クロの里山生活

愛犬クロの目を通して描く千葉の里山暮らしの日々

コロラドの男

2014-07-25 21:12:19 | 日記

「熱中症には十分気をつけて下さい」との呼びかけが有線放送で流れ、この里山も、うだるような暑さであります。

朝食後、草原と化した家の前の畑をしばらく眺めていたご主人様は、やがて気を取り直して裏の竹林に向かいました。

竹林には時折そよ風が渡っており、前庭に面する居間よりはかなり過ごし易いようです。

ご主人様は所定の位置にビーチチェアーなどをセットし、ブログを書き始めました。

拙者も竹薮に寝転がりリフレッシュしております。

竹林から里山の小高い山が見えます。

山を眺めていたご主人様は、コロラドの山を思い出していました。

 

 

アメリカ大陸中西部にあるコロラド州を、ロッキー山脈が縦断している。

州都デンバーの高層ビル上階にあった春樹のオフィスの窓から、ロッキー山脈が見えた。

そのロッキー山脈の松林では秋になるとマツタケがたくさん採れた。

冬には山の各地のスキー場はスキー客で賑わっていた。

 

コロラドと言えば、あの男との出会いが忘れられない。

あの男とは、殿(との)のことである。

殿については今までに断片的にご紹介しているが、そろそろ、彼の波乱万丈な人生について書きたくなってきた。

アメリカの、いわば片田舎の町で、一人の日本の男が奮闘している。

地位も名誉もカネも要らぬと言い、世のため人のために生きている。

アメリカへ渡った日本の男としては、かなり珍しい生き方であろう。

何故、そのような生き方をしているのか?

何故、そのような生き方をするようになったのか?

この男の数奇な人生をたどってみたい。

 

 中島みゆきが唄う「地上の星」が、竹林に流れて始めた。

  ♪風の中の昴、砂の中の銀河、みんなどこへ行ったーーーー

 

 続く・・・・・

 

「コロラドの男」すなわち本間学氏の現在の活動状況については、同氏のHP「日本館総本部」で紹介されていますので、ご関心のある方はこちらからどうぞ。

http://www.aikido-nipponkan-japan.com/

 

 (耕一物語につきましては、しばらく休刊致します)

  

 

 

 

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高速バスの中で聴く歌は・・・パート3

2014-07-24 10:00:15 | 日記

♪春を愛する人は、心清き人ーーーー
 夏を愛する人は、心強き人ーーーー
 秋を愛する人は、心深き人ーーーー
 冬を愛する人は、心広き人ーーーー♪


昨日、春樹(拙者の御主人様の名前を命名しました)は高速バスの中で、「四季の歌」を聴いていました。彼はこれから埼玉に住む大学の恩師を訪ねるようです。

大学の恩師を訪ねる時に聴く歌は・・・・
春樹が選んだ曲は、四季の歌であった。

春樹はこの恩師との出会いで人生が変わったと言っても良い。

恩師はいつも言っていた。
「大きな夢を持ちなさい」
「挑戦しなさい。君達には無限の可能性がある」

恩師は人を信じ続けた。
騙されることがあっても、決して人を騙すことはしなかった。

学生に対して常に大誠実であった。
心清く、心強く、心深く、心広き人であった。

そんな恩師に会いに行く時に聴く歌は、この歌しかないのである。


その昔、恩師は愛国青年であった。

アジアの楽土建設に若き血潮を燃えたぎらせた有三青年は、当時、国策学校として蒙古に建設された西北学塾に入学する。当時の帝国大学に準ずる難関学校であった。

蒙古に渡った有三青年は、馬に乗り、「蒙古放浪歌」を歌いながらモンゴルの草原を駆けた。

  ♪心猛くも 鬼神ならぬ
  人と生まれて 情はあれど
  母を見捨てて 波越えて行く
  友よ兄等と 何時またあわん ♪

 ♪波の彼方の 蒙古の砂漠
  男多恨の 身の捨て処
  胸に秘めたる 大願あれど
  生きて帰らん 望みはもたぬ ♪

青年は、日本という島国を飛び出し、大陸に夢を追ったのだ。

しかし、彼を待っていたのは敗戦という運命であった。

その運命のままに、青年はシベリアに抑留された。

シベリアの極寒の収容所で、あの瀬島龍三(元大本営参謀にして後の中曽根総理の懐刀)と一緒になったという。

生きて祖国の土を踏んだ有三氏は、若者を育てるため母校の建設に奮闘する。

春樹の恩師とはそういう人であった。

 

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蘇生

2014-07-22 00:06:43 | 日記

耕一は船に運ばれ、船倉にかつぎ込まれた。

若い船員が雑炊の入ったドンブリを持ってきた。

温かい雑炊にタクアンがのっていた。

耕一はドンブリを抱えるとそれを夢中で食べた。

雑炊を夢中でかきこみ、タクアンをかじろうとしたら激しい胃痛に襲われた。そして激しい下痢がきた。

もう何日もまともなメシを食べていない耕一の胃袋は、普通の食べ物を受け付けない身体になっていた。

食べた物を全部出し切った耕一は、水を飲んで空腹に耐えた。

 

しかし、それにしても、屋根のある建物の中で寝るのは何日ぶりだろう。

これまでは夜露に濡れながら寝ていた。

身体が冷えて眠れない夜もあった。

地獄の底にいるような孤独の中で朝を迎えたこともあった。

 

だが、今は身体にかける毛布もある。

声をかけてくれる人がいる。

そのことが、いかに有難いことであるか・・・・・。

耕一の目から一筋の涙がこぼれ落ちた。

 

