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狭軌 (1067 mm軌間)

2011-05-15 15:20:00 | 広軌改築論
新幹線や関西の私鉄を除く多くの鉄道路線は狭軌(日本標準軌, 1067 mm)で敷設されている.京王線などに用いられている馬車軌(1372 mm)も狭軌の一種であるが,ここではもっぱら1067 mm軌間を取りあげたい.

わが国の鉄道が狭軌になったのは,ひとえに日本で最初に敷設された鉄道が狭軌であったことに由来する(日本の鉄道開業).どういった経緯でそうなったのかは今もって謎であるが,イギリスから招かれた技師は既に欧米で標準となっていた1435 mmの標準軌ではなく,1067 mmの狭軌を選択したのである.これを大隈重信は「一生の不覚であった」と言っているが,その当時の日本における諸条件,すなわち輸送力ならびにスピードへの要求,地形,土木技術,資金力等々に鑑みれば,あながち間違った選択をしたわけでもないと考えられる.

実際,明治時代の客車の全幅は2200 mm程度であり,スピードについては明らかではないが,日本の鉄道史で表定速度が32.8 km/hとあるあたりから察するに,40-50 km/hというレベルであったのだろう.これくらいの「身の丈に合った」車両の寸法やスピードであれば,狭軌であっても特に問題は発生しなかったものと思われる.

しかしながら明治時代の半ばごろになって,輸送力への要求が増大するにしたがい,狭軌鉄道の限界というものが見えてきた.そうした事情に鑑み,狭軌から標準軌に改軌した上で輸送力の増強や高速化を図ろうという計画もあったが,改軌よりも路線の拡充を優先すべきとの意見に押し切られ,それは頓挫した(日本の改軌論争).

では,日本の鉄道は現在に至るまで狭軌レベルの輸送力とスピードに甘んじてきたのだろうか?そうではない.軌間の狭さはそのままに,車両の全長は20 mにまで,全幅は3000 mm程度にまで拡張されている.スピードも多くの路線で100 km/h程度,在来線特急の多くは最高時速130 km/h,北越急行ほくほく線に至っては160 km/hとなっている.車体全長は多少控えめであるが,その他の面においてはほぼ標準軌の鉄道と同じレベルのスペックを有している.

多くの人は,それを「技術の勝利だ」と評し,狭軌であることに由来する限界は技術力で打ち破ることができるのだと豪語するだろう.しかしながら,科学者や技術者の多くは,世の中には普遍的にトレードオフというものがあること,狭軌のまま輸送力やスピードを標準軌なみにするためには「相当無理をしているのだろう」と「理系の本能」で察するに違いない.実際,脱線や衝突ついでに車両が転覆する事故は少なくない.

もはや狭軌ではどうにもならないことは,新幹線が狭軌ではなく標準軌を採用していることからも明らかである.さらには,JR在来線と直通運転を考慮していない私鉄や地下鉄のほとんどが標準軌を採用しているところからも,多くを察することができる.
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NTT docomo ← au by KDDI

2011-05-01 20:00:00 | 買い物
本日,ここ2年近くの悲願であったdocomoへの乗り換えを果たした.2年というのは,いわゆる「誰でも割」に縛られていた期間である.

auからdocomoに乗り換えた理由のうち主なものを挙げると
+ 家族が皆docomoである
+ 何だかんだでdocomoの方がカバーしているエリアが広い
+ au端末のラインナップには私が欲しい機能を備えた機種がない
+ 電波の状態が良好な場所でも
|- 通話時に雑音が大きい
|- EZwebサーバーにつながりにくかったり通信速度がやたら遅い
+ そもそもKDDIに反感を募らせていた
といったところである.

元々,私はTu-Ka(ツーカー)のユーザーであり,さらに家の光回線は東京電力の「TEPCOひかり」であった.時期は異なるものの,いずれもKDDIに買収されている.ツーカーについては,日産自動車と第二電電の合弁会社から日産の資本が抜けて,結果としてKDDIの事業になっていたという表現をすべきかもしれない.

