狐の日記帳

倉敷美観地区内の陶芸店の店員が店内の生け花の写真をUpしたりしなかったりするブログ

『愚者のエンドロール』/米澤穂信

2020年02月21日 20時37分30秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、米澤穂信の小説『愚者のエンドロール』を読み返していました。
 「古典部シリーズ」の2冊目です。

 高校一年生の夏休み。
 古典部のメンバーは、2年F組の生徒が制作していて途中で頓挫した文化祭で上映する為のミステリー映画の結末探しを依頼される。
 映画の前半部を観て、ミステリー映画としての結末を推理する古典部のメンバー達は見事な結末を見つける事が出来るのか? 



 ミステリー読みには「○○に訊けよ! 訊いたら即解決ぢゃないか!」というツッコミがありますが、この作品もそう。
 ただ上手くブロックがかかっていて謎の核心部分を知る人物に謎の核心を訊けないようになっています。
 でもって何故謎の核心を知る人物にブロックがかかっているかが、鍵となっているので満足です。

 ただ嘘をついて人を動かす人が「人使いの達人」かなぁ?
 達人ならもっとエレガントに人を使うのではないのかなぁ?
 肝心要の人には単刀直入に切り込んだほうが話が早いと思うのですよ。
 実際、物凄い回り道をしています。
 あ、でも、主人公達に依頼主が真っ正直に依頼したら、お話は冒頭で終わっちゃうか。

 高校2年生でまだ「人使いの達人」の素質がある人に過ぎない、と考えればあの行動も(物語として)OKかな。 




 脚本の結末を推理するお話でメタ的。
 高校生達が主人公の青春物語でもあります。
 面白かったですよ。
 楽しめました。



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『見晴らしのいい密室』/小林泰三

2020年02月20日 21時45分24秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、小林泰三の短編小説集『見晴らしのいい密室』を読み返していました。
 「見晴らしのいい密室」・「目を擦る女」・「探偵助手」・「忘却の侵略」・「未公開実験」・「囚人の両刀論法」・「予め決定されている明日」の7つの短編が収録されています。

 「見晴らしのいい密室」は本格ミステリと見せかけて……。このオチは読む人によって怒るか喜ぶか分かれるだろうなぁ。禁断の〇〇オチである(〇〇の部分は伏字とさせていただきました)。大胆。
 「目を擦る女」はホラーテイストなんだけど考えようによっては読む人の現実感を揺さぶる怖さのホラーです。こんなお話は好きです。
 「探偵助手」は少し考え込んでしまいました。最初は「だから何?」と思っていたのです。すぐに気が付かなかった。探偵助手が〇〇とは。orz。不覚でした。気が付くと可愛らしいお話。
 「忘却の侵略」は論理詰めで考えて行動する主人公が面白い。
 「未公開実験」は下らなくて面白いSF。オチが決まってる。このお話も「では我々の世界は?」と考えたら少し怖いお話。
 「囚人の両刀論法」は「利他的か利己的か」・「協調か裏切りか」をテーマにしたスケールの大きなお話。
 「予め決定されている明日」は電子計算機が存在しない世界にいる者が電子計算機が存在する世界にコンタクトを取ろうとするお話。

 仮想か? 現実か? 
 夢か? 現か? 
 そんなお話でまとめられていた短編集でありました。
 面白かったですよ。
 楽しめました。


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『ぼくの、マシン ゼロ年代日本SFベスト集成<S>』/大森 望(編集)

2020年02月15日 22時01分50秒 | 小説・本に関する日記

 昨日の夜は、2000年代の日本短編SF集『ぼくの、マシン ゼロ年代日本SFベスト集成<S>』を読んでいました。
 西暦2000年~2009年の10年間に国内で発表されたSF短篇を集めた短編集です。

 ラインナップは
 「大風呂敷と蜘蛛の糸」野尻抱介
 「幸せになる箱庭」小川一水
 「鉄仮面をめぐる論議」上遠野浩平
 「嘔吐した宇宙飛行士」田中啓文
 「五人姉妹」菅浩江
 「魚舟・獣舟」上田早夕里
 「A」桜庭一樹
 「ラギッド・ガール」飛浩隆
 「Yedo」円城塔
 「A.T.D Automatic Death ■ EPISODE:0 NO DISTANCE,BUT INTEFACE」伊藤計劃+新間大悟
 「ぼくの、マシン」神林長平
 です。


 質の高いSFが揃っていましたよ。
 どの作品も面白かったのですが、あえて私の一番のお気に入りを述べるとすると、野尻抱介の「大風呂敷と蜘蛛の糸」です。

 面白かったですよ。
 楽しめました。



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『愛と同じくらい孤独』/フランソワーズ サガン

2020年02月12日 16時47分53秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、フランソワーズ サガンのインタビューをまとめた『愛と同じくらい孤独』を読み返していました。
 サガンの数々のインタビューを対談形式にまとめた本であります。

