おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

博奕打ち いのち札

2025-02-05 08:56:24 | 映画
「博奕打ち いのち札」 1971年 日本


監督 山下耕作
出演 鶴田浩二 若山富三郎 安田道代 水島道太郎
   若山富三郎 渡瀬恒彦 遠藤辰雄 林彰太郎
   野口貴史 正司照江 天本英世 内田朝雄
   天津敏 八名信夫 川谷拓三

ストーリー
相川清次郎(鶴田浩二)は、東京大森を縄張りとする関東桜田組一家の若衆頭であった。
彼は、賭場開帳による警察の追及を一時避けるための旅先、越後直江津で静枝(安田道代)と知りあった。
静枝は、旅の女剣劇一座の座長中村権之助の養女であり、一座の花形であった。
二人はお互の恋を激しく燃焼させ求め合った。
だが、間もなく清次郎は東京へ帰らなければならなくなり、二人は一年後の再会を固く約束して別れた。
大森では天野良平(天津敏)がひきいる愚連隊新地会がのさばりはじめ、清次郎は新地会とのいさかいで数人を傷つけ、五年の刑に服すことになった。
それから数年後、権之助一座は大森に在った。
権之助は病で倒れ、一座は解散寸前に追いこまれていたが、そうした一座に救いの手をのべたのが岩井一家の組長東五郎(水島道太郎)だった。
東五郎は静枝を妻にと望み、清次郎を探す望みを捨てていた静枝はこれを受けた。
東五郎は刑務所に清次郎を訪ね結婚を告げた。
昭和八年、岩井一家は大森海岸の埋立工事を一手に請け負ったが、この利権に目をつけた岩井一家の本家・桜田一家総長大竹(内田朝雄)は新地会をあやつり、岩井一家と対立させる一方、殺し屋・金原(天本英世)に東五郎の暗殺を命じていた。
清次郎が出所する前日、東五郎は射殺された。
親分を失った岩井一家に、大竹の露骨な魔手が迫った。
一家は静枝をたて、清次郎と彼の弟分で代貸の勘次(若山富三郎)が力を合わせていかなければならなかった。
大竹の策略により清次郎は一家を追われて勘次が総領に坐ったが、やがて東五郎殺しが大竹の手によるものだと知った勘次は殺された。
この報に接した清次郎は日本刀を羽織でくるみ、大竹が仕切る岩井一家へと向った。


寸評
博奕打ちシリーズは小沢茂弘監督によって始められたが、圧倒的に山下耕作監督作品が面白い。
申しわけないが、小沢茂弘の力量不足だと思う。
シリーズの中では第4作の「博奕打ち 総長賭博」がピカイチである。
第9作となる本作も上出来の部類に入る。
このころ東映の任侠映画は絶好調で高倉健、鶴田浩二、藤純子、若山富三郎などが週替わりで登場していた。
僕はこの映画を今はなくなってしまったが梅田新道の角にあった東映会館で見た。
洋画館として東映パラスが会館内にあったが、圧倒的に邦画館の梅田東映が賑わっていた。
オールナイトも行われていて、今と違って入れ替え無しだったので夕刻から入った僕などは夜明けまで滞在し、同じ映画を一晩を通じて2~3回は見た。
北新地が近かったので、深夜になると新地のお姉さんたちが立ち見をしているほどの賑わいだった。
スクリーンと客席が一体化し、主人公が危なくなると「鶴田、後だ!」と声が飛ぶ。
学生運動も激しかった時代で、高倉が「死んでもらうぜ」と言うと、「異議な~し!」と学生らしい客から声が飛んだ。
藤純子がヒロインになることも多かったが、ここでは大楠道代と改名する前の安田道代である。
安田道代は山本富士子の再来と期待された大映の女優であったが、大映が倒産したのでこの頃はフリーだったと思う。
共演した城健三朗(後の若山富三郎)と恋仲になったので、安田の実家が僕の友人宅近くだったため、友人は若山が時々訪ねてくるのを目撃したと言っていた。
両雄の一人である高倉健には色気があったが、一方の鶴田浩二には悲壮感が漂っていた。
山下作品では鶴田浩二から滲み出す板挟みの辛さが最大限引き出されていたと思う。
高倉健と違って、鶴田浩二はスーツを着た現代ヤクザも似合った。
「組長シリーズ」も良かった。
懐かしいなあ~、あの熱気。

シン・ウルトラマン

2025-02-04 07:40:10 | 映画
「シン・ウルトラマン」 2022年 日本


監督 樋口真嗣
出演 斎藤工 長澤まさみ 西島秀俊 有岡大貴 早見あかり
   嶋田久作 岩松了 堀内正美 山崎一 益岡徹 小林勝也
   利重剛 本耕史 竹野内豊 田中哲司

ストーリー
巨大不明生物“禍威獣(カイジュウ)”が次々と現れ、その存在が日常となった日本。
通常兵器がまったく役に立たず、限界を迎えた日本政府は、非粒子物理学者や汎用生物学者など、禍威獣対策に関するエキスパートを集めた禍威獣特設対策室(通称“禍特対”)を設立する。
禍威獣の脅威が迫るなか、銀色の巨人が大気圏外より突如出現。
それを機に、禍特対には巨人対策のための分析官である浅見が新たに配属され、作戦立案担当の神永とタッグを組むことになる。

寸評
「シン・ゴジラ」あっての「シン・ウルトラマン」だ。
実際、「シン・ゴジラ」のタイトルを破って「シン・ウルトラマン」のタイトルが出てくる。
さらに怪獣映画に対するリスペクトも感じられる。
ネロンガが電気を喰ってエネルギーとしているのは「ガメラ」でもあったように思うし、「ゴジラVSビオランテ」を連想したシーンもあった。
怪獣とのバトルが見どころとなっているが、ストーリーに深みはない。
多分、斎藤工の神永新二と長澤まさみの浅見弘子の関係に対する描き方が希薄だったためだと思う。
単なる相棒としての関係だったのか、浅見の神永に対する愛はあったのかがはっきりしていない。
メッセージ性も感じられるが声高ではなかったこともある。
ゾーフィが人類は危険な存在として殲滅されることを告げるのは、紛争を起こし続けている人類への警鐘なのだろう。
人間は善の心と悪の心を共存させていると思うが、神永の見せた自己犠牲の精神に期待を寄せている。
山本耕史の外星人メフィラスはベーターシステムを活用した人類の巨大化による敵性外星人からの自衛を提案し、日本政府にベーターシステムを供与する代わりに自らを人類の上位存在として認めさせるという密約を交わす。
メフィラスはまるでアメリカだ。
自国防衛をアメリカに依存してアメリカの影響下にある日本をさしているのだと思う。
好き嫌いがはっきりする映画だと思うが、僕は乗り切れなかった。
この後に「ゴジラ-1.0」が出るが、内容とヒーロー性においてウルトラマンはゴジラに勝てないと思う。

ハンター

2025-02-03 11:01:20 | 映画
「ハンター」 1980年 アメリカ


監督 バズ・キューリック
出演 スティーヴ・マックィーン イーライ・ウォラック
   ベン・ジョンソン キャスリン・ハロルド
   レヴァー・バートン リチャード・ヴェンチャー
   トレイシー・ウォルター テディ・ウィルソン
   レイ・ビッケル ボビー・バス トム・ロザレス