さて,KDDIが買収した企業や事業のユーザーに何をするかというと以下の通りである.
+ まず徹底的に店ざらしにし,新たなサービスの類は提供しない
+ その後,強引にKDDI本体側の事業に巻き取る
結果として当面の間,Tu-Kaや旧TEPCOひかりのユーザーは,auやauひかりのユーザーと比較して,より貧弱なサービスを割高な料金で利用する羽目になる.旧TEPCOひかりは回線占有型のサービスとして一定の価値はあったが,Tu-Kaに対する仕打ちは酷かった.3Gには移行しないと高らかに宣言し,基地局の増設はほぼストップし,端末は高齢者向けに特化し機能面で貧弱なものばかりとなった.

その後,
「auひかり」の導入にまつわる顛末
Linuxマシンから「auお客様サポート」ページにログインできない件
といったエピソードも加わり,私は脱KDDIを完遂することで腹を括った.おしなべてauショップよりもdocomoショップの方が店員さんによる応対が良かったことも,私の背中を押した.
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Linuxに関する記事を書かなくなった件

2011-04-17 23:00:00 | Linux
このところ,Linuxカテゴリーに属する記事をまったく書かなくなった.理由は単純で,FedoraからUbuntuに乗り換えたからである.Fedora時代はptexliveをインストールすることを始め,色々と困ることがあった.すなわち記事を書くネタには事欠かなかった.しかしながら,Ubuntuは最初から何もかも整っているので,私が困って問題解決のために何かをして,その顛末について他人様に知らせるようなことが発生しないのだ.

例えば,FedoraやrpmfusionといったリポジトリにはScilabが入っていなかったように記憶しているが,Ubuntuのそれには当たり前のように入っている.MPEG-4の動画も問題なく観ることができる.日本語環境を使っていて,表示される日本語が変だということもない.インストールにも維持にも手がかからないという点では,Windowsよりも初心者に優しいOSと言ってもいい.

唯一気になるのが,言語選択などのリスト中に「中国領・台湾」という表記が出てくることである.
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鉄道の軌間

2011-04-16 17:30:00 | 広軌改築論
だいぶ前置きが長くなった.しかしながら,まだ本論を展開するまでには書かなければならないことが幾分残っている.このシリーズに興味を持ってくださるような奇特な方に対しては「釈迦に説法」になってしまうが,本稿では鉄道の軌間についての現状と,それに対して私が思うところについて述べる.

軌間とは,鉄道のレールの間隔である.まずはこちらを参照されたい.これは所詮ブログ記事であり論文ではないので,引用する文献もWikipediaで十分である.

さて,鉄道のネットワークには規格や標準の類が数多あるが,その中でも最も重要なものは軌間である.他にも道床の種類,許容される軸重,車両限界,電化方式,信号方式など例を挙げればきりがないが,軌間さえ一致していれば,異なるネットワーク間でも線路をつなげ,どうにかして車両を直通させることが可能である.しかしながら,軌間が異なれば,他の如何なる規格が一致していても,線路をつなげることはかなわず,したがって車両を直通させることは不可能である.

軌間はその鉄道の輸送力,速さ,安全性などに直結する.また,ある軌間で一旦鉄道を敷設してしまえば,それを変えるのは大変な困難を伴う事業となる.その厳粛さに鑑みれば,こと軌間の決定に際しては,十分過ぎるほどに技術的な検討が行われてしかるべきである.先のリンク先をご覧になった方々にはお分かりいただけるであろうが,軌間は広くても狭くても,それぞれメリットとデメリットが存在する.概して,平らで堅固な地盤を持つ土地に輸送力が大きく高速な鉄道を建設したいのであれば広い軌間を,概ねその逆の条件であれば狭い軌間を,それぞれ採用すべきだということになる.

翻って現状を見れば,技術面での検討などなきに等しい状態で,既存の路線のものに合わせたり,あるいは何となく世界標準となっているものを採用する形で軌間は決定されている.物やシステムや技術というのは概ねそうしたもので,鉄道もその例外ではないといういい例なのであるが,こと鉄道の軌間に関しては,私は到底納得できない.鉄道のシステムとは,自動車や航空機と比較して,桁外れに多くの人命を預かり運ぶキャパシティを備えているからである.安易な選択や妥協が許されていいものではない.

