るるの日記

なんでも書きます

神武天皇 兄宇迦斯討った後の祝宴・御子歌う

2021-01-28 17:52:15 | 日記
弟宇迦斯の献れる大饗をば、其の御軍に賜ひき。この時、歌ひたまはく


宇陀の【高城(たかき)】に【鴨罠
(しぎわな)】張る

我が待つや鴨(しぎ)は【さやらず】

【いすくはし】【鯨】さやる

【前妻(こなみ)】が【肴(な)】乞さば

【立そばの実の】【無けく】を

こきしひえね

後妻(うはなり)が肴乞さば

【いちさかき実の】多けくを

こきだひえね

【ええ しやこしや】

こは【いのごふそ】

ああ しやこしや

此は嘲笑(あざわら)ふぞ

とうたひたまひき。故其の弟宇迦斯、これは宇陀の【水取(もひとり)】等の祖なり

♦️久米歌とよぶ♦️

★高城(たかき)
高地にある狩場
き→区切られた地域

★鴨罠
鴨をとる罠
この鴨は山鴨で歩行するので、地面に罠をかけた

★さやらず
さやる→ひっかかる

★いすくはし
鯨の枕詞

★鯨
鴨がかからず、何と大物の鯨(大敵の比喩)がひっかかっていた
酒宴にふさわしい笑いがある

★前妻(こなみ)
先にめとった妻
後妻(うはなり)
後にめとった妻

★肴
穀類以外の副食物

★立ちそばの実
たち→はえている
そば→錦木、実が少ししかならない

★無けく
実がごく少ない

★いちさかき
実をたくさんつける

★ええ しやこしや
囃しことば

★いのごふそ
他人を憎み、妬む声をだすぞ

★水取(もひと)り
宮中の飲料水を司る職




神武天皇 兄宇迦斯・圧死後も切り散らされる

2021-01-28 16:52:45 | 日記
【大伴連(おおともむらじ)等の祖・道臣命(みちのおみのみこと)
久米直(くめのあたひ)等の祖・大久米命(おほくめのみこと)の二人】、兄宇迦斯を召して罵詈(の)りて云はく

「【い】が作り仕え奉れる大殿の内には、【おれ】先ず入りて、其の仕え奉らむ状(さま)を明しまをせ」といひて、即ち横刀(たち)の【手上(たがみ)】を握り、【矛ゆけ】矢刺して、追ひ入るる時、乃ち己が作れる押に打たえて死にき。ここに即ちひき出して斬り散(はふ)りき。故その地を【宇陀の血原】といふ。然して其の弟宇迦斯の献(たてまつ)れる大饗(おほみあへ)をば、ことごとに其の御軍に賜ひき。

★大伴連等の祖・道臣命
久米直の祖・大久米の命
※両氏は同格で、朝廷の軍事を司ったが、後に久米氏が没落したため、大伴氏に率いられた

★い
卑称代名詞

★おれ
卑称代名詞

★手上(たがみ)
大刀の柄

★矛ゆけ
矛をしごくこと

★宇陀の血原
奈良県宇陀郡室生村田口付近

■大伴連らの祖先の、道臣命
久米直らの祖先の、大久米命
の二人は、兄宇迦斯を呼び寄せて、ののしって
「おまえが御子のために造った大きな御殿の中に、きさまがまず入って行って、お仕えしようとする次第をはっきりさせろ」と言って、太刀の柄を握り、矛をしごき、弓矢をつがえて、御殿の中へ追い込んだ

たちまち兄宇迦斯は自分で作った押機に打たれて死んでしまった。そこで、すぐさま兄宇迦斯を押機から引きずり出して、バラバラに切り散らかしてしまった。ゆえにその土地を宇陀の血原という

そして伊波礼毘古命は、弟宇迦斯の献上したご馳走をすべて部下の兵士たちに賜わった

神武天皇 弟宇迦斯、兄を裏切り告げ口する

2021-01-28 16:03:42 | 日記
待ち撃たむと云ひて軍をあつめき。然れども軍を得あつめざりしかば、仕へ奉らむといつはりて、【大殿(おほとの)】を作り、其の堀の内に【押機(おし)】を作りて待ちし時、弟宇迦斯、先ず参向(まいむか)へて拝(をろが)みてまをさく

「僕が兄(せ)兄宇迦斯、天つ神の御子の使を射返し、待ち攻めむとして軍をあつむけれど、得あつめざりしかば、殿を作り、其の内に押機(おし)を張りて待ち取らむとす。故、参向(まいむか)へて顕しまをす」とまをしき

★大殿(おおとの)
宮殿、貴人の邸宅

★押機(おし)
踏めば打たれて圧死する仕掛け

■兄宇迦斯は皇軍を迎え討とうと軍勢を集めた。しかしうまく集まらなかったので、伊波礼毘古命にお仕えいたそうと偽って、大きな御殿を造り、その御殿の中に押機を仕掛けて待っていたが、弟宇迦斯はまず伊波礼毘古命のもとに参上し、礼拝して
「私の兄の兄宇迦斯は、天つ神の使いを射返し、皇軍を討とうと軍勢を集めましたが、うまく集まりませんでしたので、次に御殿を造り、その中に押機を仕掛けて、御子を殺そうと待ち構えています。そこで私が参上して、この謀略を打ち明けて申しあげる次第です」と申しあげた

