母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

残酷な春

2018年04月29日 | 青春
ゆっくり眺める間もなく
大急ぎで通り過ぎて行く春の花
人の心に燃え残る短い青春
冷酷な素顔 自然の風は
あっという間に立ち去ってゆく

陽光のもと
午後のぬるむ空気を浴びれば
既にはらはらからかうように急ぐ桜
あけぼのいろの嵐 燃えるはなびら

大輪の牡丹の花は
盛りの顔をふと陰らせ
時の流れに変貌し
丸い舞台を回しゆく

駆け足で秋はやってくるが
春は
飽きやすく心変わりするドンファン
恋人のように
衣の裾ひらり翻し無情な顔でさようなら

取り残された哀れな人間どもは
またかとつぶやき自分の年輪を指折りし
みなしごのように辻で佇んで
糸のようなため息をつく

そして毎年やってくる美魔女の面影い抱き
一年ごとに古くなっていくだけ
残酷な迷い子の 春