狐の日記帳

倉敷美観地区内の陶芸店の店員が店内の生け花の写真をUpしたりしなかったりするブログ

バレンタインが近づいてデパートの地下も揺れる。

2020年02月07日 23時32分09秒 | VSの日記
 本日2月7日は、足利義満が正式に室町幕府第3代将軍に就任した日で、江戸幕府が吉原遊郭を日本橋から浅草千束へ移転させた日で、アメリカ合衆国憲法修正第11条の批准が成立した日で、日露和親条約が締結された日で、太政官布告「復讐ヲ嚴禁ス(敵討禁止令)」が公布された日で、中島久万吉商工相が13年前に書いた文章の中で逆臣・足利尊氏を礼讃しているとして貴族院で追求された(9日に辞任)日で、アメリカが北ベトナム爆撃を開始した日で、スイスで国民投票により女性参政権が承認された日で、グレナダがイギリスから独立した日で、ソ連共産党中央委員会が共産党一党独裁制の放棄を採択した日で、北方領土の日で、フェブラリー・ダンのお誕生日で、エアリス・ゲインズブールのお誕生日で、佐伯夏子のお誕生日で、ジョナサン・ジョースターがお亡くなりになった日です。

 本日の倉敷は晴れのち曇りでありましたよ。
 最高気温は八度。最低気温マイナス一度でありました。
 明日は予報では倉敷は晴れとなっております。





 或る夜の事。

 狐は先輩と一緒に或るパブリツク・ハウスのカウンター席に腰をかけて、絶えずホツトミルクを舐めてゐた。
 狐は余り口をきかなかつた。
 が、先輩の言葉には熱心に耳を傾けてゐた。

 「チヨコレイトには媚薬効果があるらしいの!」
 先輩は頬杖をしたまま極めて無造作に言つた。
 先輩は普段は男性口調なのに今日は女性口調である。
 先輩はスレンダーなのだけれどもお色気むんむんのお方なので男性口調くらいでちょうどよい。
 女性口調になるとどきどきする。
 「それを踏まえて考えると、好きなお方にチヨコレイトを贈るというバレンタインデーの風習つて淫靡な薫りがするわよね。いいわ。すごくいい」
 先輩は割賦を掲げてうつとりと御酒を見つめた。今日は何で女性口調なのだろ?
 「それとバレンタインデーに自分への御褒美として自分用にチヨコレイトを買つて食べるお方がいるでしやう? 其れつて媚薬効果のあるチヨコレイトを自分で食べて発情してオナ
 わあああああ。何を言つているのですか! 何を口走つているのですか! 此処は公共の場ですよ! 先輩。酔つてますね? 酔つぱらつてますね?
 「失礼ね。酔つてなんかいないわ」 先輩はにへらと笑つた。
 駄目だ。酔つてる。完全に酔つぱらつている。
 先輩。もう、帰りますよ
 「やだ」
 先輩はカウンターに突つ伏し顔を私の方に傾けた。
 「貴方はチヨコレイトを私にくれないの?」
 は?
 「あ・な・た・は・ち・よ・こ・れ・い・と・を・わ・た・く・し・に・く・れ・な・い・の?」
 いやいやいやいやいやいやいやいや。な、な、な、何を言つているんすか?
 「あ・な・た・は・ち・よ・こ・れ・い・と・を・わ・た・く・し・に・く・れ・な・い・の?」
 いやいやいやいやいやいやいやいや。せ、せ、せ、先輩には彼氏さんがゐるではないですか!
 「あらん? 彼もきつと貴方のことが気に入るわ。それに私には彼女もゐるの。私は異性両性どちらもOKなのよ。彼と彼女は其のことを知つているし彼も彼女も異性両性複数でもOKなの。そして私と彼と彼女はSでもありMでもあるわ。だからどんなプレイであっても対応できるの。安心して貴方も私の胸の中に飛び込んできて💛  飛び込んで来たら甘い甘いチヨコレイトのような世界を貴方に味あわせてあげるわ💛」
 いやいやいやいやいやいやいやいや。安心できない安心できない安心できない。私をどんな世界に連れて行こうとしているのですか。すみません無理です無理です無理です。そんな世界には行きたくありません。それにさらつと大胆にそんなカミングアウトをしないでください。吃驚します。先輩。酔つてますよ。私を揶揄つているのでせう? もう帰りましせう。
 先輩はにへらと笑いながら顔を近づけてくる。睫毛が長い。瞳が潤んでいる。どきどき。
 「今日は此処に来る前にチヨコレイトを食べたのよ。それに御酒にも媚薬効果が有るらしいのよね。で、むらむらするの💛」
 それはプラシーボ効果ですよ。きつと。
 「いちやいちやしたいの💛」
 彼氏さんの所に或いは彼女さんの所に行けばよいではないですか。
 「今宵は貴方を堕としたい。と思つたの💛」
 止めてください。私は、誰かと付き合つているお方には恋愛回路が自動的に遮断される仕様になつています。迷惑です。止めないなら私は帰りますよ。

 先輩はお喋りを止めて考え込んだ。
 狐の言葉は先輩の心を知らない世界へ神々に近い世界へと解放したのかもしれない。
 狐はカルーアを注文し、割賦の中でミルクと混ぜ合わせてカルーア・ミルクを作りちびちびと舐めた。

 先輩はぽつりと云つた。
 「いけず。私のことが好きなくせに」


 狐と先輩はノリだけで意味のない会話するという悪癖がある。
 その日のノリだけの会話は充分に堪能して終了した。と思われた。
 先輩はお喋りを止めて割賦を掲げてうつとりと御酒を見つめてゐた。
 先輩はにへらと笑つて言つた。「私は貴方とだつたらよいのよ? 二人で一緒にめくるめく世界に旅立たない?」
 そして先輩は狐の瞳を覗き込んだ。どきどき。
 まだノリだけの会話は続いている? それとも?





 そのパブリツク・ハウスは極小さかつた。
 しかしパンの神の額の下には赫い鉢に植ゑたゴムの樹が一本、肉の厚い葉をだらりと垂らしてゐた。



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