「なんだよ、あの化け物。ひょっとしたら前よりひどい目に遭うかもしれねぇぜ」と、ガッチが走りながら言いました。「青騎士か――。ドリーブランドのおとぎ話で聞いたことはあるが、この目で見たのは初めてだ」
サトルは、ガッチが自分と並んで走るほど足が速いのに、驚きました。
「ガッチが、もっと強いやつが出てこい、なんて言うからだよ」と、サトルは怒ったように言いました。「――もしかして、ぼくよりぜんぜん足が速いんじゃないの」
「へへ、ばれたか」と、ガッチはぺろりと舌を出しました。「疲れたら言いな。サトル一人くらい担いで走るのは、平気だからよ」
サトルは、「ちぇっ――」と舌打ちをしながら、振り返りました。
「ねぇ。青い鎧って事は、もしかするとあいつに関係するのかもしれない……」と、サトルはガッチを見ながら言いました。「あっ、あいつ馬を走らせた――」
「ヒェー」と、ガッチが他人事のようにいいました。「あの馬、とっくに寿命が尽きてると思ったが、よく走ってるなぁ」
「なに言ってるんだよ、人ごとみたいに。ぼくはごめんだからね。あんな物に刺されるのは――」と、サトルは言いました。
――――
二人は、川に沿って、ごつごつとした川岸を休むことなく逃げ続けました。後を追いかけてくる青騎士は、ごつごつとした地面で馬を走らせるのに手間取り、二人との距離が、少しずつ広がっていきました。
「よし、あの流木を拾って、川に逃げるぞ」と、ガッチが岸に打ち上げられた流木を指さして言いました。
サトルが見ると、どうにも動かせそうにないほど大きな木が、川岸に打ち上げられていました。
「あれって、すぐ動かせるの――」と、サトルは心配そうに言いました。
「あん?」と、ガッチは今さら気がついたように言いました。「――まかせとけって。おれ様の力を忘れたのかよ」
サトルは、言われるまま太い流木に飛びつくと、勢いをつけて川に押し出しました。
と、心配したとおり、サトル一人の力では、砂に乗り上げた流木を、びくりとも動かすことができませんでした。
「ガッチ、近づいてきてるよ!」と、サトルが歯を食いしばりながら言いました。
「――ああ、これから本気出す所だ」
流木に手を掛けたガッチが言うと、びくりとも動かなかった流木が、ガガンと音を立てて砂の上を動き始めました。
「それっ!」と、サトルは祈るような気持ちで、重い流木を押す手に力をこめました。
「――よし、もうひと息だ」と、ガッチが言いました。
びくともしなかった流木が、するすると川に向かって進んで行きました。すると、川を進んで行く流木が、自分から重い殻を剥がすように、ばらばらと崩れ、みるみるうちに速そうな丸太舟に変わりました。
ガッチは、流木の変化に驚きつつも、サトルが丸太舟を川に押し出す前に、そばに落ちていた板切れを拾い上げ、川に乗り出した丸太舟に、ぴょんと飛び乗りました。
サトルは、ガッチが自分と並んで走るほど足が速いのに、驚きました。
「ガッチが、もっと強いやつが出てこい、なんて言うからだよ」と、サトルは怒ったように言いました。「――もしかして、ぼくよりぜんぜん足が速いんじゃないの」
「へへ、ばれたか」と、ガッチはぺろりと舌を出しました。「疲れたら言いな。サトル一人くらい担いで走るのは、平気だからよ」
サトルは、「ちぇっ――」と舌打ちをしながら、振り返りました。
「ねぇ。青い鎧って事は、もしかするとあいつに関係するのかもしれない……」と、サトルはガッチを見ながら言いました。「あっ、あいつ馬を走らせた――」
「ヒェー」と、ガッチが他人事のようにいいました。「あの馬、とっくに寿命が尽きてると思ったが、よく走ってるなぁ」
「なに言ってるんだよ、人ごとみたいに。ぼくはごめんだからね。あんな物に刺されるのは――」と、サトルは言いました。
――――
二人は、川に沿って、ごつごつとした川岸を休むことなく逃げ続けました。後を追いかけてくる青騎士は、ごつごつとした地面で馬を走らせるのに手間取り、二人との距離が、少しずつ広がっていきました。
「よし、あの流木を拾って、川に逃げるぞ」と、ガッチが岸に打ち上げられた流木を指さして言いました。
サトルが見ると、どうにも動かせそうにないほど大きな木が、川岸に打ち上げられていました。
「あれって、すぐ動かせるの――」と、サトルは心配そうに言いました。
「あん?」と、ガッチは今さら気がついたように言いました。「――まかせとけって。おれ様の力を忘れたのかよ」
サトルは、言われるまま太い流木に飛びつくと、勢いをつけて川に押し出しました。
と、心配したとおり、サトル一人の力では、砂に乗り上げた流木を、びくりとも動かすことができませんでした。
「ガッチ、近づいてきてるよ!」と、サトルが歯を食いしばりながら言いました。
「――ああ、これから本気出す所だ」
流木に手を掛けたガッチが言うと、びくりとも動かなかった流木が、ガガンと音を立てて砂の上を動き始めました。
「それっ!」と、サトルは祈るような気持ちで、重い流木を押す手に力をこめました。
「――よし、もうひと息だ」と、ガッチが言いました。
びくともしなかった流木が、するすると川に向かって進んで行きました。すると、川を進んで行く流木が、自分から重い殻を剥がすように、ばらばらと崩れ、みるみるうちに速そうな丸太舟に変わりました。
ガッチは、流木の変化に驚きつつも、サトルが丸太舟を川に押し出す前に、そばに落ちていた板切れを拾い上げ、川に乗り出した丸太舟に、ぴょんと飛び乗りました。