すっかり前記事から間隔が空いてしまった.本シリーズでは,数十年から百年といった将来の鉄道のあるべき姿を考えれば,百数十年前から引きずっている世界標準「標準軌」を見直すべきであるという主張をしている.
では,これからの鉄道に何が求められていて,どのような制約があり,それらを満足させるためにはどれくらいの軌間が必要になるのか考えてみたい.まず要求としては
+ 安全性 (脱線はすれどまず転覆はしないこと)
+ 輸送力 (船舶や飛行機のコンテナを積めること)
+ スピード (あまり小細工をせずに300~400 km/h出せること)
+ 互換性 (狭軌あるいは標準軌から四線軌条を経て移行できること)
が挙げられよう.最後の「互換性」は,私が超広軌というものに思いが至るきっかけとなった要素である.また,こうした突拍子もない話の中で取り上げるのも滑稽な話ではあるが,軽い制約としては
- その気になれば在来線に新軌間の台車を履かせられること
- あまり無意味に広くても仕方がない
というものを考える.
まず最低限必要な軌間は,4番目の要求である互換性,すなわち1067 mmあるいは1435 mmと何とか四線軌条で共存させたいというところから導き出される.四線軌条にこだわるのは,車両の中心線が軌間によってずれるのを防ぎたいからである.ここで参考にすべきは,1067 mm軌間と1435 mm軌間の共存が,三線軌条では何とか成立し四線軌条では成立しないという事実である.つまり,レール間のピッチは368 mm程度必要である.これによれば,1435 mmと新軌間とを共存させることを考えると,単純計算で2171 mmは必要になる.
次に,これが限界ではないかという値は,1番目の制約から導かれる.つまり,在来線(全幅2870 mm程度)の車両に辛うじて新軌間の台車を履かせることを考えれば,2870 mmより大きくすることはどうあがいても不可能である.
結局のところ,考えられる軌間は2171 mm以上かつ2870 mm未満ということになる.ここから色々と政治的に妥協したり技術的に努力したりすると,2000 mm程度に落ち着くのではなかろうか(※).
ちなみに,現時点でもっとも大きな車両限界は,英仏海峡トンネルにおける全幅4100 mmならびに全高5600 mmである.当面ないとは思うが,ポテンシャルとしては,このサイズがユーラシア大陸を走る鉄道の標準になり得る.そして,この規格に準拠した車両を300 km/h超のスピードで無理なく走らせることを考えるならば,2000 mm程度の軌間もさほど突飛なものではない.
そう遠くない将来,化石燃料が手に入りにくくなれば,船舶や航空機に頼っている旅客や貨物は,嫌でも鉄道へとシフトせざるを得なくなる.これらの負担を一身に受け止めるであろう鉄道を,二百年近くも昔の規格に押し込めるのは酷というものである.おそらく,私が生きているうちに,ここで提唱した超広軌鉄道が実現することはないであろう.しかしながら,画期的な軌間とともに生まれ変わった鉄道が,遠い未来の世界において繁栄の中心にあることを信じて筆を置くことにする.
※ これは拙ブログのテーマである「2000」に半ば強引に合わせた.本来の趣旨であれば2200 mmくらいが妥当であろう.
では,これからの鉄道に何が求められていて,どのような制約があり,それらを満足させるためにはどれくらいの軌間が必要になるのか考えてみたい.まず要求としては
+ 安全性 (脱線はすれどまず転覆はしないこと)
+ 輸送力 (船舶や飛行機のコンテナを積めること)
+ スピード (あまり小細工をせずに300~400 km/h出せること)
+ 互換性 (狭軌あるいは標準軌から四線軌条を経て移行できること)
が挙げられよう.最後の「互換性」は,私が超広軌というものに思いが至るきっかけとなった要素である.また,こうした突拍子もない話の中で取り上げるのも滑稽な話ではあるが,軽い制約としては
- その気になれば在来線に新軌間の台車を履かせられること
- あまり無意味に広くても仕方がない
というものを考える.
まず最低限必要な軌間は,4番目の要求である互換性,すなわち1067 mmあるいは1435 mmと何とか四線軌条で共存させたいというところから導き出される.四線軌条にこだわるのは,車両の中心線が軌間によってずれるのを防ぎたいからである.ここで参考にすべきは,1067 mm軌間と1435 mm軌間の共存が,三線軌条では何とか成立し四線軌条では成立しないという事実である.つまり,レール間のピッチは368 mm程度必要である.これによれば,1435 mmと新軌間とを共存させることを考えると,単純計算で2171 mmは必要になる.
次に,これが限界ではないかという値は,1番目の制約から導かれる.つまり,在来線(全幅2870 mm程度)の車両に辛うじて新軌間の台車を履かせることを考えれば,2870 mmより大きくすることはどうあがいても不可能である.
結局のところ,考えられる軌間は2171 mm以上かつ2870 mm未満ということになる.ここから色々と政治的に妥協したり技術的に努力したりすると,2000 mm程度に落ち着くのではなかろうか(※).
ちなみに,現時点でもっとも大きな車両限界は,英仏海峡トンネルにおける全幅4100 mmならびに全高5600 mmである.当面ないとは思うが,ポテンシャルとしては,このサイズがユーラシア大陸を走る鉄道の標準になり得る.そして,この規格に準拠した車両を300 km/h超のスピードで無理なく走らせることを考えるならば,2000 mm程度の軌間もさほど突飛なものではない.
そう遠くない将来,化石燃料が手に入りにくくなれば,船舶や航空機に頼っている旅客や貨物は,嫌でも鉄道へとシフトせざるを得なくなる.これらの負担を一身に受け止めるであろう鉄道を,二百年近くも昔の規格に押し込めるのは酷というものである.おそらく,私が生きているうちに,ここで提唱した超広軌鉄道が実現することはないであろう.しかしながら,画期的な軌間とともに生まれ変わった鉄道が,遠い未来の世界において繁栄の中心にあることを信じて筆を置くことにする.
※ これは拙ブログのテーマである「2000」に半ば強引に合わせた.本来の趣旨であれば2200 mmくらいが妥当であろう.