天皇崩(すめらみこと・かむあが)りましし後、
其の【庶兄(まませ)】当芸志美美命(たぎしみみのみこと)、其の【適后(おほきさき)】伊須気余理比売(いすけよりひめ)に娶(みあ)ひせし時、其の三(みはしら)の弟を殺さむと謀(はか)りし間に、其の御親(みおや)伊須気余理比売、【患(うれ)たみ】苦しみて、歌をもちて御子たちに知らしめたまひき
【「狭井河よ
雲立ちわたり
畝火山
木の葉さやぎぬ
風吹かむとす」
「畝火山
昼は雲とい
夕されば
風吹かむとそ
木の葉さやげる」】
と、うたひたまひき
★庶兄(まませ)
異母兄
★適后
皇后。大后と同じ
義母が継子の妻となる例はしばしばある
★患(うれた)み
腹を立てる
いまいましく思う
★狭井河よ〰️★畝火山〰️
※狭井河は皇后の家の所在地、畝火山は皇居の地。まさに動乱の起ころうとする危機を警告した
※暴風の吹く前の光景
■神武天皇がお亡くなりになった後、その三皇子の異母兄の多芸志美美命は、天皇の皇后である伊須気余理比売を妻としたが、その弟たちを殺そうと企んだので、三皇子の母・伊須気余理比売は腹立たしく、苦しく思って、歌によって息子たちに危機を知らせた
「狭井河よ、狭井河より雲がこちらの方へ湧き起こってきて、畝傍山の木の葉がざわざわと騒いでいる。今にも嵐が吹こうとしている」
「畝火山、畝火山は昼間は雲が揺れ動き、夕方になると、嵐の吹く前触れとして木の葉がざわざわと騒いでいる」