「火垂るの墓」 1988年 日本
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監督 高畑勲
声の出演 辰己努 白石綾乃 志乃原良子
山口朱美 酒井雅代
ストーリー
終戦近い神戸は連日、B29の空襲に見舞われていた。
幼い兄妹・清太と節子は混乱のさなか、母と別れ別れになった。
清太が非常時の集合場所である国民学校へ駆けつけると、母はすでに危篤状態で間もなく息絶えてしまった。
家を焼け出された兄妹は遠縁に当たるおばさん宅に身を寄せた。
しかし、うまくいっていた共同生活も生活が苦しくなると、おばさんは二人に対して不満をぶつけるようになった。
清太は息苦しい毎日の生活が嫌になり、ある日節子を連れて未亡人の家を出た。
そして、二人はわずかの家財道具をリヤカーに積み、川辺の横穴豪へ住みついた。
兄妹は水入らずで、貧しくとも楽しい生活を送ることになった。
食糧は川で取れるタニシやフナ、電気もないので明りには蛍を集めて瓶に入れていた。
しかし、楽しい生活も束の間、やがて食糧も尽き、清太は畑泥棒までやるようになった。
ある晩、清太は畑に忍び込んだところを見つかり、農夫にさんざん殴られたあげく、警察につき出されてしまった。
すぐに釈放されたものの、幼い節子の体は栄養失調のため日に日に弱っていった。
清太は空襲に紛れて盗んだ野菜でスープを作って節子に飲ませたが、あまり効果はなかった。
ある日、川辺でぐったりしていた節子を清太は医者に診せたが、「薬では治らない。滋養をつけなさい」と言われただけだった。
昭和20年の夏、日本はようやく終戦を迎えたが、清太らの父が生還する望みは薄かった。
清太は銀行からおろした金で食糧を買い、節子におかゆとスイカを食べさせるが、もはや口にする力も失くしていた。
節子は静かに息をひき取り、清太は一人になってしまった。
彼もまた駅で浮浪者とともにやがてくる死を待つだけだった。
寸評
僕は滅多にアニメ作品を見ないのだが、このアニメだけは何度見ても泣ける。
野坂昭如の原作を読んで泣き、このアニメを見て泣いた。
先ず、幼い清太と節子の絆が強く描かれており、その兄弟愛の健気なさに涙してしまう。
白石綾乃さんの節子の声がたまらない。
戦時中だと、おばさんの言う事は当たり前だったのかもしれない。
それでも二人は貧しいながらも戦時下で楽しそうに暮らしている。
ままごと遊びの延長のような生活は微笑ましい。
それ故に、迎える結末がとてつもなく悲しい。
彼らに食料を与えたい、病院にいれたい。
しかし僕たちには彼らを救うことは出来ない。
終活の一環で原作本も処分してしまったが、たしか「焼土層」なる短編も収められていたはずだ。
こちらは清太の後日談のような話で、浮浪者が意識朦朧となって排泄物をまさぐりながら死んでいくと言った内容だったように思う。
僕にはこのような話を想像することもできない。
その時代を生きた人にしか分からないものではないかと思う。
ウクライナ、ガザ、シリアなどの状況を見ると、やはり戦争は良くない!
文章を書いていて作品の場面が思い浮かび、自然と涙が湧いてきた。