「助かった・・・・」

そう呟いた耕一の口から、やがて安らかな寝息が聞こえてきた。

 

 

80トンの貨物船・愛友丸は月明かりの中で静かにたたずんでいた。

 

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大好きなオネエ様来訪と電柵事件

2014-07-21 10:59:52 | 日記

昨日は拙者の大好きなオネエ様が久しぶりに東京から里山に来られた。

たしかにその気配はありました。

数日前から、ご主人様の気合の入ったお屋敷掃除が始まったのだ。

道路の草刈に始まり、中庭の草刈、果樹園の草刈、長屋の掃除、そして前日には台所の掃除まで(なんと床の雑巾がけまで)やっていた。

これはただ事ではないと思っていたが、やはりあのオネエ様ご家族のご来訪であったか。

なぜそこまで気合が入るのかというと、前回のブログでもご紹介したが、オネエ様のだんな様がプロの料理人でありまして、その料理人がご主人様の希望に合わせて、何でも調理して下さるのである。

ご主人さまの気合が入るのも当然であります。

で、今回は母上の好物の「散らし寿司」とご主人様の好物の「野菜の天ぷら盛り合わせ」を作っていただいたのであります。

もちろん、拙者にもおいしいオヤツをご持参下さったので、拙者も精一杯の歓迎の意を表し、シッポを千切れんばかりに振ってお出迎えしたのでありました。

 風情ある庭を眺めながら、料理人の出張サービスという贅沢なランチに、母上もご主人様も大満足で舌鼓をうち、お腹いっぱいになるまでいただきました。

昼食後、しばし里山の涼風の中でお昼寝をし、リフレッシュした一同は夕方の散歩に出かけることになりました。

ご主人さまはオネエ様ご一行をご案内しての里山散策であります。当然、拙者もルンルン気分でお供です。

 

散歩コースには頼朝伝説に登場する坂道もあります。

事件はその散歩の途中に起きたのであります。

夕方の散歩はいつも田園コースでありまして、いつものように田んぼのあぜ道に入って行きました。

あぜ道にはイノシシ侵入防止用の電柵が張り巡らされております。でもまだ収穫期ではないので、これまではまだ電気が通っていませんでした。

拙者はいつものように、その電柵を飛び越えようと、「ヒョイ」とジャンプしましたが、後ろ足が電柵の電線にひっかかってしまいました。

その瞬間「ビビビビーーーーー」と激しいしびれと痛みが体中に流れました。

拙者はおもわず「キャンキャン!!」と叫び、パニックに陥りました。

「おい大丈夫か!」と、ご主人様はあわてて駆け寄ってきましたが、大丈夫なわけがありません。

あんな痛い思いをしたのは初めてであります。

こんな物騒なところにいたら大変と思い、ご主人様が持っているリードをグイグイと引っ張り、一目散に家に帰ろうとしたのであります。

しかしご主人様は、客人にまだ見せたいものがあると言って、その電柵の更に先にある耕作放棄地の方に拙者を引っ張っていきます。

しかたなく付いて行くと、そこはなんと宅地造成中の場所でした。

かなり辺鄙な場所ではありますが、下に渓流が流れており、風情のある場所ではあります。

都会の人がここに別荘(隠居屋敷?)を建てるのだそうです。

このあたりには、最近そういう家がポツンポツンと作られるようになりました。

里山風情を気に入る人が少なからずいるようです。

オネエ様も、少しづつ里山暮らしに関心を示しつつある気配であります。

 

 

 

 

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愛友丸

2014-07-20 03:11:23 | 日記

耕一は深い海の底で眠っていた。

海の底は静寂だった。

はるか頭上の海面に一条の陽の光が差し込み、海水がキラキラと輝いていた。

《こんなに気持ちの良い世界があったのか・・・・・・》

耕一は恍惚を感じながら眠っていた。

しかしその身体は、次第に深く深く海の底へ引き込まれて行くようであった。

深くなるにしたがって、恍惚感は高まって行く。

《俺はどこまで沈んで行くのだろうか・・・・》

と思った時だった。

「おい、大丈夫か!」

と、遠くで自分を呼ぶ声が聞こえたような気がした。

「おい、しっかりしろ!」

その声は急に大きくなり、そして身体を激しく揺さぶられた。

目を開けると、大柄な男が目の前にいた。その周りに数人の男。

「こいつまだ生きているぞ」

「・・・・・・・・」

耕一は自分が今どこにいるのか思い出せなかった。

「おい小僧、名前は何ていうんだ?」

「こ、こういち・・・、すざき・・・こういち」

声が出てこなかった。

耕一は喉の奥から絞り出すように、やっと言った。

「どうしてこんな所にいるんだ?」

「機関士見習いの採用通知が届いたので、千葉から出てきました。でも一日遅れてしまったので、雇ってもらえませんでした」

「・・・・・・そうか。おい、こいつを船に連れて行ってやれ。はらも減っているだろうから何か食わせてやりな」

大柄な男はそう言うと、タバコをふかしながら大股で歩いて行った。

 

大柄な男は、愛友丸という小さな貨物船の機関長であった。

晩飯を食べに船員達を連れて陸(おか)に上がり、居酒屋で夕食を済ませて船に帰る途中であった。 桟橋で少年が倒れていたので、どうしたのかと気になり声をかけたのだった。

男の背中に負ぶわれた 耕一は、まだ夢を見ているのだと思った。

夢の続きを見ているのだと思った。

 

 

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