母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

 上方唄 “京の四季”

2020年11月25日 | 歴史
春は花 いざ観にでんせ 東山
色香あらそう夜桜や
浮かれ浮かれて 粋も無粋もものがたい
二本差しなら和らごう
祇園豆腐の 二軒茶屋

   みそぎぞ夏はうち連れて
   河原に集う夕涼み
   ヨイヨイ ヨイヨイ よいやさ

     真葛が原にさやさやと
     秋は色なす華頂山
     しぐれをいとう唐傘に
     濡れてもみじの長楽寺

        思いぞこもる 丸山に
        今朝も来てみる 雪見酒
        エエ そして
        やぐらの差し向かい
        ヨイヨイヨイヨイ よいやさ



  ★作詞は 儒学者 中島棕隠 と言われ、江戸中期ごろ京都で流行った上方唄の端唄

相棒

2020年02月11日 | 歴史
褪せた相棒 はげ落ちた色
金のペン先だけがいつもの光
変わらぬ姿

降る年月 いつもいっしょ
働いて貰われて 使う主が亡くなり
また戻ってきた旧い相棒

毎日握りしめた
色褪せた羊の皮よ
母の汗
私の遠い望み受け止める
18金の日日
猫の脚 相棒たち

紫紬の細帯の

2017年10月09日 | 歴史
紫紬の細い帯
ばあさまの形見の糸

大きな玉繭を煮て糸にとり
染め上げつむいでとんからり
七人の子を育てながらとんからり
逢ったことのないばあさまを
一本の細帯に偲ぶとき
秋は昔を語り出す

長火鉢の熾
長いキセルで吸う煙草
頭のてっぺんそり上げて
二百三高地の髪型に
たすきを掛けて山の家
蔵の二階でとんからり
機織りしていたその時代

時はしずかに流れ沢山の人が
長い歳月かけて育った家にもう誰も居ない
棲む人の居なくなった思い出の家に
秋は今年もやって来る
秋海棠がこぼれ咲き 
柿の実が枝に残り紅く光る秋

単衣の着物が終わると
温い紬の季節が来る
もう誰も居ない家静かな蔵
ちいさな歴史は星になる




千年一日

2013年04月11日 | 歴史
四月の終うさくらの山
谷戸城跡にはなびら降る
はなびら降る茶臼の丘に
静かな春が過ぎてゆく
海遥か山麓の村
平安の夢もはるかに
訪なう者も村人のほか絶えてなければ
平成のさくらの祭りの
ぼんぼりの列のみ揺れて

眺めやる 四方の山々
富士川に集める河は ほの白み南へと流れ 霊峰はかなたに座し
勾配の里 陽炎揺れてのどかにはらはら はなびら散るのみ
歳月は いかなるものぞ
いまははや いにしへ遠く
山里に新しき みやこ人来て異なる家たてしという

変わらぬは広がる大空 高き山々 茶臼の丘 
渡り来る松風の音 春草のこみち
古き館にいま黒駒駆る若武者なく
総ては土に埋もれ伝説も語らるること稀なれど
連山はもの言わずさくら散る丘を眺める
千年も一日の如き
碧き山の稜線をうねらせて