ストーリー
ラルフ・ソーソンは賞金稼ぎだ。
通称パパと呼ばれる彼は、逃亡者卜ミー・プライスを追っている。
警察の手におえないプライスのような犯罪者をも彼は独力で捕えるのだ。
ブライスをロス警察に引き渡す前に、彼は別件のおたずね者も捕えようとしていた。
パパは地元の保安官ジョンに協力を求めるが、悪い事にジョンはそのおたずね者の伯父に当り、逆にパパは45口径のコルトで脅され街を出て行くように言い渡される。
しかし、執念に燃えるパパは結局独力でこのおたずね者を捕え、1度に2人もロス警察に引き渡した。
パパには8年前から同棲しているドティーという恋人がいる。
学校の教師を勤める彼女は目下妊娠中だったが、パパは職業を思うと自分が親になる自信がなかった。
翌日、例の2人を捕えた件の賞金の支払いを受けとりに保釈金保証人のリッチーを訪ねたパパは、計算高いリッチーに難題をたたきつけられる。
その結果、金を受け取る前にもう一仕事するはめになったパパの元にロッコという男から電話が入った。
刑期を終え出所した彼は、かつて自分を捕えたパパに復讐するというのだ。
その夜からパパは追われる身になった。
約束の仕事を終えてロスの家に戻った翌日、ドティーは子供の誕生を喜ばないような男とは暮らせないと荷物をまとめて家を出て行った。
シカゴでの大仕事を終えた彼は、その夜自宅がロッコに荒らされているのに驚いた。
さらにロッコはドティーを誘拐し、学校にたてこもった。
必死の思いでロッコを倒すと、パパは陣痛のはじまったドティーを車に乗せ病院へと向かう。
彼の頭の中には、愛するドティーと生まれてくる子供のことしかなかった。


寸評
僕はこの映画を当時の事で会社の海外研修を兼ねたロス・ハワイ旅行に行った時にハリウッドのチャイニーズ・シアターで見た。
映画館は星形のプレートにスターの名前が刻まれて手形が埋め込まれたものが連なっているハリウッド・ウォーク・オブ・フェームに面していた。
中国らしい外観が特徴的な劇場だったが、特に豪華な劇場という感じではなかった。
行く前からそこで映画を見ると決めていた僕は、ツアーコンダクターに断って単独行動を起こしたのだ。
上映作品は何でも良かったのだが、たまたま上映されていたのが「ハンター」だったのだ。
観客はまばらだった。
英語が理解できない僕は会話の内容は分からないのだが、ストーリーの雰囲気だけは感じ取れた。
パパはてっきり刑事かと思っていたが、後日そうではないことが分かった。
字幕版はテレビ放映された時に見たのだと思う。
これがスティーヴ・マックィーンの遺作となったことを思うと米国本土で見ただけに灌漑深いものがある。
作品的には褒められたものではないが、これまでスティーヴ・マックィーンが演じてきた颯爽としたスパーヒーローでなく、どこかうらぶれた感のある男を演じていたことがかえって良かったような気がする。
それともすでに体調がよくなかったのだろうか。
米国で見た時は、列車の上を走るスティーヴ・マックィーンの姿だけが印象に残った。

西鶴一代女

2025-02-02 09:37:04 | 映画
「西鶴一代女」 1952年 日本


監督 溝口健二
出演 田中絹代 三船敏郎 山根寿子 宇野重吉 菅井一郎
   進藤英太郎 大泉滉 清水将夫 加東大介
   小川虎之助 柳永二郎 浜田百合子 市川春代
   原駒子 毛利菊枝 沢村貞子 近衛敏明 荒木忍

ストーリー
奈良の街外れの荒寺に老醜を厚化粧で隠した娼婦のお春(田中絹代)がいた。
羅漢堂に入ったお春はさまざまな仏像を見ていくうちに、今までに関わってきた男たちの顔を思い出すのだった。
御所に勤めていた十代のお春は、以前からお春に想いを寄せていた公卿の若党、勝之介(三船敏郎)に宿に連れ込まれたところを役人に見つかってしまう。
お春は両親(菅井一郎、松浦築枝)ともども洛外追放となり、勝之介は斬首となった。
都を追われ、両親とともに息をひそめるように生きていたお春だが、いまだ世継ぎのない主君の側室を探していた松平家の家中に見出され、同家に輿入れすることになる。
殿様(近衛敏明)との間にめでたく嗣子をもうけたお春だが、奥方(山根寿子)の妬みにあい、用済みとばかりに実家へ返されてしまった。
お春は金策に詰まった父親に島原の郭に売られ、太夫となる。
ある日、郭で金をばら撒いていた田舎大尽(柳永二郎)が彼女を見初め、身請けしたいと言い出した。
自分を思ってくれるならと心を決めかけたお春だが、実は彼は贋金作りで、踏み込んできた役人に捕らえられてしまう。
廓を出て笹屋嘉兵衛(進藤英太郎)の住み込み女中となったお春だが、今度は笹屋の客の菱屋太三郎(加東大介)によって彼女の前身が分かったことから、嘉兵衛の妻のお和佐(沢村貞子)に嫉妬され、追い出されてしまう。
実家に戻ったお春は、善良で働き者である扇屋の弥吉(宇野重吉)のもとへ嫁入りし、やっとささやかだが幸福な暮らしを手に入れたかにみえたが、外出先で弥吉が物盗りに襲われて殺され、無一物で店を出ることになる。
世をはかなみ、老尼の妙海(毛利菊枝)の世話になることにしたお春は、借金の取り立てに来た笹屋の大番頭治平(志賀廼家辨慶)に犯されそうになったところを妙海に見られてしまい、寺を追い出されてしまった。
嘉兵衛の番頭だった文吉(大泉滉)と出会ったお春は、彼と行動を共にするが、文吉はお春のために店の品を盗んだことが分かり、桑名で捕らえられてしまう。
そうしていつしかお春は三味線を弾きながら物乞いをする女になっていた。
空腹の余り倒れたところを介抱してくれた二人の夜鷹に誘われ、ついにお春は街娼にまで身を落すことになるが、長年の過労がたたって倒れてしまう。
そこへお春を探していた母のともが現れ、松平家の殿が亡くなり若殿が後を継ぐので、共に暮らせることになったと知らせるが、その喜びもつかの間だった。
お春が娼婦に身を落していたことを問題視した重役たちは、お春には息子である若殿の顔を遠くから一目見ることしか許さず、そのまま彼女を幽閉しようとする。
隙をみて逃げ出したお春はただ一人、孤独な巡礼の旅に出るのだった。


