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希望給与は800万円」再就活した年収1000万円の50代元管理職が200社に落ち…たどりついた職種の想定外の時給

2023年04月23日 15時03分50秒 | 雇用と職のこと



希望給与は800万円」再就活した年収1000万円の50代元管理職が200社に落ち…たどりついた職種の想定外の時給


4/21(金) 11:17配信
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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/satamedia

年金支給開始年齢の延長、支給年金の減額……。

世界最速の少子高齢化の日本に、近い将来そんな事態がやってくるかもしれない。人事ジャーナリストの溝上憲文さんは「50代以下の世代は70歳まで働くのが当たり前の時代になるのは必至です。同じ会社で再雇用として働くか、再就職するか、熟慮して早めに判断・行動する必要があります」という――。

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■年金支給開始年齢の延長、支給年金の減額… 

 フランス政府が公的年金の支給開始年齢を64歳に引き上げたことで大規模な暴動が発生したが、これは日本にとって対岸の火事ではない。

  2022年の出生数が80万人を割るという世界最速の少子高齢化の進行が将来の年金財政に暗い影を投げかけている。 

 現行の65歳の年金支給開始年齢が数年程度延長される、あるいは年金の減額が発生する可能性も高くなっている。少なくとも今の50代を含む若い世代にとって老後の生活を考えると、70歳まで働き続けることが当たり前の時代になるだろう

  実際に60歳定年後も働く人が増えている。 

 総務省の調査によると、60歳以上の就業率は、

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60~64歳 73% 
65~69歳 51% 
70~74歳 34% 
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となっている(「労働力調査」2022年)。 

 50代が最初に選択を迫られるのが60歳定年後、会社に残って働くか、それとも別の会社に転職するか、起業するか、である(もちろん完全リタイアという選択肢も)。

  高年齢者雇用安定法は65歳までの雇用確保措置を義務づけており、実際に定年後も同じ会社で働いている人は多い。ただし、多くの問題を抱えている。  厚生労働省の「高年齢者雇用状況等報告」(2022年12月16日発表)によると、65歳までの雇用確保措置の内訳は以下のようになっている。

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定年制の廃止 3.9% 
定年の引き上げ 25.5% 
継続雇用制度の導入 70.6%
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継続雇用制度とは、本人が希望すれば引き続いて雇用する「再雇用制度」などのことを指し、この再雇用の導入割合が圧倒的に高い。 

 企業規模別では従業員301人以上では継続雇用制度の導入企業が83.3%と、大企業ほど継続雇用制度を導入している企業が多い。  

しかも再雇用で働く人は1年ごとに契約を更新する有期雇用契約の非正規社員が多い。なぜ定年延長ではなく再雇用なのか。




 再雇用する企業側のメリットは、文字通り、いったん退職した人を再び雇うことで次の2つが挙げられる。 

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① 定年延長に比べて給与の減額が可能(加えて高年齢雇用継続基本給付金を受給できる) 
② 管理職のポストを外したり、仕事の役割を変更したりできる
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つまり60歳定年を維持し、60歳以降の人件費を極力抑制したいとの思いがある。  

パーソル総合研究所の調査(2021年5月28日)によると、

定年後再雇用者の約9割が定年前より年収が下がり、全体平均で年収が44.3%も下がっている。下がり方も激しく、半分程度に減った人は22.5%、半分以下に減った人は27.6%もいる。2人に1人は半減かそれ以下なのだ。  

当然のことながら、年収もそれほど高くない。60代前半(60歳以上64歳以下)の継続雇用者(フルタイム)の年収の平均は374万7000円。 

---------- 
「400万~500万円未満」20.4% 
「300万~400万円未満」32.3% 
「200万~300万円未満」16.5% 
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といった数字になる〔労働政策研究・研修機構「高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)」2020年3月31日発表〕。  

しかも、この中には企業年金や公的給付(在職老齢年金、高年齢者雇用継続給付)も含まれており、実質の年収はさらに低くなる。例えば、大手通信企業グループには現役時代の半分程度の年収300万円未満の再雇用者も少なくない。

  年収が実質的に定年前の半分程度に一律に下がるうえ、管理職は役職も外れ、仕事の中身も現役世代のじゃまにならない程度の補助作業に従事している人も多い。その結果、どんなにがんばっても給与が上がらない、あるいはまともな仕事を与えられず、働きがいが感じられずにモチベーションが下がる人も少なくないといわれる。  

さらにいえば、65歳までは雇ってくれるが、それ以降も雇ってくれる保障はない。改正高年齢者雇用安定法(21年4月施行)によって70歳までの就業機会の確保が努力義務となったが、あくまで努力義務であって、働きたいと思っても認められない可能性もある。


