チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

カズオ イシグロ「THE SUMMER WE CROSSED EUROPE IN TAHE RAIN」

2024年05月22日 05時03分18秒 | 

曇、19度、89%

 4月30日、カズオイシグロの新刊が出ました。予約注文の時、いつもと表紙の感じが違うなと思い到着を待っていました。

 届いた本をめくると、イラストと詩で構成されています。カズオイシグロがアメリカのジャズシンガー「ステイシー ケント」に作り送った「歌詞」16編が収められています。彼がステイシーに歌詞を書き送ったのは数年前、ステイシーは贈られた詩のいくつかをレコーディングしています。イシグロの本に先立って、「ステイシー」の新しいアルバムが発売されています。 全ての歌詞が「カズオイシグロ」による16曲です。

 「カズオイシグロ」の本を初めて手に取って30年以上経ちました。今でも香港のアイスハウスストリートにあった洋書店で日本人の名前の背表紙を見た時の感動が忘れられません。求めたのは邦題「日の名残り」でした。彼の本は全て読んでいます。ノーベル賞を取ってからは馴染み深い作家になりました。「カズオイシグロ」は音楽家になりたかったと何かで知りました。作品の隅々に「音楽に造詣がある」と感じます。数年前には黒澤明の「生きる」をリメイクした映画も作っています。イギリスに舞台を写したこの映画も素晴らしい出来でした。「カズオイシグロ」は映画にも精通しています。

 この数日、「ステイシー」の歌声を聞きながら、「イシグロ」の書いた歌詞を読み直しました。ステイシーの細い歌声、心地よく響きます。映画「カサブランカ」を下地に書いたと思われる歌詞、フランスの男優「ジャンギャバン」を歌った歌詞、映画「インドシナ」の「カトリーヌドヌーブ」を歌った歌詞。それぞれを彷彿させる歌です。本、レコードの題名は雨のヨーロッパを旅するとなっていますが、日本の「新幹線」を歌い込んだものも入っています。

 翻訳が出るのかどうか?わかりませんが、「ステイシー」の歌声と共に「カズオイシグロ」の歌詞を読んでみてください。珍しく晴れた天気が続きました。雨のヨーロッパではありませんが、余情ある歌の数々でした。

 

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「おさんぽステッチ」エルメスの絵本

2024年03月13日 05時02分48秒 | 

雨、8度、75%

 ここ半月、久しぶりに針を持ってチクチク。親指の力が若い頃のようにしっかりしていないので歩みの遅いチクチクです。 針を持つのが好き、雨の日が多いので針を持つと尚更落ち着きます。

 刺し掛けの大きな刺繍枠をテーブルに出したまま買い物に出かけました。本屋さんの前を通ると積まれたプロモーションの本の「ステッチ」の文字が目に飛び込んできました。絵本です。パラリとめくりました。改めて表紙を見ると「エルメスの絵本」と書かれています。あのエルメスです。立ち読みしました。

 革職人のおいじさんの元に「犬」が首輪を作って欲しいとやって来ます。その犬と一緒におじさんは散歩に出かけます。そこで出会う動物たちにおじさんはバックや帽子、服を作ってあげる話です。表紙の色は「エルメス」のハウスカラーのオレンジ、作者は「100%ORANGE」フランス人かな?本屋の店先で調べたら、日本人のご夫婦のイラストレーターだとわかりました。「おさんぽステッチ」は日本のエルメスが作った本でした。ちょっと迷いましたが家に持ち帰りました。

 珍しく本屋で本を買いました。本を抱えて家に向かう気持ちは最高です。家に帰って刺繍道具散らかったテーブルで一番好きなシーンを開けました。 おじさんと「犬」は散歩の途中でペンギンに会い、おじさんはペンギンにスカーフを作ってあげます。空を飛ぶためのスカーフです。この絵が好きです。流氷が浮かぶ海の周りにペンギンの模様。「このスカーフが売り出されたら、買いたい!欲しいな、このスカーフ。」このページを開いたまま、チクチクと刺しています。