寸評
田中絹代が扮するお春がお経を読む声にひかれて羅漢堂に入っていくファーストシーンからラストシーンまで、ワンシーン、ワンカットと言ってもいいようなカメラの移動とパンによって物語を緩やかに紡いでいっているのが特徴となっている。
僕は溝口健二の作品としては「雨月物語」が一番好きなのだが、この「西鶴一代女」をベストとしている人も多い。
映画の内容はお春の男性遍歴である。
三船敏郎の若党が「お春さま、真実にいきなされ!」と言って打ち首になる。
お春は男運が悪く、関係した男たちに翻ろうされながら最後には娼婦にまで身を落とすが、それも彼女が真実に生きた末の一生なのだろう。
とにかく、お春はついていない女である。
殿さまの側室になるが、子供が生まれると用済みとなって追い出される。
島原の遊女となって身請けされそうになるが、相手はニセ金作りで逮捕されてしまう。
商人の家の女中になると主人に色目を使われ、奥さんの嫉妬で追い出されてしまう。
真面目な商人と所帯を持った時だけは幸せだったのだろうが、商人は殺されてしまう。
尼寺に行けば男の色欲行為で追い出され、連れ立った男はお春の為に盗みを働き捕まってしまう。
お春は色好みには見えないのだが、男性本位の社会で自己主張が出来ない女性である。
制作された頃は、まだまだ男性社会が当たり前だったのかもしれない。
男女雇用均等が叫ばれ、女性の社会進出がまだまだだったころの作品で、封建社会に対する批判が込められた作品だったように思う。
田中絹代は頑張っている。

お春には厳しい一生だったと思うが、大抵の人は良かったり悪かったりの繰り返しなのではないか。
私は人生は終始トントンになるものだと思っている。
羽振りの良かった人が落ちぶれている例を知っているし、色々あった私はささやかな幸せを今は感じている。
最後までこのままでいたい。

マドモアゼル

2025-02-01 09:03:50 | 映画
2019/1/1より始めておりますので10日ごとに記録を辿ってみます。
興味のある方はバックナンバーからご覧下さい。

2020/8/1は「6才のボクが、大人になるまで。」で、以下「64-ロクヨン-前編」「ロシュフォールの恋人たち」「ロッキー」「ロミオとジュリエット」「ワイルドバンチ」「ワイルド・レンジ 最後の銃撃」「わが命つきるとも」「わが青春に悔なし」「わが母の記」と続きました。

「マドモアゼル」 1966年 イギリス / フランス


監督 トニー・リチャードソン
出演 ジャンヌ・モロー エットレ・マンニ
   ウンベルト・オルシーニ キース・スキナー
   ジョルジュ・オーベール ジェラール・ダリュー
   ジャック・モノー

ストーリー
マドモアゼルと呼ばれて村で教師をしている女が人知れず村の上流にある水門を開け放っていた。
村ではこの3週間に2件の放火に今回の水害という事件が発生しているが、警察は犯人逮捕に至っていなかった。
マドモアゼルの視線の先には、村人に交じって危険をものともせず、懸命に家畜の救出作業にあたっていた一人の男の姿があった。
その男マヌーは、友人アントニオ、息子ブルーノとともに、毎年イタリアから材木の伐採のために村にやってくるイタリア人だった。
野性的で魅力的なマヌーは村の女たちを惹きつけ、そんな彼を苦々しく思う村の男たちは、最近村に起こった事件の犯人はよそ者であるマヌーらの仕業だと疑っていた。
その晩もマドモアゼルは、着飾った姿にマッチと火種にするためノートを破った紙片を手に出かけると、とある家の納屋に火をつける。
たちまち家は燃え上がり、駆けつけたマヌーは燃え盛る家中から家財道具を運び出す。
その現場のすぐ近くで、ブルーノが燃えている紙片を拾い上げる。
その紙片から放火の犯人がマドモアゼルであることを知るが、ブルーノは彼女への想いから、それを口にすることができなかった。
マドモアゼルはかつて、森でマヌーらが伐採作業をしているところを何度か盗み見ていたが、オールドミスである彼女はそのたくましい体に惹きつけられながらも、ただ自制するしかなかった。
息子の存在を知った彼女は、ブルーノに学校へ来るように言い、読み書きのできない彼につきっきりで勉強を教え、ブルーノはそんなマドモアゼルに淡い恋心を抱く。
しかし彼女はマヌーが村の女たちと軽々しく興じる姿を目にすると、彼へのいら立ちをぶつけるようにブルーノに冷たく当たるようになる。
そして次にマドモアゼルは家畜の水飲み場に毒薬を入れると、森へ行きマヌーに会う。
たがが外れたマドモアゼルはマヌーが求めるままに体を預け、2人は一晩中森で互いをむさぼっていた。
その頃、水飲み場の水によって家畜が全滅した村では、マヌーの犯行と決めつけて男たちの怒りの矛先がマヌーに向けられる。
一夜が明け、マヌーはマドモアゼルに「明日村を出る」と告げると、彼女は彼から離れて一人村に戻る。
乱れた姿のマドモアゼルに驚いた村人たちは、彼女からマヌーに暴行されたのだと聞くと森へ向かい、そこでマヌーは男たちによって撲殺される。
マヌーの姿が消えたまま、アントニオはブルーノを連れて村を出ることにする。
マドモアゼルもまた村を去ろうとしていた。
荷物を手にしたブルーノは迎えの車に乗り込んだマドモアゼルと目が合うと、腹立たしげに唾を吐きかけるが、マドモアゼルは彼をちらっと見ると村を後にするのだった。


寸評
主人公は村人から「マドモアゼル」と呼ばれているから未婚なのだが、口をへの字に結んで無表情な彼女は禁欲的な雰囲気を漂わせている。
村では不審な事件が続いていて人々に動揺が広がっている。
実は彼女こそその犯人なのだが、まじめな教師としてしか見られていない彼女を誰も疑わない。
疑いの目は、出稼ぎにきているイタリア人に向けられる。
村人たちは何の証拠もないのに家宅捜索をし、証拠が出てこなくても執拗に彼を犯人だと疑う。
ところが禁欲的と思われたマドモアゼルはこのイタリア人に魅かれていく。
マドモアゼルの抑圧された心と反比例するかのように悪事をエスカレートさせていくヒロインの描き方が強烈だ。
男と関係するところも生々しい。
マドモアゼルは村を去る時でも村人から信頼されている。
彼女の真の姿を知っているのはブルーノだけだが、彼は唾を吐き捨てるだけだ。
そんな彼をマドマゼルは気にしない。
セレブを装う女性も一皮むいた裏の顔は分からないと言う事だろう。
もともと女性は恐ろしい動物の一面を持っているのだと思うが、それは僕の偏見かも。
映画は残酷でもあるがモノクロ映像の為か、美しさを感じるものがある。
ジャンヌ・モローはすごい!