仮に鉄道車両が転覆すれば,何十人~百人というオーダーで死傷者がでるが,十分に軌間を広く取ることにより転覆を避けることができれば,せいぜい脱線して軽傷者何十人といったレベルになるだろう.これは鉄道に限った話ではないが,多数の人命を預かる乗り物であることを考えれば,曲線通過時の抵抗が大きくなろうが建設費が多少かさもうが,安全性を最優先に考えるのは当然のことであろう.

では,軌間の検討と決定に関して,基本的にどのような考え方で臨めばよいのであろうか?暴論なのを承知で私は断言する.
「軌間は~事情が許す限り~広くとるべきである!」
物理を知らない文系の鉄道マニアの方々,鉄道技術のことしか知らない「専門家」の方々は判で押したように
「軌間は広けりゃいいってもんじゃない」
「軌間が狭いことによるハンデは技術力でカバーできる!」
「軌間が広いと建設費がかさむ」
「軌間が広いと車軸が長くなり折れやすくなる」
などという漠然とした理屈を並べ立てて狭い軌間を正当化したがる.しかしながら,これらの意見は物理的な不見識,不合理な精神論,目先の算盤勘定に立脚しているのだと私は捉えている.まず,メカニズムが大きく異なるとはいえ,自動車などのトレッドは事情が許す限り広く設定されている.また,これは私の情報収集能力が足りないのかもしれないが,枕木一本の単価を概算でもいいから把握した上で「広軌は建設費が高くつく」という文章には出会ったことがない.さらに言えば,車軸にかかる応力は,車輪と軸受けの距離に依存し,車輪と車輪の距離には依存しないので,「長い車軸は折れやすい」などというのも素人の言い分である.

さて,広い軌間は,横風,曲線通過時の遠心力や左右軌条の高低差などに由来する「横方向の外乱」に対する抗力をもたらす.これは,車両が転覆しにくくなることを意味する.高速化に伴って問題となってくる他の要因(蛇行動ヨーイングなど)には,確かに技術的な処方箋がある.また,横方向の外乱に対する抗力も,車両の重心を下げることによりある程度は得られる.しかしながら,車両の重心を下げる設計は容易なことではない.それは概ね車高を下げ,さらにエアコンを床下に押しやることになるが,それは床下のレイアウトの自由度と引きかえである.台車の質量をわざわざ大きくすることも一つの手だが,それは下策というものであろう.それゆえ,重心を低くするという設計は,全ての車両に適用できるものではない.あとはせいぜい軌道の公差を厳しく管理して外乱の原因(の一つ)を小さくするのが関の山である.やはり,「転覆しにくい」という特性と車両設計の自由度確保という命題を両立させるには,広い軌間を採用するしかない.

もう一つ,広い軌間でなければ享受できないメリットは,台車内における設計の自由度の高さである.三相誘導電動機が普及した現在でこそ,狭軌の台車にも200 kWクラスのモーターを容易に積むことができるようになったが,実質的に直流整流子電動機しか使えなかった時代には中空軸平行カルダン駆動方式という涙ぐましい技術を駆使しても,出力にしてせいぜい150 kW程度のモーターを積むことが関の山であった.軌間を広げれば,さほどレイアウト的な苦労をしなくても,大出力のモーターを積みつつシンプルな駆動方式を用いることが可能になる.これは,設計や保守を格段に楽なものにしうる.

一般に,システムを設計,製造,運用,そして維持する上では様々な規格や拘束条件がある.とりわけ安全性とコストは両立しにくい.それらを両立させるべく,設計,製造,運転,保守の担当者たちは血の滲むような努力をしているが,残念なことに,コスト面からの要求やプロセスの煩雑さに負けて安全性を疎かにしてしまうという事例は後を絶たない.こうした不幸なことを避けるためには,あらかじめ安全性に関して高いポテンシャルを有する規格を用いるしかない.ポテンシャルの高い規格を用いること,レイアウト的に自由度が高いこと,そして許容される誤差が大きいことは,多くの人(特に設計者)を苦悩から解放し,よりシステムを安全なものにする.このあたりは,実際に「設計」の仕事を経験したことのある方々には多くを語らずとも分かっていただけると思う.製造,運転,保守の仕事を経験された方々にも理解していただけるに違いない.「そこを何とかするのが貴方たち理系の人間の仕事でしょ!」などとのたまう文系の方々には,どうか黙っていていただきたい.

