なすがままにまかせた二人は、とうとう目を開けているのも億劫になり、次々と湧き出るあくびをこらえることなく、いつの間にか、目を閉じて寝息を立て始めました。
川を漂う丸太舟は、さながら骸が眠る棺のようでした。
――――……
「……ん?」
と、サトルが目を覚ましました。けれど、サトルはなぜ自分が目を覚ましたのか、わかりませんでした。なぜか、まだ寝たりないような不愉快な感じがしたのでした。見れば、ガッチはサトルの足元で、ぐうぐうといびきをかきながら、まだ眠りこけています。白く立ちこめていた靄は、眠っている間にすっかり姿を消していました。
きっと、変な夢を見て起きちゃったんだろう、とサトルは一度大きな伸びをして、またころん、と横になりました。
「えっ?」
しかしサトルは、勢いよく跳ね起きました。いつのまにやら丸太舟が、前よりも短くなったように思われたのでした。目をこすって、よく注意しながら舟の前後を見直しました。
やはり、どうも寝こむ前よりも、どのくらいとは言えませんでしたが、確かに短くなっているようでした。
サトルは急に目が冴えて、丸太舟の端をのぞきこみました。なぜか、丸太舟の端は、切れない刃物で乱暴に削り取られたように、ささくれた断面を見せていました。
(やっぱり、短くなってる……)思いながら、サトルはガッチが寝ている方の端をのぞきこみました。すると、こちらもなにか切れ味の悪い刃物で、削り取られたようになっていました。
サトルが、どうなってるんだ、と手で触ろうとすると、いきなり水の中から、にょきっとギザギザな物が飛び出してきました。びっくりして飛び下がると、そのギザギザした物は、まるでノコギリで作業をするように、丸太舟を切り始めました。
「――こいつだな、犯人は」サトルは真っ赤になって怒ると、ギザギザした物に近づき、ひと息に引っこ抜きました。
「なんだこいつ……」と、サトルは引き上げた物をしげしげとながめました。それは、長いノコギリのような歯を持った、まだ小さな魚でした。
「こらっ。おまえだな、ぼくらの舟を切ったのは。だめじゃないか、そんなことをしちゃ」と、サトルは怒りながら、コツンッと魚の頭を叩きました。小魚はすまない、と思っているのか、サトルが叩くと、おいおいと泣き始めました。
「よし、今度だけは許してやる。でも、もし今度そんなことをしようものなら、刺身にして食べちゃうからな。いいか――」サトルが、小魚にとくとくと言い聞かせていると、バシャバシャと、また魚の群れのような音が聞こえてきました。サトルは、耳を澄ませてちらっと振り返ると、目の玉が飛び出しそうなほど、びっくりしてしまいました。
川を漂う丸太舟は、さながら骸が眠る棺のようでした。
――――……
「……ん?」
と、サトルが目を覚ましました。けれど、サトルはなぜ自分が目を覚ましたのか、わかりませんでした。なぜか、まだ寝たりないような不愉快な感じがしたのでした。見れば、ガッチはサトルの足元で、ぐうぐうといびきをかきながら、まだ眠りこけています。白く立ちこめていた靄は、眠っている間にすっかり姿を消していました。
きっと、変な夢を見て起きちゃったんだろう、とサトルは一度大きな伸びをして、またころん、と横になりました。
「えっ?」
しかしサトルは、勢いよく跳ね起きました。いつのまにやら丸太舟が、前よりも短くなったように思われたのでした。目をこすって、よく注意しながら舟の前後を見直しました。
やはり、どうも寝こむ前よりも、どのくらいとは言えませんでしたが、確かに短くなっているようでした。
サトルは急に目が冴えて、丸太舟の端をのぞきこみました。なぜか、丸太舟の端は、切れない刃物で乱暴に削り取られたように、ささくれた断面を見せていました。
(やっぱり、短くなってる……)思いながら、サトルはガッチが寝ている方の端をのぞきこみました。すると、こちらもなにか切れ味の悪い刃物で、削り取られたようになっていました。
サトルが、どうなってるんだ、と手で触ろうとすると、いきなり水の中から、にょきっとギザギザな物が飛び出してきました。びっくりして飛び下がると、そのギザギザした物は、まるでノコギリで作業をするように、丸太舟を切り始めました。
「――こいつだな、犯人は」サトルは真っ赤になって怒ると、ギザギザした物に近づき、ひと息に引っこ抜きました。
「なんだこいつ……」と、サトルは引き上げた物をしげしげとながめました。それは、長いノコギリのような歯を持った、まだ小さな魚でした。
「こらっ。おまえだな、ぼくらの舟を切ったのは。だめじゃないか、そんなことをしちゃ」と、サトルは怒りながら、コツンッと魚の頭を叩きました。小魚はすまない、と思っているのか、サトルが叩くと、おいおいと泣き始めました。
「よし、今度だけは許してやる。でも、もし今度そんなことをしようものなら、刺身にして食べちゃうからな。いいか――」サトルが、小魚にとくとくと言い聞かせていると、バシャバシャと、また魚の群れのような音が聞こえてきました。サトルは、耳を澄ませてちらっと振り返ると、目の玉が飛び出しそうなほど、びっくりしてしまいました。