KANO ~1931 海の向こうの甲子園~

2025-01-31 08:37:24 | 映画
「KANO ~1931 海の向こうの甲子園~」 2014年 台湾


監督 マー・ジーシアン
出演 永瀬正敏 坂井真紀 ツァオ・ヨウニン
   大沢たかお チャン・ホンイ 伊川東吾
   ツォン・ヤンチェン シエ・ジュンジエ
   シエ・チュンシェン

ストーリー
1920年代、全国中等学校優勝野球大会(今の甲子園)に出場できるのは、日本人ばかりで構成された台北一中や台北商業ばかりだった。
一方、連敗続きの嘉義農林学校野球部(KANO)は、強豪校とは違ってのんびりしたチームだった。
そんな嘉義農林学校野球部に、元愛媛松山商業監督の近藤が新任監督としてやってくる。
近藤の厳しい指導により、のんびりチームの選手たちにも勝ちたいという意識が芽生え始めた。
近藤は足の速いアミ族の生徒や、野球部の流れ玉をラケットで打ち返した漢人のテニス部生徒ら、一つの能力に特化した選手をスカウトし始め、守備のうまい日本人、打撃力のある漢人、足の速い高砂族など、人種の垣根を越えたチームを作り上げた。
チームは快進撃を続け、やがて台湾でたった1校だけという甲子園の切符を手に入れた。
台北から凱旋した選手たちは町中から大歓迎を受けるが、彼らは当時のアジア最大の水利事業であった嘉南大圳完成を知るや、パレードを中断して用水路へ向かった。
水が満ちていることに感動していると、視察で用水路を下ってきた大圳建設の指導者・八田與一に会い、優勝を報告するとともに、八田から激励を受ける。
そして開催された甲子園大会、彼らは甲子園の土の良さに驚く。
嘉義農林学校野球部の下馬評は最低、全く歯が立たないものと評されていた。
しかしピッチャーの呉明捷(アキラ)の変化球は冴えにさえ、強豪校を完封。
準々決勝の対札幌商業戦は、19 - 7で圧勝、準決勝の対小倉工業戦も嘉農は10-2で圧勝。
しかし、小倉工業戦でエースのアキラが中指の爪を割っていた。
決勝の前夜、松山商業時代の恩師佐藤と会った近藤は、防御こそが最大の攻めだとアドバイスを受ける。
そして宿舎に帰った近藤は眠れず狸寝入りしている選手たちの布団を丁寧に直すと「甲子園に連れてきてくれてありがとう」と頭を下げた。
迎えた決勝戦相手は、名門中の名門・中京商業。
歯を食いしばり力投するアキラだったが、けがの影響で徐々に乱れ始める。
ユニフォームも血まみれのアキラに、バッテリーを組む東も無理せず交代するよう提案したが、頑として譲らないアキラの強い決意を見て、近藤もアキラと心中する決意をした。
しかし、制球を乱し四球を連発してしまったアキラは得点を追加され、もう後がないところまで追いつめられてしまう。
ここでナインの「俺たちを信じて打たせろ」との励ましを受けたアキラは、絶体絶命のピンチを切り抜けた。
そしてリードされて迎えた最終回、2アウト満塁のチャンスで打者はアキラ。
最後の力を振り絞りアキラが放った打球は大きかったが外野手が上手くキャッチし、試合は中京商の吉田正男に完封に抑えられて終了となった。
優勝はできなかったものの観客を魅了した嘉義の選手たちに、惜しみない拍手と歓声が贈られた。
試合前は差別的な発言をした新聞記者も、今は彼らを讃え拍手を贈っている。
負けても泣くな、勝っても泣くなと指導されてきた選手たちは、「僕たちはいつ泣いたら良いんですか?」と言い、ついに号泣する。
勝てなかったことに涙した彼らでしたが、準優勝盾と甲子園の土を手に、胸を張って船で台湾への帰路についた。
エンドロールでは、日本の野球界で活躍した者、台湾の野球に貢献した者、太平洋戦争により戦死した者などが示される。


寸評
スポ根ものと言えばそうなのだが、時代背景もあって感動する。
日本が台湾に貢献していたことも描かれ、現在も親日の感情が少なからず残っていることをうかがわせるが、なくても良かったような気がする。
ただし、この映画によって八田與一なる人物の存在と貢献を知ることが出来た。
時代映画としてさしたる映像的見せ場があるわけではないが、作品の純朴さが伝わってくることに僕は感動したのだろう。
どこまで史実に忠実だったのかは分からないが、しかしこういう史実もあったのだと知らしてくれたことに存在価値がある。
KANOの活躍を高校野球ファンは知っているのだろうが、知らなかった僕には新鮮な出来事であった。
日本賛歌と感じるところもあるが、台湾映画として台湾で大ヒットしたことは嬉しい。
素直に嬉しいという感情が湧いてきた。
嘉農野球部に憧れ、練習場に出入りしている少年は呉昌征と改名し、日本でプロ野球選手となり巨人から阪神に移籍し、台湾出身選手としては初の野球殿堂入りも果たした名選手となった。
実際のプレーを見たことはないが、阪神ファンの私は呉昌征の名前を忘れることはない。

噂の二人

2025-01-30 10:11:57 | 映画
「噂の二人」 1961年 アメリカ


監督 ウィリアム・ワイラー
出演 オードリー・ヘプバーン シャーリー・マクレーン
   ジェームズ・ガーナー ミリアム・ホプキンス
   フェイ・ベインター ヴェロニカ・カートライト
   カレン・バーキン ミミ・ギブソンストーリー

ストーリー
カレンとマーサは学生時代からの親友であり、共同で寄宿学校を経営していた。
金持ちの娘ばかりで手を焼くことが多かったが、経営は軌道に乗り始めていた。
父兄からの信望も厚く、カレンの2年越しの恋人はこの地方の有力者ティルフォード夫人の甥である医者のジョー・カーディンだった。
しかしカレンが婚約に踏み切った時、なぜかマーサは重い微笑で答えただけだった。
カレンの結婚を嫉妬していると伯母のリリーに指摘されマーサは声を荒げてしまう。
ティルフォード夫人の孫娘メリーは病的なほどのわがまま娘で、学校でのしくじりで家へ逃げ帰り、そのまま学校へ戻りたくないばかりに「カレンとマーサは同性愛なの!」と祖母に訴えた。
この話はたちまちティルフォード夫人によって保護者に広まり、驚いた父兄たちは子供を引き取ってしまった。
カレンとマーサはティルフォード夫人を訪問し名誉棄損で訴えたが潔白を証明することができないばかりか、かえって2人は町中の噂と嘲笑の中に身をさらさなければならなくなった。
噂の2人は無人の学校にひっそりと暮らしていたが、ジョーですらかすかな疑いを持っていることを知ったカレンは婚約を解消してしまった。
マーサはそれを知って心が激しく揺れるのを覚えるのだった。
やがて孫娘メリーの嘘を知ったティルフォード夫人が謝罪に来た。
カレンは久しぶりに空の青さをしみじみとした思いで仰いだが、ふとそこにいないマーサに気づき不安にかられて名を呼んだ。
2階にかけ上がったカレンが見たのは、暗く閉ざされた部屋の中で自らの生命を絶ったマーサの姿だった。
カレンはただ1人で野辺の送りを済ませ、今はもう見知らぬ人ばかりの町ででもあるかのように、後もふり向かずに去って行くのだった。

寸評
この映画を思い出すとき、初めて見た時と思いが変わっているなと感じてしまう。
今のSNS上で起きている事柄が浮かんでしまうのだ。
メリーの嘘があっという間に広まってしまう。
フェイクニュースがネットを通じて拡散される状況と変わらない。
マーサは自殺してしまうが、ネットでの誹謗中傷で自殺する人が出ている現状と重なる。
この映画ではティルフォード夫人の謝罪に光明を見せているが、それでもカレンは怒りを押し込めて去っていく。
現状を顧みると、フェイクを流した者がいくら訂正、謝罪しても取り返しがつかないことが起きている。
「噂の二人」の頃には想像できなかった世界が生み出されているが、作品は予見していたように感じてしまう。
この映画を思い出した時、SNSでの誹謗中傷事件を連想してしまった。

