竹橋にある国立近代美術館の常設展を観ようと思って行ってみた、入場料を払おうと500円を用意すると、チケット売場の窓口に「65歳以上無料」と出ていた、美術館に入ったところにある館内検札の係りの人に運転免許証を出して無料で入場したが、ホントこんな老人優遇はやめるべきだ、そんな金があったら現役世代の減税に回せと言いたい
常設展のある美術館は好きだ、一番よく行くのは国立西洋美術館だが、ここ国立近代美術館も常設展があったのを忘れていた、企画展に来るときに一緒に常設展も観るが、とても観きれない、時間があるときにゆっくり、何度でも観るべきだろう
常設展を説明するwebページには、「1952年の開館以来の活動を通じて収集してきた13,000点超の所蔵作品から、会期ごとに約200点を展示する国内最大級のコレクション展」と宣伝している
今期のみどころは、「4階5室では「シュルレアリスム100年」と題し、20世紀芸術における最重要動向の一つであるシュルレアリスムをご紹介しつつ、マックス・エルンストの新収蔵作品を初公開します。3階8室では、1950年代に脚光を浴びた芥川紗織の生誕100周年企画をご覧いただけます。2階ギャラリー4の「フェミニズムと映像表現」では、1970年前後を起点に、ヴィデオなどを用いた映像表現の重要な担い手となった女性アーティストをご紹介します」とある
順路は4階から始まって、3階、2階と降りてくるルートだが、とても全部は観れない、何回も来るべきと言ったのは、そのためもある、では観た順に、それぞれの部屋で良かったと感じた絵の一部を紹介したい
4階(1-5室 1880s-1940s 明治の中ごろから昭和のはじめまで)
1室 モデルたちの生誕・没後数十年
オスカー・ココシュカ、アルマ・マーラーの肖像、1912年
アルマはグスタフ・マーラーの妻、グスタフの没後、7歳年下の画家ココシュカと恋愛関係になるが、そのあとバウハウスの創設者になる建築家ヴァルター・グロビウスと再婚、ココシュカはショックを受ける、美しいとも怖ろしいとも見えるこのアルマの姿
ピエール・ボナール、プロヴァンス風景、1932年
9月20日から仏映画「画家ボナール ピエールとマルト」が公開されるそうだ、そんなこともあってボナールの絵をよく観ておこうと思った
2室 明治時代の美術
青木繁、運命、1904年
最近読んだ森村泰昌氏の「生き延びるために芸術は必要か」の中で、「海の幸」で画壇に大きな衝撃を与え、短時間で走り抜け、29歳で亡くなった青木を、年齢も故郷など似たものどうしの坂本繁二郎と対比して紹介していたので興味を持った(その時のブログはこちら)
3室 開発される土地
坂本繁二郎、三月頃の牧場、1915年
森村泰昌氏の本では坂本繫二郎の「牛(うすれ日)」を紹介していたが、この絵も同じ牛を描いたもので、本で紹介された「牛」とよく似ている描き方だと思った
木村荘八、新宿駅、1935年
4室 夢想と自由と―谷中安規の世界
谷中安規、夢の国の駅、1935年
彼の版画はどの作品も独特の雰囲気を持っている、素晴らしいと思った、光と影のコントラストのなかで、夢とも現実ともつかない幻想的な世界が広がる谷中作品、と紹介されていた
5室 シュルレアリスム100年
福沢一郎、四月馬鹿、1930年
3階(6-8室 1940s-1960s 昭和のはじめから中ごろまで、
6室 「相手」がいる
藤田嗣治、ソロモン海域に於ける米兵の末路、1943年
私は戦時中に戦意高揚のための絵を描いた藤田を責めない、国家の危機にあっては国家に貢献したいと考えるのは当たり前だからだ
また、美術館の説明の中には、「日本軍の残虐行為や迫害、捕虜に対する非人道的な扱いは、のちに東京裁判やBC級戦犯裁判などで戦争犯罪として裁かれました」とあるが、関心しない、戦時中の残虐行為はすべての戦争当事国であった、原爆投下や東京大空襲は明白な戦争犯罪である
8室 生誕100年 芥川(間所)紗織
芥川(間所)紗織、女(Ⅰ)、1955年
桂ゆき、ゴンベとカラス、1966年
川原温、孕んだ女、1954年
川原氏については後出参照
10室 アール・デコの精華/歴史の描き方
安田靫彦、保食神(うけもちのかみ)、1944年
2階(11–12室 1970s-2010s 昭和の終わりから今日まで)
11室 Lines and Grid
河原温、JUL 15 1970 Todayシリーズ、1970
昨年旅行したミュンヘンのモダン・ピナコーク美術館で観た唯一の日本人展示作品が河原温氏の同じような作品であった(こちら参照)、それが今回の常設展で、この作品だけでなく、他にも多く展示されていたのを見つけてうれしくなった(上の8室参照)、この日付だけの作品は奇異な感じを受けるが、「TODAY」という作品で1966年1月4日から始められた、その日の0時から書き始めその日のうちに完成させる、その日に河原が生きていたことを表す、その真正さは作品を表す箱の中に当日の新聞などが入れられていることで証明される
美術館で鑑賞しているとなぜか1時間くらいで非常に疲れてくる、集中して観れるのは1時間半くらいだ、この日は1時間15分くらいいて限界に達した、しかし、勉強になった、また来たい