さて,鉄道の黎明期より少し後に始まって現在に至るまで,世界的には1435 mmの標準軌が,日本においては1067 mmの狭軌(日本標準軌間)が,それぞれ多用されている.次項ではそれらが標準となるに至った経緯などについて復習し,それらの問題点を指摘し,それらが現在そして未来の鉄道に於ける標準としては役者不足となりつつあるという認識を示そうと考えている.
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序章その四 (日本の規格と世界の規格)

2011-04-06 22:00:00 | 広軌改築論
私はこのシリーズで,軌間2000 mm程度の超広軌鉄道と,日本中の鉄道をその軌間に移行させることを提唱しようとしている.こうした話に辿り着くには様々な経路がある.たとえば,単純に輸送力を増したいとか,スピードを上げたいとか,安全性を向上させたいとか,軌間の統一によって車両や路線の互換性を確保し利便性の向上につなげたい,などという切り口から超広軌を提唱することが可能である.他には,「歴史的な事情によるしがらみや固定観念の打破」などと大上段に構えて話を始めることも可能である.前回は前者のアプローチをとったわけであるが,今回は後者のアプローチを試みてみたい.

人間の社会において,規格というものは欠かせないものであり,そしてごく当たり前のように存在している.身近なところを見ればSI単位系,ISO,JIS,DIN,IEEEなど枚挙に暇がない.言語も規格といっていいかもしれないし,極論すれば「常識」というものも規格の一種であろう.

規格が国や地域によってまちまちという例も枚挙に暇がない.車が右側通行か左側通行か,商用電源周波数は50 Hzか60 Hzか,他にも色々ある.言語もバラバラである.そして,鉄道に関する規格も例外ではない.

しかしながら,決められた規格はなくとも,事実上の標準(デファクトスタンダード)が存在する分野も多い.車はどちらかというと右側通行が,商用電源周波数は50 Hzが,言語は英語が,それぞれ世界のデファクトスタンダードであると言ってよいだろう.そして,鉄道の分野には標準軌間(1435 mm)というものがある.

また,それら世界のデファクトスタンダードと日本国内のデファクトスタンダードが異なっている場合も多い.例えば自動車は左側通行であるし,商用電源周波数はそもそも東日本と西日本で異なり,日本語と言語学的に類似した言語はない(しいて言えばハングルが近いが).そして,鉄道の軌間は標準軌間よりも狭い狭軌(1067 mm)が主流である.

日本の規格や標準は世界のそれよりも高水準であったり厳しかったりする分野もあるが,概して鉄道や道路など交通の分野では,残念ながら世界水準に劣るものが多いと思わざるをえない.道路の法定速度しかり,自動車の全幅などがいい例であろう.そして,鉄道路線の多くが狭軌であることは,まさに本シリーズでやり玉に挙げようとしているテーマである.

日本の道路は欧米のそれと比較して狭く,そこをサイズ,排気量ともに小さい車両が低速で走っている.都内の住宅地には全幅1700 mm以下の車でないと不便な道路が多い.また,自動車の全幅が2500 mm以下に抑えられていることは,海外ではメジャーな40フィート海上コンテナを貨物自動車で陸送するにあたり,安全面でのリスクを大きくしている.また,一般道の法定速度は60 km/hであり,高速道路のそれは100 km/hに抑えられている.島国根性に染まった日本人は,「日本は島国だからいいんだ」,「日本は狭いんだから道路が狭いのは当たり前」,「こんなパワーのある車なんか日本には要らない」,「狭い日本そんなに急いでどこへ行く」などと言う.

私は,そうした「島国根性」に,ここで異を唱える.日本の他にも島国はいくらでもあるし,日本より狭い国も枚挙に暇がない.日本が小国であった大昔ならいざ知らず,今はGDPで世界第3位,ついこの間までは世界第2位であった経済大国である.土木技術もこの百数十年で大きく進歩した.日本がわざわざ世界標準よりも劣る規格に甘んじなければならない理由などもはやないのだ.