白い手

2025-01-29 09:49:29 | 映画
「白い手」 1990年 日本


監督 神山征二郎
出演 南野陽子 哀川翔 石黒賢 中垣克麻
   福原学 桜田淳子 佐藤オリエ 山瀬まみ
   前田吟 小川真由美 広瀬珠美

ストーリー
千葉の外房に面した小さな港町に母親と二人で住んでいるマサル(中垣克麻)は小学5年生。
ある日、このマサルのクラスに東京から転校生がやって来る。
松井隆清(福原学)と名乗るその少年は「かつやくきん」の病気の為、緊張するとウンコをもらしがちで、転校一日目からそれをしでかしてしまい、悪ガキたちは隆清にケツメドなるあだ名をつけるのだった。
仲間と一緒になって隆清をからかったマサルだが、隆清の母(小川真由美)から涙ながらに友達になってと頼まれ、マサルは仕方なく引き受けるのだった。
翌朝、隆清と共に登校するマサルは、途中洋館の二階の窓から出ている白い手が気になっていた。
そこには病気で寝たきりの少女(広瀬珠美)がいるのだ。
そして隆清もその少女に強い関心をよせる。
数日後、隆清の家にテレビがあることを知った悪ガキ共は、プロレス見たさに隆清を危険な護岸工事現場のトロッコを使った度胸試しに挑戦させ、彼を仲間に入れてやるのだった。
隆清は怪我をするが、それがきっかけになって担任の女教師・彩子(南野陽子)とその工事現場監督・市原(哀川翔)は恋仲になる。
そんなある日、学校の宿題で手紙を書くことになった隆清は、洋館の白い手の少女にあてる。
それを届けたマサルは、そこで少女の顔を見て、その透き通るような美しさに火照りを覚える。
だが、隆清には少女の顔は見えなかったと何故か嘘を言ってしまうのだった。
数日後、洋館に出向いた二人は、少女が入院していることを知る。
それから間もなく二人は彩子から少女の死を聞かされる。
少女は彩子の学生時代の先生の娘で、彩子は時おり彼女の勉強を見てやっていたのだった。
悲しみに暮れるマサルと隆清。
そしてそんな時、隆清は再び転校することになった。
それから何日かたち、元気を取り戻したマサルは、今日も悪ガキ共に交って登校するのだった。


寸評
「白い手」は神山征二郎作品なのだが、大林宣彦の尾道三部作を見ているような雰囲気がある。
僕の中では傑作と言う範疇に入る作品ではないのだが、ノスタルジーを感じさせる良品である。
「白い手」というタイトルから病弱の少女の物語がメインかと思っていたら、彼女はエピソードの一つに過ぎなかった。
でも思い出すのはやはり窓から突き出された少女の手のシーンだから、タイトルは的を得ていたのかもしれない。

「お引越し」の桜田淳子も良かったが、この映画における桜田淳子もなかなかいい。
三人娘の中では山口百恵の主演映画の本数が多いと思うが、演技力は桜田淳子が頭一つ抜けていたように思う。
リアリティと存在感のある女優としてスクリーンにもっと登場してほしい。
アイドル出身の女優として「黒い雨」の田中好子さんも良かったのだが、惜しくも早逝されてしまった。
惜しい・・・。

馬と呼ばれた男

2025-01-27 07:12:12 | 映画
「馬と呼ばれた男」 1969年 アメリカ / メキシコ
監督 エリオット・シルヴァースタイン
出演 リチャード・ハリス ジュディス・アンダーソン
   ジーン・ガスコン マヌ・トゥポー
   コリンナ・ツォッペイ ダブ・テイラー
   ジェームズ・ギャモン ウィリアム・ジョーダン
   エディ・リトル・スカイ マイケル・ベーセレオン

ストーリー
貴族の生活に不満を感じたイギリス人のジョン・モーガンは、アメリカのダコタ地方に探検狩猟に出かけた。
ところがある日、彼は水浴中にスー族に裸のまま捕えられてしまった。
初めて眼にする白人の珍らしさに、彼らはジョンを馬のように首に縄をかけてつないでおくのだった。
首領イエロー・ハンドの母親であるバファロー・カウ・ヘッドのテントの杭につながれたジョンは、そこで、5年間もスー族に捕えられているバタイズから、彼らについていろいろ話しを聞かされた。
翌日、スー族と敵対する部族の首領ブラック・イーグルが、イエロー・ハンドの妹であるランニング・ディアに結婚を申し込んできたが、彼女はすげなく断った。
そうしたある日、ジョンは敵部族の偵察者の頭の皮をはぎ、ランニング・ディアに贈った。
かねてからジョンに愛を感じていた彼女は、喜んでその贈物を受けとるのだった。
妹に結婚の意志があるとみてとったイエロー・ハンドは、ジョンにスー族になるための苦業を要求し、彼はみごとその試練をパスし、2人の結婚は成立した。
ブラック・イーグルは結婚を断られた腹いせに、イエロー・ハンドの妻ソーン・ローズを誘拐した。
結婚以前にも、彼女を彼に汚されたイエロー・ハンドは、この屈辱を戦闘ではらすことを誓った。
翌朝未明、2つの部族の争いは開始され、イエロー・ハンドは誓いどおり死を賭して戦い死んでいった。
掠奪者から逃れようとしたランニング・ディアも、馬から落ちてジョンの腕の中で息たえた。
ジョンのヨーロッパ式の指揮で敵は撃退したものの、最愛の息子を失い、最愛の妻を失ったバファロー・カウ・ヘッドとジョンは、お互いをいたわり合うのだった。
その後、バファロー・カウ・ヘッドの願いをきき入れ、ジョンは彼女の息子となったが、その彼女も間もなく他界してしまった。
やがて部族が移動を開始することになった時、ジョンはイギリスに帰る決心をした。
そして彼は、スー族や亡き妻に最後の別れを告げるため、ひとり墓の前にいつまでもたたずんでいた。


寸評
先住民族はずっと白人に対する敵対者の悪者として描かれてきたが、このころから先住民族に対する見方を変えた作品が登場するようになってきた。
「馬と呼ばれた男」もそんな作品の中の一本である。
悪かったのは白人の方であるという作品も見受けられたのだが、この作品はほとんどがスー族の中で展開されるので先住民族のドラマと言っても良い。
先住民族自身が撮れば違ったものになるのだろうが、しかしこの映画を見た時には先住民族の生活を垣間見たような気になったことを覚えている。
初めは馬と呼ばれて家畜扱いだったジョンは敵対する部族の斥候の二人を倒したことから認められるようになる。
彼は実力を握るために酋長の妹に求婚するが、酋長は結婚するなら試練を受けなければならないと言う。
試練とは、胸の肉に棒を突き刺しロープを引っかけて吊り下げ、グルグル回すというすさまじいものだ。
ジョンを愛する酋長の妹ランニング・ディアも掟に従って身を清めている。
野蛮のよう思えるが、崇高な儀式なのだと素直に感じ取れるシーンとして、これも脳裏に残っている。
もしかしたら僕たちが失くしていたのかもしれない誇り高き生き方を示していた映画だったのかもしれない。
思い出してみて、もう一度見てみたい気持ちになった。

