残暑もどうやらやっと峠を越したようだ。季節は変わり、節季は白露の第3候「玄鳥去」となった。玄鳥というのは燕のことだが、そういえばここ最近はいつの間にか姿を見ることがなくなった。新しくできた家族ともども南の国へと帰っていったのだろうか。そしてかわりに暑さで出遅れていた秋の野の花がだんだんと姿を見せ始めたようだ。
久しぶりに訪ねた野川公園。ツルボが川の土手に群生していた。
図鑑では山野の日当たりのよいところに咲くとあるが、最近は町中の公園の芝生でよく見かける。その辺で普通に咲いて居る花だが、よく見ると非常に繊細で美しい。
もう少し川に近づくとツリフネソウが多くなる。
キツネノマゴもいたるところに咲いている。この時期咲いている花の個体数ではこの花が一番多い。
観察園に入るとミゾソバらしき花を見つけた。これはママコノシリヌグイというやつか。それともアキノウナギツカミという似ているものもある。いつまでたっても区別がつかない、そんな区別はどうだっていいじゃないかという思いがあるから尚更覚えられないのだろう。
今日野川の観察園に寄ったのはそろそろ彼岸花はどうかと思ったからなのだが、やはり今年の残暑で開花が遅れているようだ。咲いているのは4,5株のみ。そう思って期待してきた人がほかにもいるようで、みんな残念そうな顔をして帰っていく。
ここの観察園は彼岸花の群生も素晴らしいが、カリガネソウのちょっとした群生もなかなか行ける。
カリガネソウはクマツヅラ科の花。ダンギクやイワダレソウなども同じ科の花だが、それぞれ花の形がまるっきり違うのが面白い。
名は雁(かりがね)からだというのだが、この花を見てもどうしても雁には見えてこない。
カラスノゴマはシナノキ科の植物。シナノキ科の植物の有名なものとしては菩提樹やジュート、モロヘイヤなどがある。カラスの名のつく他の花と違って、大きめの葉の下に下向きに小さな花を一輪だけつける、健気で気品を感じさせる花だ。
ゲンノショウコの花は紅白見られるが、赤色の花ははっとするほど原色の赤に近い。名は昔から下痢止めの薬効が速やかに表れるので「現の証拠」とつけられたという。
アメリカイヌホオズキは帰化植物で、大きな体に小さな花を数輪つける。花は昔からのイヌホオズキとよく似ている。
キンミズヒキはバラ科キンミズヒキ属の花。ミズヒキはタデ科タデ属で、ギンミズヒキはミズヒキの白花品種。
夏の間繁茂していたクズの花に変わって、この時期川べりを覆っているのはアレチウリの花。旺盛な繁殖力から嫌われ者の花だが、今回は精一杯かわいく撮ってみた。
触れなば落ちんアキカラマツ
彼岸花は空振りだったが、もう一つのお目当てナンバンギセルには絶好のタイミングで会うことができた。ハマウツボ科に属するナンバンギセルは寄生植物で、ススキやイネ、ミョウガ、サトウキビなどの根元に生える。一年生の植物で花の終わりには黒い種をつける。下の写真にも種の一部が見える。
万葉集に「道の辺の 尾花が下の 思ひ草 今さらさらに 何をか思はむ」として登場する。尾花はススキ、思い草がナンバンギセル。
帰り際、今まで見たことのない珍しい蜂を見かけた。山や野に遊んで数十年になるが、このハチを見かけたのは初めてだった。終わりかけのイヌゴマにやってきた蜂の名はルリモンハナバチ。
じっとしては居てくれないので撮れたのは数カットのみ。背中の黒と水色の模様が何とも美しいハチだ。青い鳥は幸運を運んでくれるのだから、青い蜂も何か良いことをもたらしてくれるのだろうか。
この辺で。