だからと言って,ただ日本のデファクトスタンダードを捨てて世界のデファクトスタンダードに合わせるというのも能のない話である.どのみち現在の規格や標準を捨てなければならないのであれば,世界標準を凌駕するものを打ち立て,それを世界に向けて提案するくらいの意気込みが必要なのではないか.それくらいのマインドが,現在の日本に蔓延している閉塞感を打破するために必要なのではないかと私は思う.
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Unknown

2011-04-02 23:10:00 | 弐千円札/雑記
町田のヨドバシカメラにて
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Excellent

2011-04-02 23:08:00 | 弐千円札/雑記
海老名のマクドナルドにて
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序章その三 (日本の鉄道網が抱える問題点について)

2011-03-31 20:00:00 | 広軌改築論
前記事では,とりわけ貨物輸送のモーダルシフトを阻害する要因として,わが国の鉄道網に関する問題点について触れた.今回は,その問題点についてもう少し考えてみようと思う.

まず一つ目は,新幹線とりわけ東海道新幹線の輸送力が逼迫しており,とても貨物列車などを走らせる余裕がないことであった.

その対策の一つとして,リニア中央新幹線といった計画がある.しかしながら,これが開通するのは早くても2027年,そして開通しても当面は東京(品川)と名古屋を結ぶに過ぎない.さらにこれが輸送するのは旅客のみであり,貨物を輸送する計画はないようである.また,磁気浮上しなければ走れないという性格上,輸送力面でのポテンシャルは未知数である(おそらく小さいだろう).したがって,リニア中央新幹線は旅客輸送に関しては多少のモーダルシフトを促進するかもしれないが,貨物輸送に関してはまったく寄与しないであろう.

二つ目は,新幹線の規格が在来線のそれと根本から異なり,見た目は同じような鉄道に見えても互換性がまったくと言っていいほどないことであった.一部の例外を除き,新幹線のネットワークは在来線のそれとはまったく別個に存在している.そのため,直通運転は基本的にはできない.山形新幹線ならびに秋田新幹線(厳密には在来線の奥羽本線ならびに田沢湖線)のようにミニ新幹線という手もあるが,長期間の運休を伴う改軌工事を他の路線にも適用することは難しいだろう.

三つ目は,本題からは外れてしまうが,高速鉄道のネットワークが在来線と新幹線ともに東京で分断されていることにある.

在来線については既に湘南新宿ラインという形で東北本線-東海道本線の直通が事実上実現し,さらに2013年には上野-東京ルートでも直通運転が開始される見込みである.しかしながら,新幹線においてはJR東日本が管轄する東北・上越・長野の各新幹線と,JR東海が管轄する東海道新幹線が分断されたままになっている.東北新幹線と東海道新幹線の直通運転が可能になれば,両社とも東京駅がターミナルとして過負荷な状態にある事態を抜本的に解決できるし,そもそも東海道新幹線に品川駅を設ける必要などもなかったのである.非常に愚かなことだと思うが,これはJR東日本とJR東海の確執を含む政治的な問題であり,今後も解決されることはないだろう.

序章があといくつ続くかは分からないが,本稿で一番目と二番目に挙げた問題点を解決するスキームとして,本シリーズでは超広軌鉄道を提唱することになろう.
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序章その二 (長距離大量輸送の現実)

2011-03-29 20:00:00 | 広軌改築論
前記事では,主に乗用車,バスやトラックのドライバー達を過酷な仕事から解放したいとの思いから,旅客や貨物の輸送をバスやトラックから鉄道にシフトすべきであるとの考えに至った.

こうした私の考えとは別に,そしてはるかに昔の1991年から,国土交通省(当時運輸省)やJR貨物がモーダルシフトとして同じような取り組みを進めている.しかしながら,その進捗状況は順調とはお世辞にも言えない.

