サトルの言うとおり、イバラの森の中には、自分から突っこんでしまったのか、セミの怪物のほかにも、いくつかの怪物が全身にイバラを絡みつかせ、苦悶の表情を浮かべて、屍と化していました。中にはからからにひからびて、骨がむき出しになっているものもありました。
「――なんだこりゃ。まるで地獄じゃねぇか」と、ガッチがつぶやくように言いました。「変だなぁ。おれが出てった時には、こんなもんなかったのになぁ……」
「えっ、なにか言ったガッチ……」と、屍となった怪物を、目を細めながら見ていたサトルが言いました。
ガッチは、
「――ウウン」
と言って、しらばっくれるように首を振りました。
サトルとガッチは、怪物の飛び交うイバラの森を、ねむり王のお城に向かって出発しました。それは決して楽な行程ではなく、気が遠くなりそうなくらい入り組んだイバラの枝を、あるものは登り、あるものはくぐり、まるで延々と続くジャングルジムの中に紛れこんでしまったようでした。
体中の筋肉がギシギシと音を立てそうなほど歩き続けて、ようやくお城の跳ね橋にたどり着いた時には、サトルも、そしてガッチまでもが、その場にへたりこんでしまいました。お互いのズボンには、ゲンコツ大の穴が開き、すりむいた膝小僧にも、血の混じった土が張りついていました。
しかし、二人がやっとの思いでねむり王のお城にたどり着き、ほっと息をついたのもつかの間、目の前の跳ね橋が、二人を拒むように持ち上がり始めました。
二人は、あまりの疲労にへたりこんだまま、高く上がっていく跳ね橋を、他人事のように見上げていました。
「負けないぞ!」
と、サトルは鉄のように重くなった体を、元気を振り絞って立ち上がらせました。
ロボットのようなぎこちない動きで、サトルは高く持ち上がっていく跳ね橋に飛びつきました。ガッチも、やや遅れて飛び移り、二人そろって這い上ると、急な傾斜になっていく跳ね橋を、ごろごろと転がりながらお城の中へ入っていきました。
「ふうー……」と、大の字になったガッチが、もうダメだ、と言うように息をつきました。
「やっと来たぞ……」と、サトルも足を投げ出しながら、がっくりと頭を垂れて言いました。
「後は、王様がどこにいるか、探し出すだけだ――」
サトルは、荒い息をしながら、ゆっくりと顔を上げました。お城の中には、サトルが想像していたような巨人の門番や、たくさんの召使いはいませんでした。がらんとしたお城を見回しながら、サトルはまた、ねむり王の罠に引っかかってしまったのかな、と不安になりました。しかし、大きく頭を振って、そんな考えはふっとんでしまえ、ここがねむり王の本当のお城であれ、と祈りました。
「――なんだこりゃ。まるで地獄じゃねぇか」と、ガッチがつぶやくように言いました。「変だなぁ。おれが出てった時には、こんなもんなかったのになぁ……」
「えっ、なにか言ったガッチ……」と、屍となった怪物を、目を細めながら見ていたサトルが言いました。
ガッチは、
「――ウウン」
と言って、しらばっくれるように首を振りました。
サトルとガッチは、怪物の飛び交うイバラの森を、ねむり王のお城に向かって出発しました。それは決して楽な行程ではなく、気が遠くなりそうなくらい入り組んだイバラの枝を、あるものは登り、あるものはくぐり、まるで延々と続くジャングルジムの中に紛れこんでしまったようでした。
体中の筋肉がギシギシと音を立てそうなほど歩き続けて、ようやくお城の跳ね橋にたどり着いた時には、サトルも、そしてガッチまでもが、その場にへたりこんでしまいました。お互いのズボンには、ゲンコツ大の穴が開き、すりむいた膝小僧にも、血の混じった土が張りついていました。
しかし、二人がやっとの思いでねむり王のお城にたどり着き、ほっと息をついたのもつかの間、目の前の跳ね橋が、二人を拒むように持ち上がり始めました。
二人は、あまりの疲労にへたりこんだまま、高く上がっていく跳ね橋を、他人事のように見上げていました。
「負けないぞ!」
と、サトルは鉄のように重くなった体を、元気を振り絞って立ち上がらせました。
ロボットのようなぎこちない動きで、サトルは高く持ち上がっていく跳ね橋に飛びつきました。ガッチも、やや遅れて飛び移り、二人そろって這い上ると、急な傾斜になっていく跳ね橋を、ごろごろと転がりながらお城の中へ入っていきました。
「ふうー……」と、大の字になったガッチが、もうダメだ、と言うように息をつきました。
「やっと来たぞ……」と、サトルも足を投げ出しながら、がっくりと頭を垂れて言いました。
「後は、王様がどこにいるか、探し出すだけだ――」
サトルは、荒い息をしながら、ゆっくりと顔を上げました。お城の中には、サトルが想像していたような巨人の門番や、たくさんの召使いはいませんでした。がらんとしたお城を見回しながら、サトルはまた、ねむり王の罠に引っかかってしまったのかな、と不安になりました。しかし、大きく頭を振って、そんな考えはふっとんでしまえ、ここがねむり王の本当のお城であれ、と祈りました。