 考えや好みがはっきりしていて考え方が潔いです。
 自らを客観視出来て、相手の意図や意思を明確に悟る賢さがあります。
 曖昧な言葉を使わずに明確な言葉を使う。
 言葉を使う作家が若くしてデビューして、マスメディアによって散々利用され消費されることを経験しているので、少しでも悪意のある質問にははぐらかしたりユーモアで答えたり応えなかったり。

 面白かったですよ。
 楽しめました。


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『将軍の猫』/和久田正明

2020年02月07日 21時21分19秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、和久田正明の小説『将軍の猫』を読み返していました。

 直参の武家の娘である姫子は、江戸柳生新陰流を極め尾張柳生の高弟を破るほどの腕前。
 その腕と胆力を見込まれて隠密御用の頭となる。
 御庭番の差配である明楽十内と大酒飲みの武平太と無類の女好きの釜之助と放浪癖のある春馬を従える。

 老中・松平定信が襲撃されるという事件が起こる。
 姫子は、「逃げおおせた襲撃犯を捜し定信暗殺を命じた者を見つけ出せ」という密命を受ける。
 姫子は探索をはじめる。のだけれども……。


 「ん?」と思えるようなところはあるのだけれどもスルーしました。
 軽い感じがするような気がしましたが、面白かったですよ。
 続きが出ているようなので続きを読んでみることにいたします。


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『グリーン・レクイエム』/新井素子

2020年02月02日 22時32分32秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、新井素子の小説『グリーン・レクイエム』を読み返していました。

 嶋村信彦は、大学の研究室で植物学者の松崎の助手をしている。
 彼は、長い髪を持った22歳の女性・三沢明日香に恋心を抱くようになる。
 しかし、彼女には秘密があった……。
 彼女は隠していたが、彼女の本当の髪の色は緑色だった。

 それを知った松崎は、彼女が長年捜し求めていた「緑色の髪の人間」である事に気付く。
 そして、明日香を研究材料として施設に監禁してしまう。
 信彦は明日香を連れて逃げ出すのだが……。
 明日香の体には地球の運命すら左右する重大な秘密が隠されていて……。 

 表題作の『グリーン・レクイエム』の他に、『週に一度のお食事を』と『宇宙魚顛末記』が収録されている中編集であります。



 シリアスでリリカル表題作と軽くてポップで軽妙な2編となっております。
 簡単そうで実は難しい新井素子独特の文体。
 面白いですよ。
 お勧めであります。


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『死ねばいいのに』/京極夏彦

2020年01月30日 21時13分58秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、京極夏彦の小説『死ねばいいのに』を読み返していました。

 殺された知り合いの女性がどんな女性か知りたくて、女性の関係者を訪ね歩く青年のお話。
 青年に対して、様々な立場の人が、各々の正論(とされるもの)を述べます。
 でも青年はそれらを最後には尽く論破していきます。
 しかし主人公の青年の言っていることも変。でも変なのに反論できない……。
 世の固定概念や常識を粉々に打ち砕きながら、残る青年の言葉はどこか変で身も蓋もない……、でも反論できない……、その通りといえばその通りなのです……。
 物語は六つのパートからなっているのですが、どのパートもアクロバットのように見事に説がすりかわっていきます。
 地の文はほぼ常に青年と対峙している人物の主観なので、読み手は青年と対峙している気分になってしまう。そして打ち負かされてしまう。

 最後の章は特に面白いです。
 青年と弁護士の対話で、「真実とは何か?」という話から、「裁判における真実とは何か?」という話になり、そこから話がぐるっと一度入れ替わって、そして最後に真実(らしきもの)が提示されます。
 青年の述べていることは、最初は「ん?」と思ってしまうのですが、最後は確かにその通りと思わせてしまう。その主張は終始一貫しているのです。う~む。

 題名とともに内容もインパクト特大でありました。
 面白いですよ!
 お勧めです!



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『鹿男あをによし』/万城目 学

2020年01月26日 22時28分14秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、万城目 学の小説『鹿男あをによし』を読み返しておりました。
 TVドラマ化されていましたね。
 観てました。
 あの頃はまだTVを観ていたなぁ……。
 今や私のお部屋にあるTVはほぼゲームやDVDのモニターと化しております。

 大学の研究室で人間関係に悩んでいた主人公は、教授の勧めで奈良の女子高に赴任することになる。
 しかし赴任先の女子高では生徒達からいわれも無い嫌がらせを受ける。
 その事で悩んでいると、ある意外なものから話しかけられ、日本の滅亡を防ぐために奮闘することになる……。

