今回の岐阜への旅のお楽しみのひとつは、初めての「鵜飼」見物であり、事前に食事(弁当)付きの乗合船を予約しておいた。
夕日が沈むころになり、乗り場の近くでは、乗船の前に、鵜匠の説明を聞くことができる。
実演もあり、魚を呑ませてから、首をキュッと絞めて呑んだ魚を吐き出させる。
始めて見る者にとっては、ちょっとかわいそうな気もする。
船内での飲食は自由である。
予約しておいたお弁当を受け取り、近くでビールを買って指定された屋形船に乗り込む。
幸いにもこの船は「トイレ付」であり、「心配なく」飲める。
既に先に乗り込んでいた浴衣姿の女性4人組は、早くも始めている。
私たちも早速ビールを開け、弁当を開く。
弁当に「アユが入っているといいな~」、ちょっと期待していたのだが、あった!、塩焼きのアユがちゃんと入っていた。
「鵜飼を観ながらアユをかじる」、この状況がなにより食事をおいしくしてくれた。
川面を渡る風を感じつつ飲むビールがうまかった。
その日もお天気は良く、何艘もの観覧船が出ていた。
漁のポイントに着き鵜飼が開始されるまでの時間、食事をしながら過ごす。
意外だったのは、踊りを披露してくれる船もやってきて楽しませてくれる。
ビールが空き、食事がすむころ、パーン、パーンと漁の開始を告げる花火が打ちあがる。
一斉に鵜飼の舟が動き出し、かがり火の明かりに鵜匠の鵜を操る姿が見える。
鵜匠のさばく綱の先では鵜がせっせと潜り、魚を追っている。
いよいよ漁のクライマックス。
6艘の舟が協調し、横いっぱいに広がり、一方向に魚を追いこんでいく。
舟のへりをたたくバンバンと音が聞こえ、暗闇に、鵜舟のかがり火が一列になって進む幻想的な情景が拡がる。
1300年伝承されているといわれる「鵜飼」。
船を下りる時には、それまで、なにか違う世界にいたような感覚に陥った。
芭蕉は、「おもしろうて やがて悲しき 鵜舟かな」と詠んでいるという。