



おがらん神社を越えた落合宿のその先は
名も知らぬ山々が霧雲にかすみ
遠くには雷の音が高く太い音を響かせる…
巷の噂では雷注意報
それが厄介なんですよ雨よりも風よりも…
なんせ背中にささる鯉のぼりの御陰様で
こんな時は歩く避雷針…
そんな安全をおがらん神にお祈りしつつ
今日も元気に出発進行!
国道と交わりながらの中仙道は
ここから山の峠へと大き過ぎる進路変更…
やがて車の音も聞こえなくなり
川のせせらぎと小鳥のさえずり森の小道…
そしてそれをぶち壊す雷様…
それが怖くてたまらないので御座います…
そんな自分を励ましながらに歩いた道は
少しずつ登りどんどん登り
更に更に登る山岳信仰的な様相に急変貌…
この段階でこのレベルって事は…
なんて事を考えると辛くなってくるので
「目的地まであと500mです…」と
カーナビ口調を交えながら一歩また一歩…
そしてやがて
道は一面敷き詰まる石畳街道へ突入する…
石畳というのは古い時代の舗装道路の事…
雨が降ってぬかるむ事も無いが
滑って転んだ時のダメージは通常の二倍!
恐らく昔の人も
そんな事を思って歩いただろう長い石畳…
芭蕉や西行や正岡子規という俳人歌人
そして歴史の英傑達もみんな
この石畳の街道を西へ東へと歩いている…
でも誰かしら滑って転んだと思う…
明治維新三傑の木戸孝允も幕末混乱の中
この道を抜け
中津川の料亭やけ山に身を隠したが
滑って転んで痛かったという記録は無い…
さて…
そんな滑った話自体がスベったところで
道はいよいよ標高を重ね
朝の風景を下界に見下ろすまでと相成る…
しかしそこに広がるのは耕された水田園…
それまでの鬱蒼なる暗がりと打ち代わり
光の射す棚田の明るんだ緑…
それが途切れながら更に山の斜面を登り
空へ空へと向かっている…
人は耕やす天までも…
足を止めて眺めたそこからの風景の彩色
それはまだ僕の知らない
あの事件の前触れだったのかも知れない…
つづく
