母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

夏のポエム 〈あかとんぼー清春村へ〉

2008年08月10日 | ふるさと
母さんのふるさと 
白壁の家
ふじ色の明るいパラソルをさし
蝉なく深い森をくぐり
木の葉丸めて掬い呑む
甘い湧水の山の道を辿り
天井の高い大きな家でいく日か
夏の日を過ごし
ボーイスカウトの歌声に
夕暮れれば蜩も歌っていた
私の六歳

白い木綿の帽子に
赤とんぼが戯れ止まったのを
思い出しているけれどもう
かあさんはいつの間にか
小さく小さくなってあの長い
ふるさとへの山道を
パラソルをさして軽やかに
歩いてゆくことはありません