ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

かぞくのくに

2012-08-02 23:37:36 | か行

ARATA氏が、井浦新と名前を変えて
挑んだ作品です。


「かぞくのくに」70点★★★★


*******************

1959年から84年まで行われた“帰国事業”。
約9万人の在日コリアンが
北朝鮮に渡った集団移住のことだ。

しかし帰国者たちの日本への再入国は
ほとんど許されないため、
日本と北朝鮮で、バラバラになってしまった家族が多くいる。

日本に暮らす在日コリアン、リエ(安藤サクラ)も、
兄(井浦新)と25年前に別れたままになっていた。

そんなある日、
兄が病気療養のため日本に帰国できることになる。

25年ぶりに会う兄を
歓迎するリエたちだったが――?!

*******************

自身の家族と北朝鮮の現状を映した秀作ドキュメンタリー
「ディア・ピョンヤン」「愛しきソナ」で知られる
在日コリアン2世ヤン・ヨンヒ監督(美人!)が作った
初のフィクション映画です。

フィクションといってもほとんどは
監督とお兄さんの体験した実話だそう。


安藤サクラ、そしてARATAが井浦新と改名して熱演し、
「息もできない」の監督&主演である
ヤン・イクチュンも出演しており、かなり豪華。

手持ちカメラのフラフラ感など、
ドキュメンタリー風味の残る絵作りで、
それが家族のリアリティになっています。

演出はややストレートにすぎるし、
ある部分は言葉足らず、ある部分は語り過ぎたり、と
バランスも欠いている部分もあるんだけど

でもフィクションにしたことで
“感情”はより表現されている気がします。

愛する人々が、理不尽にバラバラにされるときの
もぎ取られるような悲しみが確かに伝わってくるので

それで十分、成功だと思います。


北朝鮮の不条理をグッと飲み込み、
「こういうのホント多いから」と、
笑うしかない兄の姿を見るにつけ

人の生きる気力を奪うのは
本当にこういうことの繰り返しなのだ、とつくづく。

なんという国なのだろうと、つくづく。

なんとかならんもんですかねえ!


★8/4(土)からテアトル新宿、109シネマズ川崎ほか全国順次公開。

「かぞくのくに」公式サイト
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする