ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

聴こえてる、ふりをしただけ

2012-08-11 16:39:56 | か行

精神科の現役看護師である女性監督の
初長編デビュー作。

つたなさもあるけど、
意外に、残るんだこれが。


「聴こえてる、ふりをしただけ」57点★★★

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突然母を亡くした
11歳、小学5年生のサチことさっちゃん(野中はな)。

周りの大人たちは、
「お母さんはいつもそばで見守ってくれている」というけれど、
あんまり信じられない。

そんなとき、
「お化けが怖い」という転校生がやってくる。

人は死んだらお化けになるの?
だったらお母さんに会える――?

そしてさっちゃんは
あることを試してみるのだが・・・?

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二児の母である監督が、
自身の子ども時代の記憶をもとに描いた作品だそう。


さっちゃんが理科の授業で習う
「魂と心の関係」のくだりにはハッとさせられる。

つまり
「“心”と思ってるものも、すべて脳みそが考えてることだ」ってこと。

そんな高度なこと
習った覚えは全くありませんが(単にアホだったんだな。苦笑)

いまこの年になっても
けっこう「ハッ」とさせられました。


ちょっと“もさっと”したさっちゃん役の子と、
カメラが秀逸で

自然光を生かし、子どもの外側の柔らかさと、内側の柔らかさ、
両方を映し出している。


なんだけど、話はかなり表層的。

「お化け」と「お母さんの霊」を重ねたさっちゃんは、
静かに悩み、答えを出していくんだけど、


どうかなあ、
今の11歳っても少し色々考えてるし、
もっと世慣れてないかなあ。


妻の死を受け入れられず、
どんどん壊れていく父親、というのも
なんだか定石っぽく、

もう三歩ほど潜って欲しかった、という
気もします。


何より思ったのは
小学校の教室が静かすぎること。

取材で行くと
ホント、とてつもないもんねあのパワー・・・。

そんな感じで、
どこか“完全リアルと”いうよりも、
監督の“思い出の子ども時代”の
ノスタルジーを強く感じる作品だったんだけど、

それでも、けっこう残るんだよねえ不思議と。


★8/11(土)から渋谷アップリンクほかで公開。

「聴こえてる、ふりをしただけ」公式サイト
コメント
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