 「犬」はおじさんのお店を手伝うようになりました。 そしておじさんはこの「犬」に「ステッチ」と名前をつけました。

 何のことないお話ですが「ペンギンのスカーフ」が気に入って買ってしまった「エルメスの絵本」です。裏表紙は布張り、エルメスらしいこだわりです。エルメス好きな友人にこの本の話をしました。この続編でそれぞれの動物の話が出版されているとのことです。友人も探しているけど「エルメス」の直営店でしか売られていず、すでに完売だそうです。ペンギンの話の続きが読みたいと思いますが、思い続けていると手に入るものです。本よりも「ペンギン柄」のスカーフが欲しい。

 

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「冬に子供が生まれる」佐藤正午

2024年02月08日 04時59分33秒 | 

雨、5度、85%

 佐藤正午の7年ぶりの本「冬に子供が生まれる」を読みました。7年前、帰国後最初に読んだ日本の小説は確か佐藤正午の「月の満ち欠け」でした。岩波文庫に現代作家、しかも現存の作家の作品があることに驚いて手に取りました。後で知ったことですが新しい岩波書店の社長の英断だったそうです。

 宗田くんのスマホに一通のメッセージが届きます。「今年の冬、彼女はおまえの子供を産む」このシーンから始まる話です。一日足らずで一気に読み上げました。UFOを見た子供たち3人と一人の女の子の小学から40歳近くになるまでの入り組んだ人生、常識からは外れるけれどあり得るかもしれないと思わせる佐藤正午独特な世界です。読み進めて行くと誰の目から見た話なのかと?訝りました。どこかに目があるのに誰の目だか分からずにいました。宗田くんたちの中学校の教諭の目線が途中で明らかにされます。最後はその70歳近い教諭がこの物語をパンデミックの間も書き進めていたと、教諭に佐藤正午自身を被せます。

 結末がない話です。読み終えた人は、それぞれに自分がこうあって欲しいと思うように仕上げられています。ああでもない、こうでもない、ご自由に。それが余韻を作ります。人の心の中の暗い部分を垣間見るような話でした。でも、後味は悪くない。

 一気に読めたのは、福岡は毎日雨、それとこの本を開くとわかるのですが、仮名遣いが読みやすくできています。漢字が圧倒的に少ない本でした。

 雨の日に家で古い映画を見るのもよし、新刊の本を読むのもよし、雨は人の心に何かを呼び起こすように思います。

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「山の上ホテル物語」常盤新平

2024年01月20日 05時07分16秒 | 

雨、11度、80%

 東京お茶の水にある「山の上ホテル」、戦後にできた小さなホテルです。山と付きますがお茶の水界隈はなだらかな丘陵です。その小高い丘陵に立つホテル、戦後の作家たちが「かんづめ」と言って締め切り間近になるとこのホテルに篭って原稿を仕上げた話は有名です。このホテルでの思い出をまたその作家たちは至るところで紹介してます。

 上京したての私はその昔、学校はサボってお茶の水界隈をよく歩きました。お茶の水の駅からだらだらと坂を下り神保町の古書店を覗くのが楽しみでした。当時は大学が3つほどありました。この辺りの街の匂いは古くからの東京の匂いだと感じていました。高校の時、大学の下見に上京した私を一回りほども歳の違う友人が連れて行ってくれたのが「山の上ホテル」のティールームでした。中に入ったのはその時一度だけです。

 作家常盤新平が書いた「山の上ホテル物語」2002年刊行の本です。時折急に興味を引くものが出てくると、本を検索してプチンとします。状態のいい古本が届きました。このホテルに出入りした作家たちの逸話を集めた本かと思って開きました。思いの外、このホテルを作った「吉田俊雄」の人となり、ホテルで働く人たちとの関わりを描いた本です。

