲の時はシベ
リウスに比べ20%程度反応がダウンしていました。
個人的には会場の方の反応と全く逆でした。音楽は聴く人によって異なるのが普通ですか
ら気にはしていませんが、みなさんどこまで真剣に聴いているのか余計なお世話ですがちょ
っと心配になりました。
鳴り止まぬ拍手にブロムシュテットは6~7回我々の前に姿を現し丁寧に感謝している様
子を見ながら、80歳半ばにもかかわらず今回のような演奏を我々に聴かせてもらえる喜び
を感じ、自然と心の中で「南無阿弥陀仏」と唱えている自分がいました。これからも元気で
演奏を聴かせて欲しいと願うばかりです。 合掌