『雲雀とお天道さん』
― 埼玉県 ―
昔、あるところに雲雀(ひばり)と、お天道(てんと)さんとがあったと。 二人は、バクチが大好きだったと。
ある日、二人は誘い合ってバクチ場へ行った。 お天道さんが負けて、雲雀から銭(ぜに)借りたと。 そのあと二人は、勝ったり負けたりしながら、夜っぴいて遊んでおったが、明方(あけがた)にはスッカラカンに負けた。
バクチ場もお開きとなって、二人は背中を丸めて帰ったと。
朝の白(しら)みはじめた道を歩いていたら、急にあたりが真暗闇になった。
「もしや」
と、胸騒ぎしたお天道さん、あわてて家に戻り着くと、もう、天界(てんかい)から遣(つか)いが来ていて、 「ただいま、お父上(ちちうえ)が亡くなられました」と、いうた。
お天道さんは父天道さんの役目(やくめ)を引(ひ)き継(つ)ぐことになった。しかも直(ただ)ちにだと。
天界の遣いと一緒(いっしょ)に天に昇(のぼ)って行くお天道さんに、雲雀が、
「今日貸(か)した銭、返(かえ)してから行け」
というたら、お天道さんは、高(たか)い所(ところ)から、
「春に返すう」
というた。