狐の日記帳

倉敷美観地区内の陶芸店の店員が店内の生け花の写真をUpしたりしなかったりするブログ

お前の体は宇宙の全てと繋がっていながらお前にしかなり得ない。お前の魂は宇宙の全てを含んでいながらお前でしか有り得ない。それはこの私も。そして誰しも。

2020年06月13日 23時37分36秒 | VSの日記
 本日6月13日は、ロードアイランドがイギリス北米植民地で初めて奴隷の輸入を禁止した日で、清とロシアが天津条約に調印した日で、シュタルンベルク湖で前日に廃位させられたバイエルン王ルートヴィヒ2世の水死体が発見された日で、陸海軍省官制改正により軍部大臣現役武官制を廃して大臣・次官の任用資格が予備役まで拡大された日で、アメリカで戦略事務局と戦時情報局が発足した日で、太宰治が愛人山崎富栄と玉川上水へ入水した日です。

 本日の倉敷は雨でありましたよ。
 最高気温は二十五度。最低気温は二十三度でありました。
 明日も予報では倉敷は雨となっております。お出かけの際はお気をつけくださいませ。





 或る夜の事。

 何心なく場内を眺めている内に狐は不思議な事に注意を引かれた。
 其の夜は、大正、昭和、平成と経て白寿になつた或る藝術家の御方の為に開かれた祝賀の会なのであつた。
 狐は其の宴席の末席で火酒入りのミルクを靜に舐めていた。
 此の燈火の煌いた華やかな宴席には、もう何年も前に名を聞き知っているばかりでなく多くの業績を目の当たりにして狐なりに其々に受け入れているような大家達も席を連ねている。
 狐は大家達の強烈な威圧感にぷるぷる震えながら只管に火酒入りのミルクを舐めていた。
 迂闊に発言をすると喰われてしまいそうな恐ろしさがある。怖い。

 主催者の何か特別な意図が含まれていたのであらうか?
 祝宴の主人公である其の御方の坐つている中央の卓子は純然の家族席として纏められている。
 夫人。成人して若い妻となつている令嬢。其の良人。其の他幼い洋服姿の男の子達。或は先夫人かと思わるるやうな婦人。
 正座の画家をめぐつて花で飾られた卓子の周囲をきつしりと取り囲んでいるのである。
 一応は和気藹々たる其の光景は主人公が他ならぬ白寿の御方であるといふことから、寧ろ異様に孤独に鬼気さえも孕んで忘れがたい感銘を与えられた。
 怖い。ぷるぷる。

 藝術の道を往く時、藝術家にとつて道連れは今こうやつて卓子に何か雑然と無意味な賑やかさで着いている大小様々の家族達であらうか?
 其れとも友達や同時代人、或は先輩後輩達であらうか?
 仮に狐が当夜の主人公であり、藝術家として何十年かの果にかういう席の割当ての白寿の祝を催されたとしたら狐は戦慄を禁じ得なかつたであらうと思う。

 藝術家は孤独を恐れない勇気を常に持たなければならない。
 けれども恐るべき性質の孤独があるとをいふことをも知らなければならない。




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