また歌のりたまはく
「みつみつし
久米の子等が
垣下に植えし【椒(はじかみ)】
口【ひひく】
われは忘れじ
撃ちてし止まむ」
又歌のりたまはく
「【神風(かむかぜ)】の
伊勢の海の
【生石(おひし)】に
這(は)ひ廻(もとほ)ろふ
【細螺(しただみ)】の
い這ひ廻り
撃ちてし止まむ」
とうたひたまひき
★椒(はじかみ)
山椒や生姜など、口を強く刺激するもの
★ひひく
口に刺激を感じる
敵から受けたひどい痛手がいつまでも忘れられない意味にかける
★神風
伊勢の枕詞
伊勢は風が強いからとも、皇大神宮があるからともいう
★生石
石は生まれ成長すると信じた
★細螺
小形の巻き貝
細螺のように這いまわり結集する、ことを言う
■「久米部の者たちが垣のそばに植えた山椒を食べると口がヒリヒリする。その感じがいつでも残るように、私は敵から受けたひどい痛手を忘れまい。敵を撃たずにおくものか」
「神風の伊勢の海に生い立つ石を、這い廻っている小さな巻き貝のように、敵のまわりを這い廻って、撃たずにおくものか」