 戦後ホテルを作り、今も100室前後のこじんまりしたホテルはそこにあります。大型のホテルが林立する東京で「吉田俊雄」が思い描いた真心のあるホテルは4代目社長として孫が引き継いでいます。「吉田俊雄」はどんな人だったか?一橋を出て旭硝子に就職、その後ホテルを起します。妻と共にホテルを拡張しつつ、「旅館の気配りとホテルの持つ快適さ」を伝えています。ホテルマン、いえ「ホテル屋」と自称していたようです。気配りがあり豪快で着る物にも気を配り、自分の下で働く人たちを大事に育てた人です。彼の元で働いた人たちの話でこの本はできています。

 50年近く前訪れたこのホテル、古い素敵なホテルだという印象でした。その後、アメリカの建築家「ウィリアムボリス」が作った建物だと知りますます興味が湧きました。本の中では「ウィリアムボリス」のことには触れられていません。ただ、アメリカ人が建てた物だと記述があります。

 食事が美味しいこともこのホテルの特徴だそうです。贅を尽くしたというのではなく、真からうまいものを出してくれるような気がします。ミーハーの私は泊まってみようとウェッブで予約表を開けました。ところが半年先まで満室状態です。日本に帰国して上京しても息子の家に泊まります。本も古本もプチンとして手に入れます。あるかないかわからず神保町の古本屋を一軒一軒訪ね歩く必要がなくなりました。検索してプチンで状態がいい古本が手に入ります。一昨年、この街を歩きたくて「お茶の水」駅におりました。駅も駅周辺もモダンに新しくなっていました。歩いて淡路町まで行こうと思っていたのですが、あいにくの雨、傘を持っていなかったので諦めました。大学は郊外に居を移しましたが、「ニコライ堂」や裏道は昔と変わらないのではと想像します。そして学校にも行かずこの街を歩いていた二十歳になる前の私のを思い出します。

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「日本の建築」隈研吾

2023年12月26日 05時29分04秒 | 

曇、5度、75%

 義母が亡くなって以来、本を読む気が起こりませんでした。じっと字を見つめていると気持ちも沈みます。先月末、新刊案内で建築家「隈研吾」さんの「日本の建築」を知りました。早速送ってもらいました。やっと本を読む気持ちになりました。「日本の建築」のページをめくったのは二日前ことです。一気に読み終えました。

 隈研吾さんという「木」の美しさを生かした建築物が頭をよぎります。「日本の建築」は戦前からの西洋建築家の系譜を辿って、対比をさせる形で描かれています。対比の対象は日本の西東、つまり京の建築と東京の建築の違いです。西の流れの建築家、東の流れの建築家。そしてそこに日本でも活躍した西洋からの建築家がどう日本建築を見つめたかを考察しています。

 本の初めご自分が建築家を目指したきっかけとなる「ブルーノ・タウト」の木の箱の話が出てきて、来日したタウトが日本建築の自然と結びついた美を喚起した話に進みます。世の中は世界中がコンクリートと鉄を使った建造物が「強い」建築物としてもてはやされていた時です。木と紙でできた日本建築は「弱い」ものとして対比されています。建築のことなどほとんど知らない私ですが、隈研吾さんの息遣いまで感じる文章に引き込まれて読み上げました。

 建材の「丸太」と「製材」、室町時代の「北山文化」と「東山文化」などの対比は私にも理解できました。柱の重要性、それをどう見せるかがまた建築家によって違うことも興味が湧きました。そして本の最後、隈研吾さんが今のような建築スタイルに至ったかが解き明かされています。「バブルの崩壊」です。それまで強い建築物を東京で作っていた隈さんでしたが、全くお仕事がなくなったそうです。そんな時、四国の山中の村の建物の改築を頼まれたことが「木」を使う建築への目覚めだと書かれています。

 鉄やコンクリートを使った「国立競技場」、強い建造物も設計されていますが、そのどれもに「木」の美しさをこれでもかというほどに見せてくださっています。大きな建築だけでなくすぐ隣にあるお店の建築にも手を染められ、これからどんなお仕事をなさるか楽しみな方です。

