母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

ブラック珈琲とミルクをー越路吹雪ー

2018年11月29日 | 
明るい陽の差し込む朝の部屋で
ブラック珈琲とミルク
クロワッサンと少しのサラダに少しのハム
いつからか規りになった簡素な朝の食事はあなたの言葉から

あなたはいつも太陽のように輝き
この世で一番といえる輝くステージを見せてくれたのに
まだ未来を持ちながらはらり木の葉が散るように
いきなりこの世から消え去った
沢山の哀しみが劇場に溢れ漂い
ひとはその歌声と姿を求め彷徨った

残して去る日愛する夫に
“つねみさん ブラック珈琲とミルクをー”
朝食を気にして最後に残した一言

夫はそれから7年後
奇しくも妻の去った年齢となった年に
まだ若すぎる音楽家の生涯を終えた
天の計らいのふたりの人生の扉が閉まっても
昇天してなおそれは輝き続け
人々の心に残り続ける
残された未来が永いほどに
人は心にその人を刻みつける
残影が永く深く人々に彫られてゆく

乙女たちに大人の女の心意気を教え
生きる楽しみの色彩を流し
シャンソンのメロディーを教えて去った
コーちゃん 忘れられぬ歌声 

スズラン咲くフランス花のパリ
マロニエの道春秋の匂い心地よく漂わせ
いのちに届く多くの想い出を人の心に残し
風に乗り去った愛しい面影 永遠のステージ

あなたの去った年齢を遙かに超え毎朝の
習慣となったブラック珈琲とミルク


秋の句 空など

2018年11月05日 | 季節
☆ 駆け足や秋をいとしむひまもなく

☆ 大輪のダリアの色の夕まぐれ

☆ 空の色たちまち流る風閉じて

☆ 庭先に小菊売る農家(いえ)軒高し

☆ 野の猫の姿少なく笹の道

☆ 舗装され土の小道の姿消えた

☆ 炎暑去ればまた忘れ行く日日なりし

☆ 卒寿ひとり国立劇場訪なうひと

☆ 年輪を濃くも刻みて風卒寿

☆ アンテナを広げて街の灯を迎え