BSで黒澤明作品のアンコール作を放映しています。3-4度は観たであろう志村喬の「生きる」。
私は還暦をすぎ定年を迎える主人公よりは上で、いま少し若々しいと自負しておりますが、それはさておき、自分の年とともにこの作品の解釈がものすごく違ってきています。
以前は物語にある「役所機構への痛烈な批判」に拍手喝さい。その印象が強かったのですが、今回は、人間が本来持っている「ナニカをのこしたい。自分の存在を感じてほしい」という願望が「生きる」エネルギーになることがテーマだとおもった。
もうひとつのテーマである病状告知。今日ようやく病状を説明するようになってきましたが、「死」の選択技はまだ論議すら始まっていない。私も、いつ植物人間状態で生かされるとも限らない。それでも生きたいか。否。しかし、その意志表示ができないとしたら。
私たちは生まれ出る選択はなかった。しかし、死の尊厳は最大最後の選択だと、常々思ってはいるのですが・・・。
それにしても、志村喬さんの演技には鬼気せまるものがありました。『いのち短し・・・』とぽつぽつと歌うシーンには、みんな大粒の涙がおちたでしょう。しかし、なんともいえない気持ちよい余韻にしたりました。
黒澤作品では「蜘蛛巣城」のダイナミック、モノクロの美しい画面いい。主役の三船敏郎がおびただしい弓矢で射殺されるシーンと、「乱」の仲代達也が、焼け落ちんとスル城から出てくる様に結びついている気がします。
昨夜は「赤ひげ」でした。三船の絶好調な演技ですね。