モーダルシフトが進まない原因は,安直にWikipediaで調べただけでも山のように出てくる.主に貨物についての問題は,主に以下の二点に集約できそうである.
鉄道による貨物輸送がトラック輸送と比較して
+ トータルで高コストになること
+ トータルで所要時間がかかること

それらのさらなる原因について私がここで詳述しても,やはりWikipediaやJR貨物や国土交通省のサイトなどに書いてあることの受け売りになってしまう.したがって,ここでは旅客や貨物の輸送を取り戻すために,鉄道に求められる条件について,私なりの乱暴な意見を述べる.

鉄道はどんなに逆立ちしても出発地から目的地への"door to door"のサービスを提供することはできない.出発地から駅へ,駅から目的地へのアクセスには自動車等の手段が必須である.また,鉄道を利用している間にも,乗り換えが必要になることが多い.それらは時間的にもコスト的にも不利に働く.それは鉄道が宿命的に抱えるハンディキャップである.よって,そのハンディキャップを補って余りある利点を鉄道は獲得しなければならない.

その,獲得すべきものは何か.それは今さら言うのも憚られるが,
「高速道路を走る自動車より圧倒的に速く,大量に運べ,安全なこと」
である.新幹線は生まれながらにしてこの要件を満たしており,主要な都市間の旅客輸送に関しては,自動車に対し十分な優位性を確保している.

しかしながら,新幹線の行き渡っていない地域間の旅客輸送および貨物輸送は,最高時速にして高々130 km/h,さらに多くの踏切を抱えたの在来線を走行せざるを得ず,高速道路を走る自動車に対し十分な競争力を有するには至っていない.速さで自動車に「圧勝」するためには,踏切のない路線を少なくとも最高時速にして200 km/h程度,できれば新幹線並みの300 km/hのレベルで走行することが必要となろう.

また,これはWikipediaに記述されていることを繰り返してしまうが,車両の全長が20 m級に抑えられている在来線においては,40フィート海上コンテナを効率よく輸送することが困難である.これは,船舶による貨物輸送との連携を阻害することになり,トラックに需要を奪われる一因となっているだろう.

そうなると当然,全長25 m級の車両を300 km/h程度で走行させることが可能な新幹線に着目したくなる.しかしながら,新幹線,とりわけ東海道新幹線は旅客輸送しか行っていないにもかかわらず,その輸送力は限界に達している.夜間は軌道のメンテナンスを行っていることを考えると,貨物列車などを走らせられるような状態ではまったくない.さらに,貨物線が走り貨物ターミナルが設けられている在来線の軌間は狭軌(1067 mm)であるため,標準軌(1435 mm)の新幹線とは規格的にもまったく互換性がない.

現在の新幹線にかかっている負荷と,新幹線と在来線の軌間の相違を鑑みるに,「高速道路を走る自動車より圧倒的に速く,大量に運べ,安全なこと」を鉄道貨物に求めるのは現状では無理な話である.
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三井住友銀行某支店にて

2011-03-28 20:00:00 | 弐千円札/雑記
本日,あるところに大金を振り込む用事があったため,東京都杉並区内・中央線沿線にある三井住友銀行某支店を訪れた.窓口の方は,振込依頼書に書かれた振込先を確認して,私に「おめでとうございます」と言ってくださった.

ことの経緯を考えれば,それが目出度いのか否かは議論が分かれるところであるが,粋な一言であることは間違いない.その他の面でも非常に対応が丁寧だったため,私は感動した.

窓口の方の対応に感動したついでに,私はカード式両替機にも寄り,その画面を確認した.すると,ここでも私は感動することとなった.そう,その両替機には二千円札が装填されていたのである.かつては装填されていなかった二千円札が,いつからかは分からないが装填されるようになっていたのだ.以前,店に備え付けの「ご意見ポスト」なるものから色々とリクエストしたことが効いたのか,他に思うところがあったのかは分からないが,画期的な進歩であることは疑いの余地がない.

私は三井住友銀行に口座を持ってはいるが,残高はゼロで,ここ何年かお世話になったことはなかった.さらひどいことに,その口座のキャッシュカードを紛失してしまいながら,1,050円もかけて再発行してもらうのもバカらしいな,などと考えていた.しかしながら,今回の三井住友銀行某支店の対応には,そうした私の考えを変えるのに十分なインパクトがあった.
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