神武天皇 兄宇迦斯と弟宇迦斯は天つ神に仕えたくない

2021-01-28 15:38:32 | 日記
宇陀に【兄宇迦斯(えうかし)・弟宇迦斯(おとうかし)】の二人有り。故先ず八咫烏を遣はして、二人に問ひていはく、「今、天つ神の御子、幸行でましつ。汝等仕へ奉らむや」といひき

ここに兄宇迦斯、【鳴鏑(なりかぶら)】をもちて其の使いを待ち射返しき。故其の鳴鏑の落ちし地を【訶夫羅前(かぶらざき)】といふ

★兄宇迦斯・弟宇迦斯
菟田県(うだのあがた)の魁帥(ひとごのかみ)→長

★鳴鏑
飛ぶときに、矢じりが鳴る矢

★訶夫羅前(かぶらざき)
住所未詳

■宇陀に兄宇迦斯(えうかし)・弟宇迦斯(おとうかし)という二人の兄弟がいた。

伊波礼毘古命はまず八咫烏を使者として遣わして二人に向かって「今、天つ神の御子がおいでになった。おまえたちは御子にお仕えするか、どうか?」と尋ねた

兄宇斯迦は、鳴鏑の矢で使いの八咫烏を射て追い返してしまった。ゆえにその鳴鏑が落ちた土地を訶夫羅前(かぶらざき)という

神武天皇 吉野川下流から奈良の宇陀までの行軍

2021-01-28 15:07:24 | 日記
其の教え覚しのまにまに、其の八咫烏の後より幸行でませば、吉野川の河尻に到りましき

時に【筌(うへ)】を作りて魚(な)を取る人有り。天つ神の御子「汝誰ぞ」と問ひたまへば、
「僕(あ)は国つ神、名は【贄持之子(にへもつのこ)】といふ」と答へまをしき。[こは【阿陀(あだ)の鵜養(うかひ)】の祖]

其の地(ところ)より幸行でませば、【尾生(あ)る人】、井より出で来。その井に光有り。ここに「汝は誰ぞ」と問ひたまへば、
「僕は国つ神、名は【井氷鹿(いひか)】といふ」と答えまおしき
[こは吉野首(よしののおびと)の祖なり]

其の山に入りたまへば、また尾ある人にあひたまひき。この人、巌を押し分けて出で来。ここに「汝は誰ぞ」と問ひたまへば、
「僕は国つ神、名は石押分之子(いはおしわくのこ)といふ。今、天つ神の御子幸行でますと聞きし故に、参向(まいむか)へつるにこそ」と答えまおしき[これは【吉野の国巣】(くずの祖)]

其の地より【踏みうかち越えて】、【宇陀】に幸でましき。故、【宇陀のうかち】といふ

★筌(うへ)
割り竹を編んで筒形に作り、川などに仕掛けて魚を取る道具

★贄持之子(にへもつのこ)
神や天皇に捧げる食物を持つ者

★阿陀の鵜養
※阿陀
大和国宇智郡阿陀
五條市の東部に、吉野川を挟んで東阿田、西阿田、南阿田の地名が残る
十津川をさかのぼって吉野川上流の阿陀に出た

※うかひ→鵜を使って魚を取るのを業とする者

★尾生(あ)る人
吉野の木こりは、現在も冬の間、防寒その他の目的から、尾のついたままの獣皮を腰につけるという

★井氷鹿(いひか)
※井光
※吉野郡吉野町飯貝
※吉野郡川上村には井光の地名がある

★吉野の国巣(くず)
吉野郡吉野町国栖(くず)地方に住んでいた土民
大嘗祭などに参上し、歌笛を奏し御贄を献上した

★踏みうかち越えて
岩や木の間を踏み分けて

★宇陀
奈良県宇陀郡

★宇陀のうかち
宇陀郡菟田町宇賀志

■その教え覚しのとおりに、八咫烏の後から行くと、吉野川の下流に着いた。その時、筌(うけ)を作りそれで魚を取っている人がいた。この人をみて神の御子・伊波礼毘古命が「おまえは誰か」と尋ねると「私は国つ神で、名は贄持之子と申します」と答えた

そこから進むと、尾のある人が泉の中から出てきた。しかもその泉は光っていた。そこで「おまえは誰か」と尋ねると「私は国つ神で、名は井氷鹿(いひか)と申します」と答えた

そこから山に入ると、また尾のある人に会った。この人は岩を押し分けて出てきた。そこで「おまえは誰か」と尋ねると「私は国つ神で、名は押分之子と申します。今、天つ神の御子がおいでになると聞いたので、お迎えに参りました」と答えた

そこから岩や木の間を踏み分け越えて、宇陀においでになった。その困難な行軍にちなんで、そこを「宇陀のうかち」と云うのである