「あっ、ガッチ。あそこに小屋が見えるよ」
サトルが指差している先には、確かに小さなあばら屋がひとつ、ちょこんと建っていました。けれど、どうもこの綺麗な砂浜には似つかわしくなく、なるべくなら、近づきたくないような感じでした。しかしサトルは、もしかすると誰かいるかもしれない、と言って、嫌がるガッチを無理につかまえて行きました。
「――おい」と、ガッチはサトルをたしなめるように言いました。「今さっき起こったことで、おれはもうなにされても驚かない自信はあるけどよ、ちょっと待て。もう少し落ち着け。あそこになにがあるか、わかったもんじゃないぜ。もっと慎重になれよ、慎重に」
「ううん、大丈夫さ」と、サトルが胸を張って言いました。「なんだかぼく達、運がついてきたんだよ。だからきっと、あの中にだって、怪物がいるなんて事はないよ」
サトルは浮かれているのか、ガッチの言うことには、少しも耳を傾けようとしませんでした。小屋に向かう足も、心持ち弾んでいるようでした。
――トン、トントン、トン。
「誰かいませんか」と、サトルがノックをしながら言いました。けれど、小屋の中からは、なんの返事もありませんでした。
――トントン。トントントン。
サトルは、何度もノックをしましたが、誰かいる気配はありませんでした。
「どうしようか……」と、先ほどまでの意気ごみはどこへやら、サトルは、頼りなさそうに言いました。
「ここまで来たんだから、なにもなしで引き返せないだろ。さ、鍵が開いているかどうか、調べてみなよ」
「うん――」と、サトルはうなずきました。
サトルは、ドアの取っ手を回しました。取っ手は、なんの障害もなく、簡単にくるりっと回りました。
「――どうしよう」と、サトルが心配そうな顔で、ガッチを振り返りました。「開いてるよ……」
ガッチは、サトルの顔を見て、大きくひとつうなずきました。
ギーッ……。
小屋のドアが、ゆっくりと開けられました。中は、窓があるにもかかわらず真っ暗で、二人は目が慣れるまでの間、部屋の中がどうなっているのか、様子をうかがうこともできませんでした。
目が慣れてくると、ドアを大きく開いて、二人はそうっと静かに中に入りました。小屋の中は、家具や食器など、人が住んでいた形跡はひとつもなく、ただ地面がむき出しになっている狭い空間が、あるだけでした。
サトルが指差している先には、確かに小さなあばら屋がひとつ、ちょこんと建っていました。けれど、どうもこの綺麗な砂浜には似つかわしくなく、なるべくなら、近づきたくないような感じでした。しかしサトルは、もしかすると誰かいるかもしれない、と言って、嫌がるガッチを無理につかまえて行きました。
「――おい」と、ガッチはサトルをたしなめるように言いました。「今さっき起こったことで、おれはもうなにされても驚かない自信はあるけどよ、ちょっと待て。もう少し落ち着け。あそこになにがあるか、わかったもんじゃないぜ。もっと慎重になれよ、慎重に」
「ううん、大丈夫さ」と、サトルが胸を張って言いました。「なんだかぼく達、運がついてきたんだよ。だからきっと、あの中にだって、怪物がいるなんて事はないよ」
サトルは浮かれているのか、ガッチの言うことには、少しも耳を傾けようとしませんでした。小屋に向かう足も、心持ち弾んでいるようでした。
――トン、トントン、トン。
「誰かいませんか」と、サトルがノックをしながら言いました。けれど、小屋の中からは、なんの返事もありませんでした。
――トントン。トントントン。
サトルは、何度もノックをしましたが、誰かいる気配はありませんでした。
「どうしようか……」と、先ほどまでの意気ごみはどこへやら、サトルは、頼りなさそうに言いました。
「ここまで来たんだから、なにもなしで引き返せないだろ。さ、鍵が開いているかどうか、調べてみなよ」
「うん――」と、サトルはうなずきました。
サトルは、ドアの取っ手を回しました。取っ手は、なんの障害もなく、簡単にくるりっと回りました。
「――どうしよう」と、サトルが心配そうな顔で、ガッチを振り返りました。「開いてるよ……」
ガッチは、サトルの顔を見て、大きくひとつうなずきました。
ギーッ……。
小屋のドアが、ゆっくりと開けられました。中は、窓があるにもかかわらず真っ暗で、二人は目が慣れるまでの間、部屋の中がどうなっているのか、様子をうかがうこともできませんでした。
目が慣れてくると、ドアを大きく開いて、二人はそうっと静かに中に入りました。小屋の中は、家具や食器など、人が住んでいた形跡はひとつもなく、ただ地面がむき出しになっている狭い空間が、あるだけでした。