神八井耳命、弟建沼河耳命に譲りてまをさく
「吾は仇(あた)を殺すことあたはず。汝命、既に仇を得殺したまひき。故、吾(あ)は兄なれども【上(かみ)】となるべからず。これをもちて汝命、上となりて天下(あめのした)治めたまへ。僕(やっこ)は汝命をたすけて、【忌人(いはひびと)】となりて仕へ奉らむ」
とまをしき
神沼河耳命は天下治めたまひき
おほよそ、この神倭伊波礼毘古天皇(かむやまといわれびこのすめらみこと)の御歳(みとし)、【壱伯参拾漆歳(ももちまりみそななとせ)】
御陵(みはか)は畝火山の北の方の、かしの尾の上に在り
★上(かみ)
上位の者、天皇
★忌人(いはひびと)
※謹んで神を祀る人
祭事を司る呪術者
※古代社会では政治より祭事が優先し、第一子が祭祀権を継承し、第二子が皇位を継承するという
この場合は第二子が祭祀権、第三子が皇位をそれぞれ継ぐとあり例外である
★壱伯参拾漆歳
137歳
■神八井耳命は、弟の建沼河耳命に皇位を譲って
「自分は敵を殺すことができなかったのに、あなたは完全に敵を殺すことができた。それゆえ私は兄であるけれど天皇となるべきではない。だからあなたが天皇となって、天下を治めなさい。私はあなたを助けて神事を司る職について仕えましょう」と申した
神沼河耳命は天下を治めた
この神倭伊波礼毘古天皇の享年は137歳、御陵は畝傍山の北方、かしの尾のほとりにある