 「日本の建築」を読んで書きたいことがたくさんありました。メモまでして読みました。ご興味があればどうぞ手に取ってください。久しぶりに本に没頭した2日間でした。

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「The Well Gardened Mind」庭仕事の真髄 スー・スチュワート・スミス

2023年10月11日 05時53分55秒 | 

曇、18度、68%

 イギリス人の女性精神科医スー・スチュワート・スミスの書いた「庭仕事の真髄」,原題は「The Well Gardened Mind 」を読みました。作者のバックグラウンドも知らず、庭仕事の楽しさを書いた本だと読み始めたら大間違いでした。精神科医から見た庭仕事を歴史、精神科の治療、刑務所での受刑者の心の改善と多岐にわたる考察が書かれています。スーのご主人は世界的にも有名な園芸家だということです。

 遊牧民族が定住するに至った過程は高校の歴史でも興味あるものでした。定住して土地を耕す方が狩猟を続けるより間違いなく食べ物が手に入るという理由です。それが人間が土地を耕すようになる起源です。

 精神科医ですから「夢判断」で有名なフロイトのことにも言及されています。フロイトは生涯、庭を愛し手をかけていたそうです。オーストリアやスイスの彼の家の庭の様子は興味深く読みました。

 それ以上に驚いたのは戦争中にキャンプ地に庭を作った人の話です。食物ではなく花を育てたとのこと、戦地に花をという人の心和む話でした。アメリカでは刑務所の日課に庭仕事が組み込まれているそうです。物を育てる心、土に向かう気持ち、日の下で働くことが、受刑者に及ぼす大きな効果が書かれています。またニューヨークの貧困地区では公共の土地を庭として貸し与えることで地区の人たちの生活習慣、犯罪の発生を抑えているとの効果もあることがわかったそうです。様々な病気で入院している患者にも庭仕事、土を扱うことが精神的、身体の改善に成果を出すと書かれています。こういうことを一括して「園芸療法」というのだそうです。

 私自身30年庭のない生活から帰国後、庭仕事を再開しました。種を蒔き芽が出てくる様はいつも感動します。それが成長して花を咲かせる。、実をつける、種を取る、繰り返す作業を一年を通して日の下で土に向かいます。土、土地、強いては地球に向かっています。失敗もありますが一度の成功体験はその次を約束してくれるかのように感じます。

 難しい本でした。でも私の心に響くものがたくさん散りばめられていました。和訳の題名「庭仕事の真髄」はいただけない題です。もっと手に取りやすい題にすれば良かったのにと思います。作者の広範囲にわたる研究、参考文献の多さに驚くとともにその一端を貰えたことに感謝です。

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洋書探し 宮崎駿「きみたちはどう生きるか」

2023年09月18日 04時53分31秒 | 

曇り、24度、90%

 日本に帰国して一番困ったことは「洋書」の新刊、話題の本の情報が少ないことでした。丸善に行っても新刊は並んでいません。日本のAmazonでも新刊紹介はありません。Amazonのイギリス、アメリカに好きな作家登録はしています。その作家の新刊が出ると自動的に知らせてくれます。話題の本の情報を得るために試行錯誤しました。英語圏の出版社や本屋のウェッブサイトを登録しました。

 アメリカ・グロスターにある本屋は毎日その日の新刊や情報を知らせてくれます。先日のトピックスは本が映画になったものの新作情報でした。 右下、宮崎駿「きみたちはどう生きるか」が紹介されています。この夏、日本では映画も上映されていました。アメリカではクリスマスシーズンの映画のようです。日本人作家が紹介されると嬉しいものです。「きみたちはどう生きるか」に全く興味がなかったのに、英訳の本を見たら読みたいと思います。宮崎駿が書いた原作です。