■再雇用が嫌なら定年前に転職する方法もあるが……  

それなら少なくとも70歳まで働くことを見据え、60歳の定年前後に転職するのも一つの選択肢だ。 

 たとえば転職後の年収が350万円でも、会社に頼られ、自分の好きな仕事がやれて70歳まで働ける会社を見つける。前述の再雇用で年収350万円もらい、65歳まで5年間限定で働くよりも総年収も増え、働きがいも得られるだろう。

  ただし会社に長年勤務し、管理職の経験しかない人が初めて転職するのは相当の勇気がいる。ただ、一般社団法人定年後研究所の池口武志所長はこう言う。 

 「長年マネジメント経験しかやっていないから、どこも通用しないと思っていた人が全然違う場所で必要とされるケースもある。中小企業や人材不足で悩んでいる医療・介護業界、社会福祉団体などでは民間企業でマネジメントをしてきた管理能力や問題発見能力などを頼りにされることも多い」

  その上で一つのケースとして「社会福祉法人は近年、会計の透明化が求められ、しっかりしたディスクローズ資料を作成しないと自治体などの公的補助金が支給されにくくなっている。しかしそうしたノウハウに乏しい。民間企業では当たり前のディスクローズ資料を作った経験のある広報の人などが重宝されているという話もよく聞く」(池口所長)と語る。  

とはいえ、落とし穴もある。 

 転職活動を始めるにあたって必須なのは、自分の職業キャリアを棚卸しし、自分の“売り”となる経験やスキルを明確化すること。その上で経験・スキルがどの程度通用するのか、求人企業とのマッチングなどについて事前にリサーチすることが不可欠だ。 

 こうした準備をしないで求人企業に応募し、面接で過去の実績だけを強調する人もいる。  

そういう人は「間違いなく失敗する」と語るのはミドルシニア専門の転職支援サイトの社長だ。  

「雇う側からすれば、今までの経験やスキルを活かし、入社後にどんな貢献をしてくれるのか、を一番聞きたい。過去の実績などは職務経歴書を見て、少し話を聞けばわかる。ただ、前職でこんな仕事をしてきたという経験や実績だけを強調しても相手の会社には全然響かない。同じことを繰り返して落とされ続けるシニアは多い」 

 もう1つの失敗するパターンは、前職の年収にこだわり、大幅に下がることを嫌がることだ。


■50代元管理職がたどりついた職種の想定外の時給

 前出の社長は、希望退職者募集に応募して50代後半で再就職活動を始めた人の事例を紹介する。 

 「年収1000万円をもらっていた大企業の元管理職の人が800万円でもよいからと探し始めるが、なかなか見つからず、失業期間が1年、2年と延びるケースも珍しくない。また、100社、200社も受けても落ちる人もいる。最後は年収500万円でもよいからと希望条件を下げることになるが、結局、正社員での採用が決まらず、時給1000円程度の駐車場の警備員やビルの清掃などで働く人もいる」

  時給1000円ではフルタイムでも16万円(20日=1000円×160時間)にしかならない。年収は200万円にも満たない。この金額であれば退職せずに再雇用で65歳まで会社に残っていたほうがよかったかもしれない。転職活動の失敗が老後の生活を暗転させることになる。 

 そうならないためには自分の市場価値を直視し、求人企業が求めるスペックが足りなければ必要なスキルを身に付けることも必要だ。 

 特に中小企業で問われるのは現場力だ。若い頃に一生懸命に学んだ現場の感覚をもう一度取り戻すための学び直しも重要だろう。前出の定年後研究所の池口所長は次のようにアドバイスする。  

「60歳定年を機に別の会社に転職した人たちから聞いた話では50代から準備するほうがよいと言っている。世間に通用するスキルを身に付けるには約1万時間かかるといわれている。1日に費やす時間によって年数が変わるが、大体5年ぐらいは必要であり、55歳から始めたほうがよい」  

あるいは60歳を迎える人で自分のスキルに自信がない人は再雇用後に転職する方法もある。ただし、65歳前に探して転職することが肝心だ。

  「65歳になってから探しても手遅れだ。65歳になってハローワークに行って、たくさん履歴書を書いて応募したが全滅したという話もよく聞いている」(池口所長) 

 大事なことは再雇用中に意識してスキルを磨き、機を見て転職することだ。

  「当所の調査でも再雇用社員に限定し、週3日ないし4日の短日勤務や短時間勤務を認めている企業もある。あるいは週3日勤務で、かつ副業を認めている企業もある。60歳以降の社員に、週1日の副業やボランティア活動を認め、セカンドキャリアの準備に充ててもよいという企業もある。それ以外に国の助成金を使って取得できる資格もある。副業経験や資格取得を通じて再就職の準備をすることもできる」(池口所長)  

もしかしたら副業先での働きが認められ、正式に働いてほしいとうオファーがあるかもしれない。いずれにしろ、70歳までやりがいを持って働きたいのであれば、早期に活動を始めるのが鉄則だ。

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 溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ) 人事ジャーナリスト 1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。 
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