国営放送の教育テレビに「100分de名著」という番組がある。6月は敬愛する作家、安部公房の「砂の女」が取り上げられた。全4回の放送で3回までを毎週月曜欠かさず観てきた。放送が4回というのは作品展開の「起承転結」に通ずるものかも知れない。「砂の女」の解説を聴いているうちにこの番組の立ち位置がわからなくなってきた。番組では作品未読の視聴者にもわかり易くあらすじと執拗なまでの解説が行われる。これは俗にいう「ネタバレ」なのだ。既に作品を読んだ者にはおさらい的には良いけれど何か薄っぺらで物足りない。解説には当然ながら行間を読む楽しみも自分なりの気づきや解釈も抜け落ちている。司会の伊集院がたたみ込むように解説に共感し更に蛇足の解説を加える。この展開を観ているとなんだか作品への凌辱に思えてくる。この番組を観て作品をわかったような気になったとしてもそれは本当の上っ面をなめたに過ぎない。作品のもつ空気感や行間の余韻、読了後の鳥肌にも似た感動はそこには無い。これでは浜村淳の映画解説ではないか。
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