盗まれた欲情

2025-01-26 16:43:51 | 映画
「盗まれた欲情」 1958年 日本


監督 今村昌平
出演 長門裕之 南田洋子 滝沢修 喜多道枝
   柳沢真一 香月美奈子 小沢昭一 中谷昇

ストーリー
中河内高安村にドサ回りのテント劇場、山村民之助(滝沢修)の一座がやって来て大入満員、座員は大喜びだ。
一座の演出家国田信吉(長門裕之)は芝居一途に大学を中退した情熱家で、自分の新解釈による芝居を上演しようと夢みている。
彼に想いをよせる民之助の娘千鳥(南田洋子)と千草(喜多道枝)。
千鳥は看板スター栄三郎(柳澤愼一)の妻だが、ひそかに恋情をもやしている。
大入の夜、祝宴を逃げ出した信吉を追って来た千草は彼に抱かれた。
翌日は雨、民之助が信吉の新作を稽古しようと提案するにもかかわらず、一座は女を求めて村へ散ってしまう。
千鳥は妹の昨夜の行動から、暗い嫉妬をもやすのだった。
一方村に出た男達、老優富八郎(小笠原章二郎)は小金をためた未亡人を、三枚目の勘次(西村晃)は肉体派のみさ子(香月美奈子)を手に入れるが、信吉も愛する千鳥ならぬ千草と契った後悔に、酔いつぶれるのだった。
翌日は再び大入満員で、みさ子のストリップに拍手が湧いた。
しかし、一部の村の青年達はこんな一座を快よく思わず、彼等はその夜みさ子に気があった藤四郎(小沢昭一)を誘って千草を襲った。
幸い信吉等の追跡によって千草は救われたが、信吉は千鳥に自分の心を打ちあけ、彼女も遂に拒み切れなかった。
妻に裏切られた栄三郎は、座の為に自分が身をかくすと言う。
その瞬間千鳥は、栄三郎と離れられないと告白するのだった。
朝がきて、一座は高安村を去って行くが、その中には信吉に寄りそう千草の姿があった。

寸評
今村昌平のデビュー作である。
大学を出て間もない演劇青年が主人公で、この一座の中で唯一のインテリである。
一座の連中ときたら無知で好色な連中ばかりで、芝居が好きということ以外に取り柄がなく怠け者の集まりである。
騒動を次から次へと巻き起こし、それでいながら人生を結構楽しんでいるという喜劇である。
長門裕之は実際の所、ドサ回りの劇団生活に悶々としているのだが、大学時代の友人である中谷昇からバカにされると虚勢を張ってしまう。
バカにされたら虚勢を張りたくなるのが男というものだ。
団員に感化されたのか、長門裕之は座長の姉娘で亭主持ちの南田洋子とできてしまう。
実生活でもこの後、長門はトップスターだった南田洋子に猛アタックして結婚した。
相変わらずワイワイガヤガヤとやって賑やかに次の巡業地に向かっていくのは、まるで次郎長三国志だ。
とりとめもないプログラムピクチャのB級作品だが、舞台が中河内なのがいい。
僕は北河内地区の在住である。
河内といえば「悪名」だが、河内と言う呼び名は「河内音頭」ぐらいにしか聞かなくなった。
映画の内容に関係なく、舞台が河内と聞くだけで心がうずいてしまう。

2025-01-25 08:53:26 | 映画
「敵」 2024年 日本 


監督 吉田大八
出演 長塚京三 瀧内公美 河合優実 黒沢あすか
   中島歩 カトウシンスケ 高畑遊 二瓶鮫一
   高橋洋 唯野未歩子 戸田昌宏 松永大輔
   松尾諭 松尾貴史

ストーリー
大学教授の職を辞めて10 年、77歳の渡辺儀助。
妻に先立たれた彼は、独りで祖父の代から続く古い日本家屋に住み、丁寧で規則正しい毎日を送っていた。
料理は自分で作り、晩酌を楽しみ、気の置けない友人と酒を楽しんだり、かつての教え子である鷹司靖子に淡い恋愛感情を抱いてみたりしながらも、預貯金があと何年もつかを冷静に計算して、来るべき日に備えて心穏やかに日々を過ごしていた。
しかし、もうやり残したことはないと遺言書を書いたある日、パソコンの画面に“敵がやって来る”と不穏なメッセージが表示された。
これを境に、平和な老後が一変してしまう儀助だったが…。


寸評
後期高齢者となった私には身につまされる話だし、自分に重なる部分も多くあってエピソードごとに頷きながら見ていた。
若い女性と妄想の世界で結ばれようとするところなどは笑ってしまう。
おまけに下着まで汚しているのだから、歳を取っても男ってバカだなあと思う。
しかし時折若い頃に憧れた女性と夢で結ばれることは有ってもおかしくはない。
妻に先立たれて一人になれば、たぶん渡辺儀助さんと同じような生活になるのだろうなと思う。
食事を作り、洗濯をし、掃除をする日常生活だろう。
パソコンに向かって何か記述している姿も想像できる。
友人とたまに飲む機会も持つだろうなとも思う。
若い女性の教え子が訪ねてくるのは羨ましい限りであった。

敵はゆっくりやって来ない、突然やってくると述べているが、果たしてそうだろうか。
僕にとっての第一の敵は「老い」という敵である。
これは、ゆっくり、ゆっくりと気付かれぬようにやってくる。
そして「死」という敵が突如やってくるのだろう。
平凡な日常が、妄想と夢の世界に入っていくところは原作者・筒井康隆の映像化を感じさせた。
食事のシーンが多いのだが、渡辺儀助さんの作る料理がやけに美味しそうに思えた。

告白 コンフェッション

2025-01-24 07:07:55 | 映画
「告白 コンフェッション」 2024年 日本


監督 山下敦弘
出演 生田斗真 / ヤン・イクチュン / 奈緒

ストーリー
大学山岳部OBで親友の浅井とジヨンは、16年前の大学卒業登山中に行方不明となり事故死とされた同級生、西田さゆりの慰霊登山に出かける。
しかし猛吹雪により遭難し、ジヨンは脚に大怪我を負ってしまう。
死を確信した彼は、自分がさゆりを殺害したと告白。
そのまま死を待つジヨンだったが、直後に山小屋が出現する。
一命を取り留め、救助を待つ2人だったが、浅井はジヨンの様子がおかしいことに気づく。


寸評
山下敦弘が1時間余りでまとめあげたサスペンス劇だ。
短く要領よくまとめ上げられている。
ジョンは自分が犯した罪に苦しんでいたのだろう。
死を覚悟した彼は、事故死とされているさゆりを実は殺していたことを告白して人生を終えようとする。
ところがジョンは生存してしまい、そのことで二人の関係がおかしくなっていく。
ジョンが凶暴化していく様子はまるでホラー映画だ。
どんでん返しのように、描かれてきたことがひっくり返るのが映画らしい。
一つは浅井の夢の世界、想像の世界であること。
一つは浅井が行っていた行為だ。
アッと驚く展開で、正にこの映画の見どころとなっている。
だけど、さゆりをジョンに預けた浅井が、どうしてあの場面にいたのかなあと思った。
それぞれが自分を偽って慰霊登山に行っていたことになる。
二人は偽善者だったが、一番悪いのは浅井だったということだな。
さゆりに奈緒を起用しているのだが、奈緒は一言も発しないのもユニーク。

