母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

ねこ草

2016年01月19日 | 
雪の降った日の翌日
秋に蒔いた冬菜の中に混じり伸びていたねこ草
広菜の中に籠るひとむらの
細い草の葉の集まりは
この厳しい冬の朝の暖かな陽を浴び
冷気を一生懸命に吸い取り
草を緑に光らせるのだ

おいしいおいしいとはあちゃんが
いつもいきなり山羊になり無心に食べたねこ草
生命力強くへこたれない草は
医者いらずの長生きはあちゃんそのままに
食べるひとの居なくなった今年の冬も
なんとも元気に伸び生き続ける

はあちゃんは今年も
白い雪の景色に見とれ
真っ赤に色づいたまま落ちもしない可愛い南天の葉たちを眺め
子どものころのいたずらな目をして
冬の日だまりで楽しんでいる
透明猫になったグレーのはあちゃんを
私はいつも眺めているよ
はあちゃんー



元旦のゆめ -ナターシャのワルツ-

2016年01月02日 | 
元旦の朝早聴いた雅楽の音を忘れ
バッハのカンタータを流した
逢えなくなった猫の思い出の旋律を
懐かしんだことし

映画音楽の中の「ナターシャのワルツ」
猫の両手を取り一緒に踊ったワルツを
ことしは一人で踊った
チャーミングなオードリーと可愛いはなこ・ナターシャが
くるくると回り舞ったような気がした

彼女が好んだミルクとチーズの匂う
白菜とホタテのクリーム煮の鍋をそっとかきまぜ
ソーセージも茹で
元旦の日のつましい食事とした

仔猫時代に聴いていたバッハと映画音楽 そして
いつも好きだった食べ物らを思い出に供え
手のひらに残る灰色の毛の感触を想うとき
元旦の空は無情に青く透きとおり
不思議な新しい音を奏でて応えてくる

甕に蝋梅と水仙と千両
赤黄桃色の三色の金魚草を活けると
漂う春の匂いがあったが
慣れ過ぎた美しい動物の姿はない

部屋深く冬陽は差し込み
猫柳になった猫の脚は光と消え去り
新しい年の空は何事もなく
物語のなかでのんきに明るく広がっていた