<前回からの続き>猛烈に風が吹き荒れた翌朝は、身を切るような峻烈な寒さだった。闇はまだ道路の上に漂っていて、電信柱の街灯が霜の落ちた道を照らしていた。時刻は6時を回ったばかりで辺りはまだ暗い。沼までは5分もしないで着いた。
氷の張った沼が美しい模様を浮かび上がらせている。
サギが一羽身じろぎもせず佇んでいた。
沼はまだ未明の静寂のうちに眠ったままだ。
暫くして羽音が聞こえはじめ次第に大きくなっていく。夜明けまでは30分以上もあるのだが、気の早い群れが少しずつ餌場へと飛び立ち始めている。
と、凍りついたような静寂をいきなり破られた。突然大きな群れが一斉に唸るような羽音を立て空中に飛び出した。
つられたかのように飛び立つ群れはだんだんと大きくなっていく 。まるで全体が一つの巨大な鳥のようになり、一斉に空の高みを目指して飛び立つ。
東の空は朝焼けに染まり始めたばかり、そこに長いマガンの列が途切れることなく向かっていく。朝焼け空のカンバスに思い思いの隊形を描きながらだんだんと小さくなり、やがては茜色の空の中に溶け込んで行った。
凍った湖面には白鳥の足跡が残されている。滑った跡が残されているのが微笑ましい。
夜明けが次第に近くなってきて、周囲の明るさに促されたかのように二番目の大群が飛び始めた。
朝寝坊の小さい群れがそのあと、何弾にも分かれて飛び立っていった。
残されたのは白鳥やカモたち。
暫く余韻を楽しむかのように沼の周囲を散策した。
朝日に輝く観察小屋
この辺で。