  真ん中の本は、和訳も出ているアンソニー・ドーアの「すべての見えない光」です。11月にアメリカでは上映、ということは日本では来年の新作映画です。昨年読んだ原作「すべての見えない光」は読みながら映画になるなぁと思ったものでした。楽しみに待ちましょう。

 日本語の本は新聞などで情報キャッチができます。新刊に限らず古本も欲しいと思う本はネット検索で買い求めます。私は帰国以来ほとんど本屋へ行かなくなりました。小さい頃からあれだけ好きだった本屋です。何時間でも立ち読みしていました。孫娘に本を買う時、たまに本屋へ出かけます。蔦屋を除くと、雰囲気のいい本屋が少ないのも事実です。その蔦屋ですら本より雑貨を見て回る始末です。

 それにしても便利になりました。プチンひとつで海の向こうから新刊が10日ほどで飛んで来ます。中には送料無料も、ありがたいことです。

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「洋食のこつ」茂出木心護

2023年09月12日 04時52分51秒 | 

晴れ、25度、88%

 料理など何も知らないまま、自炊を始めたのは18歳の時でした。そこで、料理の本を買いました。私が初めて買った料理の本は「洋食のこつ」です。買った本屋さんは銀座の「近藤書店」でした。海外も含めて度重なる引越しで処分した本の一つです。昨日の「コールスロー」もこの本からのレシピで作り始めました。表紙の綺麗なオムレツの写真、こんなオムレツを焼きたいと思い買った当時のことを覚えています。「古本サイト」を探しましたが見つかりませんでした。でもありました!Amazonです。値段が安いのでひどい状態だろうと想像しましたが、今一度、手に取りたくてプチンとしました。昨日、届きました。

 驚くほど綺麗な状態の本です。天、地、小口に日焼けがあるだけです。はっきりと記憶に残っていたオムレツの写真、今だにこんなにきれいには焼けません。懐かしさから昨日はこの本と過ごしました。昭和45年初版。東京の洋食屋「たいめいけん」の初代「茂出木心護」さんが書いた本です。あいにく「たいめいけん」へは行ったことがありません。昭和の洋食屋さんです。この店の一番人気は「ハンバーグ」だった様です。そのハンバーグの付け合わせはもちろん「コールスロー」。ケンタッキーフライドチキンが日本に来る前のことですから、「コールスロー」も珍しい食べ物だったでしょう。

 「しゅうまい」「いなり寿司」の作り方まで載っています。ただし、大さじ幾つとかカップ何杯という記載は全くありません。初めての料理の本にしてはハードルの高い本でした。でもこの本が私の料理の一歩目です。

 その後も料理教室に通える様な経済状態ではなかったので、料理も菓子作りもパン作りも全て本から学びました。今は便利ですね、ウェッブで全部わかります。それでもやはり紙の本が好きです。料理が好きな前に紙の本が好きです。私の料理の本の数、数えたことはありません。香港からの帰国時にはたくさんの料理の本を捨てました。それでも100冊以上ではと思います。英語で書かれた本も多数、レシピ本だけではありません。食、食材にまつわる話の本も含みます。料理教室には行けませんでした。その代わりたくさんの料理の先生が私にはいます。その最初の本がこの本です。また、私の本棚に戻って来ました。

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「表装ものがたり」濱村繭衣子

2023年08月22日 05時26分26秒 | 

晴、27度、91%

 「表装」は掛け軸の絵や字の部分を囲む装いです。素敵な絵も心に響く書体も掛け軸に仕立てるときの布回し「表装」一つで印象が違ってきます。その「表装」の妙を教えてくれる本「表装ものがたり」を新聞の書評で知りました。プチンして翌日届けられました。

 掛け軸を求める時、もちろん「本紙」と呼ばれる書跡、絵画にまず目が行きます。そしてその周りの軸に仕立てるときに使われている様々な「裂」を確かめ、全体の雰囲気を自分の家の床の間に掛けた様子を想像します。「裂」の配置には一応決まりがありますが、私は色合いを一番に見ます。春に掛けようと思う掛け軸なら春らしい淡いものを選びます。「本紙」の色との調和も大事です。掛け軸選びの面白さです。