パーフェクト・ストーム

2025-01-23 07:43:03 | 映画
「パーフェクト・ストーム」 2000年 アメリカ


監督 ウォルフガング・ペーターゼン
出演 ジョージ・クルーニー マーク・ウォールバーグ
   ダイアン・レイン ジョン・C・ライリー
   ウィリアム・フィクトナー カレン・アレン
   ボブ・ガントン ジョン・ホークス
   メアリー・エリザベス・マストラントニオ

ストーリー
1991年10月のある日、マサチューセッツ州の港町グロスターをメカジキ漁船アンドレア・ゲイル号が出航しようとしていた。
船長のビリーは北大西洋上で多くの危険な漁を経験してきた海の男だ。
しかし、女船長のリンダが大漁続きなのに対し、ビリーは今一つふるわなかった。
ビリーは戻ったばかりの仲間達を説き伏せて再び漁に出ようとしていた。
ビリーを尊敬するボビーは恋人のクリスティーナと新しい生活をスタートさせようとしていて、彼女は危険な漁に愛する男を送り出したくはなかった。
二人の将来の為に今回の漁に賭けたいとボビーの決意は固かった。
ビリーたちは遠方の漁場へ足を伸ばし、グランドバンクの東方にあるフレミッシュ・キャップに入り、期待通りの大収穫を収めたが、船内の製氷機が故障するというアクシデントが発生する。
さらにこの時、ノーイースターと呼ばれる嵐に加えてハリケーンも接近しているという報道を聞いて、漁を諦め急ぎ帰路に就いた彼らだが、ノーイースターとハリケーンが融合し、巨大な嵐“パーフェクト・ストーム”が発生した。
アンドレア・ゲイル号は大嵐の中心に遭遇する。
気象図で天候を予測したリンダはビリーに警告を与えたが、遅かった。
ビリーらクルーは、必死に大嵐と戦い、一度は最悪の状況から脱したかに見えた。
しかし容赦のない大波が再び迫り、船を飲み込んでしまう。


寸評
VFXを駆使した人間ドラマとスペクタクルが融合した作品である。
冒頭で港町グロスターの様子が念入りに描かれる。
一見してここが古くからの港町であることがうかがえる。
海の男たちが描かれているが、内容は僕が見てきた西部劇の世界に通じるものがある。
彼らは一獲千金を夢見てカルフォルニアを目指す荒くれ男のようだ。
ジョージ・クルーニーは言ってみればジョン・ウェインだ。
ビリーはカジキマグロの漁において女性船長のリンダに後れを取っている。
男としてのプライドが許さなかったのだろう。
危険と分かっていても男には行かねばならないことも有るのだ。
それはボビーも同じだ。
不良が続いたことで彼らはさらに遠くの危険水域へ向かっていく。
いがみ合っていた男同士の助け合いがあるのも西部劇を思わせる。
実話に基づいているとは言え、そのようなことが本当にあったのかどうかは分からないが、感動的であり映画的である。

映画としては荒れ狂う海での格闘が見せ場である。
ヨットの遭難、救助隊の活躍も同時並行して描かれる。
あのような暴風雨の中でもヘリコプターは飛べるのだろうかと思わせる。
救助隊も危険を顧みない男の中の男たちである。
スペクタクル映画では自然の猛威に打ち勝ったり、とんでもないヒーローが出てきたりするが、現実はそうはいかない。
一瞬の勝利を見せた後にさらに大きな波が寄せてきて海の藻屑となってしまう。
待ちわびる女たちの姿も痛々しい。

彼らが出会った嵐は、バミューダ海域から北上した巨大ハリケーンと、五大湖付近で発生した爆弾低気圧がジェット気流に乗って海上に流され、さらにカナダ付近の寒冷高気圧がぶつかって100年に一度というパーフェクト・ストームになったものである。
予期せぬことが起きるのが自然災害だ。
人間の英知をつくしても自然には勝てない。
自然は神の領域だと思う。
水を一杯に浴びて格闘する演者たちに拍手の一編である。

ウインド・リバー

2025-01-22 07:06:29 | 映画
「ウインド・リバー」 2017年 アメリカ


監督 テイラー・シェリダン
出演 ジェレミー・レナー / エリザベス・オルセン
   ジョン・バーンサル / グレアム・グリーン
   ケルシー・アスビル / ギル・バーミンガム
   ジュリア・ジョーンズ / マーティン・センスマイヤー

ストーリー
アメリカ中西部、ワイオミング州にあるネイティブアメリカンの保留地ウインド・リバー。
この地域は春でも深い雪に覆われた山岳地帯で、白銀と静けさが一面を包んでいる。
そんな土地である日、ネイティブアメリカンの少女の死体が見つかった。
第一発見者は野生生物局の白人ハンター、コリー・ランバート。
裸足で凍りついたまま発見されたその少女は、コリーの娘エミリーの親友、ナタリーだった。
コリーは部族警察署長ベンと共にFBIの到着を待ったが、遅れてやってきたのは新米女性捜査官ジェーン・バナーたった1人だった。
死体発見現場に案内されたジェーンは、不可解な状況に驚いた。
現場から5キロ圏内には民家などはひとつもなく、ナタリーは薄着だった上に裸足で、前夜の気温は約マイナス30度の肺が凍って破裂するほどの極限の状態だったのに、なぜナタリーは生き絶えるまで雪原を走らなくてはいけなかったのか・・・。
検死結果でナタリーは暴行を受けていたことが判明した。
死因はあくまで肺出血であり、他殺と認定することができず、規定によりFBIの専門チームを呼ぶことができなかった。
ジェーンは、この土地の特有な地理や事情に精通したコリーへ捜査の協力を依頼した。
早速ジェーンたちはナタリーの父親マーティンのもとを訪ね、事件の日、ナタリーは恋人のところへ行っていたことを知る。
コリーは必ず復讐するとマーティンへ約束しその場を離れた。
捜査を続けたコリーとジェーンは雪の深い森で白人男性の遺体を発見した。
その男性は、近くの掘削所で働くナタリーの恋人マットだった。
その夜ジェーンを自宅に招いたコリーは、3年前に娘エミリーを亡くし、それが原因でネイティブアメリカンの妻ウィルマと離婚し、息子とも離れ離れに暮らしているという過去を話した。
しかも、エミリーはコリーの留守中に失踪し、ナタリーと同じように自宅から遠く離れた場所で変わり果てた姿で見つかっていたのだ。
翌日、コリーとジェーンはベンが応援要請に駆り出した保安官4人を引き連れて、コリー以外の全員でマットの同僚が共同生活をしている山奥のトレーラーハウスに乗り込んだ。
ジェーンたちはトレーラーハウス近くにいた数人の警備員にマットのことを尋ねると、なぜか警備員の1人は報道で伏せていた被害者の名前を知っており、不自然な言動を連発した。
ジェーンがドアを開けようとしたとき、一発の銃声とともにジェーンが倒れた。
激しい銃撃戦となり次々と保安官たちも倒れてしまう。
しかしこの事態を救ってくれたのは、コリーだった。
コリーは1人逃げたピーターを追い詰め裸足のまま雪山の山上で拘束。
冷静にピートへ、ナタリーの真相を聞き出した。
コリーはピートを解放しナタリーと同じように裸足のまま走らせ、倒れるピートを見守った。
ジェーンは防弾チョッキのお陰で助かり、コリーへ感謝を伝えた。
コリーはマーティンのもとを訪れ、犯人がぶざまに死んだことを報告し、互いの亡き娘に想いを寄せて寄り添った。


