曇り、17度、75%
PERLE NOIRE「 ペルルノアー」フランス語で黒真珠の意味です。あこや真珠を見慣れている私には、黒真珠の大きな粒は同じ真珠とは思えません。ましてや小さな私があんな大きなものを身につけようとも思わないのですが、ショーケースに並ぶ黒真珠の光を受けて輝く様は惚れ惚れです。
フランスのエルバンから出ているインクはそれぞれ名前を持っています。「ココアブラウン」「ティーブラウン」「ビルマの琥珀」「ナイトブルー」これを聞けば、まさかインクの名前だとは誰も思わないようなネーミングです。私が好きな色は「ビオレパンセ」というすみれ色。この「ビオレパンセ」フランスで戦前までは小学生の筆記具の色に国が指定していたと聞きます。紫のインクが子供が初めて出会う筆記具の色だとは、日本では考えられません。一般に見る黒やブルーとは違います。この「ビオレパンセ」はどんな紙の色にもしっくりと馴染み目にきつく映りません。日本は墨の伝統がありますからやはり黒です。
私も目上の方や改まった手紙には黒のインクを使います。スポイドタイプの万年筆ですのでボトルのインクを買います。このボトルのインク、実は会社によって色がずいぶん違います。ブルーに至っては会社によってその明るさが大きく違います。私はずっとペリカンの黒でした。もう直ぐ無くなりそうなので、珍しく浮気をしてエルバンの黒を買ってみました。
黒はブルーほど会社によって差がないと思っていた私ですが、この「黒真珠」を紙に落とした途端ハッと目が開きました。深くまろやかな黒い色です。同じ万年筆のペン先から出てくる色とは思えないほど滑らかな色です。手紙を書き終えて、深く息をつきました。
最近日本のインクも素敵な名前とボトルに入ったものが出ています。日本らしいこだわりを持って作られたインクに違いありません。たかがインクですが、その色の持つ深さやツヤは書く字にも優しさをくれるように思います。
「黒真珠」のインクボトルを前にそんなことを考えていると、あれ?もう一つ発見。 エルバンはガラスのつけペンでも有名です。万年筆と違ってつけペンはキャップがありません。きっとペンを休めるための工夫です。ボトルの前面に溝がついていました。長いペンの歴史を感じます。日本にはないペンとインクの歴史です。