 家に床の間がない方が多いと思います。掛け軸を目にするのは今では美術館や博物館が多いのでしょうか。ライト照明、立ったままで見る掛け軸は日本家屋の床の間に置かれたときとは違って見えるかもしれません。

 「掛け軸」が好きなので「表装」を随分勉強しました。使われる布の種類、名前の分厚い本も持っています。「表装ものがたり」はそんな知識ばかりか、意外な「表装」を教えてくれました。きらびやかな「表装」は日本生まれです。中国から伝来した「表装」ですが、使われる「裂」は日本では豪奢なものが使われています。私も中国の掛け軸を持っているのでその違いはよくわかります。基本の「裂」の配置も若干違います。この本では紙を使った「表装」や決まり事を全部外したような「表装」を見せてもらいました。

 隠れキリシタンが自分たちの手で作った「表装」、傷みの修復も素人の信者たちの手になるものには心打たれます。小さな掛け軸だそうですが、その前で一心に祈る人たちの姿を思い浮かべます。「数寄者」とやばれる裕福な方達が戦前、競うようにして作った「表装」にも目を奪われました。「表装」自体が「本紙」より高額だったものもあるとか。民芸の創始者「柳宗悦」が自ら作った「表装」にも驚きました。布選びからしてまさに「民芸」です。

 ありきたりな「表装」の知識だけでなく、知らない「表装」の世界を見せてもらいました。数時間で読み終わりました。満ち足りた時間でした。

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「オーウェルの薔薇」 レベッカ・ソルニット

2023年08月15日 04時55分35秒 | 

曇、27度、89%

 社会派の作家ジョージ・オーウェルの本を立て続けに読んだのは20代の終わり、1980年代のことでした。毎月一巻発売される晶文社の本を楽しみに待ちました。 「オーウェルの薔薇」と新聞に出ていた題名に目が止まったのはふた月前です。和訳は岩波書店から出ていますが、英語版を取り寄せました。オーウェルの家の庭の薔薇からこの作家の伝記的な本だと思い読み始めました。

 オーウェルは晩年、庭に薔薇や果物の木を植えその手入れをするのが楽しみだったそうです。そこまでは私が思っていた筋書きでしたが、この本はそれだけでは終わりませんでした。ソルニットはオーウェルの薔薇からあらゆる方向に話を巡らせます。化石燃料としての石炭の話、社会主義における政治の裏話、圧巻は南米コロンビヤの薔薇農園の話です。

 地元コロンビヤ人を雇っている薔薇農園の就業状況や汚染体質の企業であるとリポートします。アメリカ向けの薔薇を栽培する従業員は「母の日」「クリスマス」前はトイレに行く回数さえ監視されるほどの過酷な条件の元働きます。その農園の周りには虫一ついない、ケミカル漬けです。そういう話の展開は私の予想外、でもソルニットの視線は社会派オーウェルのそれと同じです。ソビエトのスターリンが別荘にレモンの木を植えるよう命じた話には、ソビエトの持つ社会的な背景を今のプーチンに重ね合わせます。

 ソルニットはオーウェルが好きです。彼が植えた薔薇を実際に見て描き始めたこの本は話が多岐に飛びますが、それが見事に一つの本にまとまっています。アメリカ人ソルニット、私より4歳下の彼女の英語は難しかった。イギリス人が書く英語のようです。しかも話が政治的なものを下書きにあらゆるの方向に向かいます。

 7月の終わりから主人の帰宅、孫娘の到来、本を読む時間が持てないだろうとやっと孫が来る前日に読み終えました。久しぶりに胸に落ちる本に出会いました。いい本です。ソルニット、「戦争」の反意語はと聞かれた際に「庭」と答えたそうです。私の心にストーンと響きました。

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