 万城目節炸裂の法螺話です。


 現代ファンタジー+スポコン+青春物語+「坊ちゃん」風味ってとこでしょうか。
 面白かったですよ。
 私は万城目 学の小説だったら『鹿男あをによし』が今のところ一番好きです。



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『太陽の塔』/森見登美彦

2020年01月24日 22時52分45秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、森見登美彦の小説『太陽の塔』を読み返していました。

 京都大学農学部5回生の主人公は自主休学中。
 かつての恋人である水尾さんを、「何故、彼女は自分を袖にしたのか?」と「何故、自分は彼女に魅かれたのか?」をテーマに研究し観察して240ページ以上のレポートを書きつづけていた。
 水尾さんからは研究停止の宣告を受けたが、彼は水尾さんの研究をやめる気はない。
 ある日、主人公が水尾さんの観察・研究をしているとそれを妨害する男が現れて……。
 第15回日本ファンタジーノベル大賞受賞作で、悶々として煮詰まリ過ぎた学生生活を送っている男子学生の物語です。


 と、あらすじを書いても面白さは全く伝わらないと思います。

 悶々として煮詰まりすぎて訳が分かんなくなって妄想に次ぐ妄想の末に繰り出してくる自己弁護の面白さ。
 下らない論理だけどその下らない論理に筋を通す為に暴走に次ぐ暴走を繰り返す生真面目さ。
 意外と自分達に厳しい主人公達のする必要が全くない苦行の数々。
 つまらない灰色の青春を見事に面白可笑しく描いている莫迦小説です。

 文章が大仰で古めかしくて語彙が豊富で凝っています。
 一人称なので同時に主人公の性格も表現していて楽しくて面白くて切ないです。

 マジックリアリズム的でもありますね。
 その部分を評価されてファンタジー大賞を取ったのでしょうか。

 面白いですよ。
 お勧めです。


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『硝子のハンマー』/貴志祐介

2020年01月21日 22時14分03秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、貴志祐介の小説『硝子のハンマー』を読み返していました。

 厳重なセキュリティーで防備されたオフィスビルの社長室で社長は撲殺された。
 しかし殺害方法が分からないし、凶器も見つからない。
 隣の部屋で仮眠をとっていた専務が逮捕される。
 しかし専務は容疑を否認している。
 弁護を担当することになった青砥純子は、専務以外の誰かがセキュリティー網を掻い潜って社長室に侵入する方法があるか調べる為、防犯コンサルタントの男の許を訪れる……。
 ミステリ小説であります。

 二部形式で、一部では防犯コンサルタントの男と弁護士の女の仮説と検証が繰り返されます。
 一部の終わりまでに推理する為の材料は全て提出されます。
 防犯コンサルタントの男と弁護士の女の掛け合いは面白いです。
 二部では、犯人の倒叙形式。
 二部の最初で犯人が提示。
 物語は犯人の動機とトリックに焦点が移ります。
 トリックは斬新。
 専門知識がないと思い付かないのでは……。

 面白かったですよ。
 楽しめました。


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『本所深川ふしぎ草紙』/宮部みゆき

2020年01月19日 21時16分33秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、宮部みゆきの小説『本所深川ふしぎ草紙』を読み返していました。
 江戸の本所深川を舞台にした時代小説で人情話でミステリー。
 本所深川の七不思議を題材にしている七つの短編集です。
 人の闇を描きつつしんみりとさせる人情話となっております。
 面白いですよ。
 お勧めであります。

 
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『妃は船を沈める』/有栖川 有栖

2020年01月15日 20時17分04秒 | 小説・本に関する日記

 昨日の夜は、有栖川有栖の小説『妃は船を沈める』を読み返していました。
 「猿の左手」と「残酷な揺り籠」の2本の中篇ミステリが収録されています。
 主人公で臨床犯罪学者の火村英生のシリーズ物のようですね。

 「猿の左手」
 海に転落した車。
 車中で溺死した運転していた(らしい)男の体から睡眠薬が検出された。
 彼はどのようにして死んだのか? 

 「残酷な揺り籠」
 半密室の部屋の中で銃で射殺された男の死体が発見される。
 部屋の鍵は3本だけで3本とも使用できない状況にあった。
 彼は誰にどうやって殺されたのか? 




 「猿の左手」はW・W・ジェイコブズの短篇小説「猿の手」を下敷きにしていて、作中の「猿の手」の解釈がとても面白いです。
 「残酷な揺り籠」は「猿の左手」の続きとなるので犯人は分かってしまうのですが、面白い展開でありました。

 面白いですよ。
 楽しめました。


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『銀河のワールドカップ』/川端裕人

2020年01月14日 19時50分05秒 | 小説・本に関する日記

 昨日の夜は川端裕人の小説『銀河のワールドカップ』を読み返しておりました。

 元Jリーガーの花島は失業中に出会った少年達のサッカーのプレイに魅了される。
 彼等小学生に懇願され、小学生チーム桃山プレデターの監督を引き受ける。
 彼等小学生達が目指すのは日本一? 世界一? いや宇宙一!? スペインで超銀河系軍団レアルと夢の対決??

