母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

空の瞳

2013年06月30日 | 季節
六月
空の瞳に涙あふれ
目のふちからこぼれる涙は
細い瀧になり
幾つもに分かれ
ひろい地面を湿らせ
花々のつぼみを潤し
生き物を育み
自転する地球を糸車にして
生き物のすみかや家の屋根屋根をしとど濡らす
緑の山を 原っぱを
水の匂いで包む 

空の瞳は
海洋の国々の水の田を滑らかに光らせ
やがて白い雲のむこうに
絹衣をなびかす天女のように姿を消す

六月の空には目に見えぬ
幾つかの
瞳がある
物言わぬ
女神の瞳がある

つりがね草 -グレコ姫に捧ぐ-

2013年06月13日 | 

首かたむけたつりがね草

ピンクのベルが聞こえる日

遠くに旅立ついのちのひとつ

とんがり耳の可愛い子

まるい眼をした可愛い子

あなたのきれいなグレ-の毛並み

すっきり延びたあなたの脚

肩に二枚の羽が伸びて来て 空に高く 飛び去っていく可愛い子

カンパネラ 別れのベルが鳴る

カンパネラ また逢う日まで

カンパネラ 六月の空を

長い尾を立て猫が行く 羽をつけた灰色の猫が行く 

首かたむけたつりがね草

花束を抱え 天使たちが舞う

ああ 別れは絵の中のおとぎばなしのよう-

つりがね草の花の上に はらり あふれた涙がこぼれ落ちる

さようならは言わない

また逢う日まで また逢う日まで

しばしお別れ 可愛い子 愛らしい姫 きれいだった姫よ

あなたのための鐘が 鳴リ続けるよ