寸評
舞台は深い雪に覆われた山岳地帯で、先住民族に与えられた場所だ。
この背景がこの作品のバックボーンを支えている。
加えてFBIのジェーンが土地に不慣れなこともあって、部族警察署長のベンや野生生物局の白人ハンターであるコリーからアドバイスを受けて捜査を進める姿である。
ジェーンは凄腕のスーパー・ウーマンとして描かれていない。
むしろ頼りになるのはコリーやベンの方で、この関係性がもう一方の柱となっているし、リアリティがある。
先住民族はこの過酷な土地に押し込められているが、白人のコリーとは友情を深めている。
コリーがマーティンを訪ね、別れ際に「俺はハンターだ」と言うのは、犯人を見つけ射殺して仇をとってやるとの意思表示だ。
コリーのジェレミー・レナーがなかなか渋い。
コリーが捜査に積極的に参加しているのも娘の死因によるところで、彼の胸の内が伝わってくる。
ナタリーの恋人が死体で発見されるが、遺体はハゲタカについばまれている。
ナタリーの遺体状況と言い、この地域の過酷さが示される。
コリーは家畜を襲うピューマを退治するハンターという仕事であることも生きている。
本来の仕事に向かったコリーが最後に活躍するのも無理のない描き方である。
コリーは最後にマーティンのもとを訪れる。
一人逃げたそうだなというマーティンに、コリーはその一人がぶざまに死んだことを報告し、妻を亡くしたばかりのマーティンは離れていた息子と暮すことになったと伝える。
悲惨な事件に対するわずかな光明だが、それでも我々に先住民族がアメリカ社会から疎外されている現実を伝えられる。
サスペンス作品としてのクオリティは高く一見の価値ある作品だ。

バニシング・ポイント

2025-01-21 06:56:46 | 映画
2019/1/1より始めておりますので10日ごとに記録を辿ってみます。
興味のある方はバックナンバーからご覧下さい。

2020/7/21は「リンダ リンダ リンダ」で、以下「ルーム」「レイジング・ブル」「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」「レインマン」「レオン」「レスラー」「レ・ミゼラブル」「老人と海」「ロード・トゥ・パーディション」「ローマの休日」と続きました。
 
「バニシング・ポイント」 1971年 アメリカ


監督 リチャード・C・サラフィアン
出演 バリー・ニューマン クリーヴォン・リトル
   ディーン・ジャガー ポール・コスロ
   ボブ・ドナー ティモシー・スコット
   ギルダ・テクスター アンソニー・ジェームズ

ストーリー
元海兵隊員、元警察官、元オートレースのドライバーで、今は車の陸送をやっているコワルスキーは、デンバーからサンフランシスコまでを猛スピードでの陸送を引受ける。
覚醒剤を取りに“地獄の天使”というバーに立ち寄った彼は、店の主人とサンフランシスコまで15時間で行くという賭けをした。
全速力で飛ばすコワルスキーの車を発見したオートバイ警官が追跡してきたが追いつけず、路傍の砂埃の中に置き去りになった。
やがて受信機を通じてスーパー・ソールの声が聞こえてきた。
スーパー・ソールは盲目のディスク・ジョッカーでコワルスキーのためにスパイ役をやっている。
警察の通信を盗み取りして、情報をコワルスキーに流して追跡者たちをまく手助けをしているのだ。
始めたのだ。
国境を越えネバダ州に入ると、今度はネバダ州の警官が追跡してきた。
彼は自分が警察署に勤めていたときのことを思い出した。
上官が少女を麻薬所持の疑いで取調べ中に、弱みにつけこんで彼女を手ごめにしようとしたのをとめ、クビになってしまったことなどだ。
彼がさらに走っていると、スーパー・ソウルが再び通信してきた。
警告通り追跡してきた数台のパトカーに追い詰められ、やむなく彼は車を砂漠に向けた。
コワルスキーは警官時代、雪国で恋人のベラと遊んだり口論したりしたことを思い出した。
また海兵隊員のころ、負傷兵を野戦病院へ運ぶ途中、ジープに砲弾が命中し、負傷したことなども。
そのときタイヤがパンクした大きな爆発音で回想が破られた。
タイヤの交換中、彼はガラガラ蛇に襲われそうになるが、砂金取りの老人が現れてガラガラ蛇を捕らえてバスケットの中へ放り込んだ。
バスケットは蛇でいっぱいだった。
老人は、砂漠を脱出する道を教えてくれ、ガソリンのある集落に案内してくれた。
老人と別れて逃走を続けるコワルスキーに、スーパー・ソールの情報が入った。
彼のニュースはいまや全世界に広がり、大変な話題となっていて、彼の向かう道という道には、警察当局の網が張られていると言った。
やがて平服を着た警官たちがスーパー・ソールの発信所へ行き、スーパー・ソールを袋叩きにした。
コワルスキーはバイクに乗った男エンジェルと出会い、荒野の中にある彼の家に連れていかれた。
そこにはヌードでバイクに乗った娘がいて、彼に強壮剤や煙草をくれた。
エンジェルのアイディアで車をパトカーに偽装して非常線を突破したコワルスキのゆくてに、巨大なパワー・シャベルが立ちふさがっていた。
コワルスキーの心に一瞬の戦慄が走った。が、コワルスキーの顔に笑みが浮かぶと、彼はアクセルを踏み込んだ。
猛然と突っ込んだコワルスキーの車は、火柱をふき上げて空に舞い上がった。


寸評
平均時速200キロという狂ったようなスピードで突っ走ろうとするコワルスキーと、面目にかけても彼を捕らえようとする警察との間に繰り広げられるバトルが見せ場となっているが、コワルスキーの回想を通じて当時のアメリカ社会の問題と若者の反抗する姿を描いている。
バトルは警官とだけではない。
ジャガーに乗ったスピード狂に挑戦されて相手を川に転落させている。
彼の運転が巧みなのは元モーターバイクのレーサーであったからで、そのことは回想で示されるのだが、彼はふっ飛ばされて重傷を負っていた。彼は警察官をやっていた頃のことも回想する。
同僚がワイロを取っていたこと、麻薬所持の疑いで取調べ中の少女を犯そうとしたのを咎めたこと、出動を拒みパトカーを勝手に動かしクビになったことなどだが、それは警察組織の腐敗を訴えていることになる。
雪国の回想では彼女とマリファナの事で喧嘩し、サーフィンをしてまた喧嘩する。
兵役の頃の回想では砲火をくぐり負傷兵をジープで野戦病院へ送ろうとしているのだが、砲弾がジープに命中しコワルスキーは傷ついてしまっている。
当時のベトナム戦争への批判も含まれていたのだろう。
この映画は「イージー・ライダー」の影響を受けていると思う。
警察とのバトルなど「イージー・ライダー」よりも楽しめる場面は多いとは思うが、劇場で見た時の印象として、どこか「イージー・ライダー」の陰を追いかけているような気持になったような気がする。