 難しいお年頃の少年少女達。
 真剣に世界一を目指して出した答えが渦巻のように全員がぐるぐるとポジションチェンジをしながら全員で守備をして全員で攻撃するトータルフットボール。
 サッカーを楽しむ人なら誰もが一度は夢見るようなトータルフットです。
 特殊なルールのもとでの試合なので現実のプロのサッカー選手の試合では観ることは難しい(出来ない?)でしょうが、でも、もし現実のサッカーの試合でこの小説の中に出てきたサッカーを観ることが出来たら、きっと楽しいだろうなぁ……。

 サッカーの試合中の描写が秀逸です。
 ワクワクドキドキハラハラしますよ。

 サッカー好きなら、いやサッカー好きでなくてもお勧めの本です。
 面白いですよ。


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『山猫の夏』/船戸与一

2020年01月11日 15時11分12秒 | 小説・本に関する日記

 昨日の夜は船戸与一の小説『山猫の夏』を読み返しておりました。

 舞台はブラジルの東北部の町エルクウ。
 法律よりも町の暗黙の了解が優先される町。
 町の二つの有力者の家は長年に渡って対立していて殺し合いが絶えない。
 町は二つの家のどちらに付くかで真っ二つに分かれている。危うい均衡状態。
 そんな町の二つの有力者の家の一人息子と長女が駆け落ちをする。
 そこへ『山猫(オセロット)』と名乗る男が町に現れた。
 辛うじて保たれていた均衡が『山猫』によって崩れていく……。



 冒険活劇です。
 「ロミオとジュリエット」に圧倒的な存在感を持つ悪漢を放り込んだお話、と思わせておいて黒澤明監督の「用心棒」であります。

 登場人物は男も女もずるくて汚くて醜くて残酷でどうしようもない連中ばかり。
 殺人が日常的に行われている町で住民は感覚が狂ってる。
 蒸せ返る汗と血の匂いが漂うピカレスクロマン。 
 でも読後感は爽やかなのです。



 面白いですよ。
 傑作であります。
 お勧めですよ。


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『神様は勝たせない』/白河三兎

2020年01月09日 21時02分44秒 | 小説・本に関する日記


 昨日の夜は、白河三兎の小説『神様は勝たせない』を読んでいました。

 中学サッカー首都圏大会の県予選の準決勝の数日前。
 中堅チームで全国出場を目指して良い状態に仕上がっていたチームに、選手達の気持ちがバラバラになるような出来事が起こる。
 試合当日。
 前半は皆の気持ちがバラバラで開始早々に相手に2点決められて0-2。
 後半に盛り返して2-2に追いつき延長戦に突入したが決着は付かず試合はPK戦にもつれ込んだ。
 各チーム2人ずつ蹴り終えて相手は2人とも成功して味方は2人とも失敗。
 0-2。その状況にキャプテンでゴールキーパーの潮崎隆弘は試合を諦めかけていた……。



 

 中学生の頃を思い出してしまいました。

 私はサッカーではなくハンドボール部に所属していたのですが、GKをしておりました。
 なので、ゴールキーパーの心理描写や思考がたくさん描かれていてそれだけで楽しかったです。
 GKが試合中に何を考えているかなんてほとんどの作品では描かれないですからね。
 GKって試合中にめっちゃ考えているんすよ。言語化した思考では間に合わないので試合中は言語化出来ない超高速の思考になるけど論理的に超高速で考えて観察して考えてを繰り返しているんす。反射神経だけでGKはプレイしているみたいに描かれる作品は不満です。GKにもっと焦点を当てて欲しいと思っている身としてはGKの試合中の思考が描かれている作品は嬉しいです。

 中学の部活だと色々あります。
 実力があるのに試合でその実力が発揮できなくなるような事柄が起こったり。
 実力があるのに性格や考え方でその能力がスポイルされたり。
 上級生に紛れて下級生が試合に出ることになって悩んだり。
 チームメイトから敗戦の理由を一身に背負わされて人間不信に陥ったり。

 楽しいだけでもないし苦しいだけでもないです。

 物語はPK戦が始まって0-2のビハインドから始まります。
 負けを確信した状態から自らを奮い立たせる選手達の様子を描きながら、何がチームを崩壊寸前にさせたのか? というお話に移っていきます。
 チームを崩壊寸前にさせた事柄については早い段階で予測がつきます。
 でも各選手が悩みながら結論を出してPKを守る或いはPKのキッカーを務める。その思考の過程は面白いです。
 悩むよなぁ。負ければ中学の部活の最後の試合になるんだもの。

 面白かったですよ。
 お勧めです。



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