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トリオ・ミンストレル <東京公演>を聴きに行く

2024年09月28日 | クラシック音楽

東京文化会館、小ホールで開催されたトリオ・ミンストレルの公演を聴きに行った、5,000円、自由席、小ホールの半分以上の席は埋まっていた、シニア層が多い感じがした、14時開演、16時終演

出演

トリオ・ミンストレル

  • ヴァイオリン:木野雅之
  • チェロ:小川剛一郎
  • ピアノ:北住淳

トリオ・ミンストレスは1993年結成、1997年に吟遊詩人と南仏プロバンス地方に吹く季節風の用語を合わせてMinstrelsと名付けた、メンバーの3人ともそれぞれ、同じような時期にロンドン、パリ、ブタペストに住み、研鑽を積み、ヨーロッパの香りや文化をたっぷりと吸収した、そしてワインと同様、年を重ねるごとに熟成が進み、最高のヴィンテージものの演奏を聴かせるという

若い音楽家も良いが、シニアの年季の入った演奏というのも良いものだ

曲目

トビュッシー:ミンストレル(小川剛一郎編曲)
シューベルト : ピアノ三重奏曲第1番 変ロ長調 Op.99 D898
ショスタコーヴィチ : ピアノ三重奏曲第2番 ホ短調 Op.67

(アンコール)

ショスタコーヴィッチ:抒情的なワルツ
プロコフィエフ:戦争と平和(小川剛一郎編曲)
八木節
カタルニア民謡:鳥の歌(小川剛一郎編曲)

演奏された曲について

シューベルト : ピアノ三重奏曲第1番 変ロ長調

ピアノの北住の説明によれば、この曲はフランス革命の反動があり、王政復古の保守的な状況になってきた時期に作曲された作品で、おとなしい変化のないとも評される曲であるとのこと

私はこの曲を聴くと村上春樹の小説「海辺のカフカ」を思い出す、「海辺のカフカ」では、シューベルトのピアノソナタ17番のほかに、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲「大公」も出てきて、こちらの方がこの小説のイメージにピッタリはまっていると思っていた。

そして、私の持っている「大公」の2つのCD(ルービンシュタイン、ヤッシャ・ハイフェッツ・フォイアマンの三重奏とカザルストリオ)には両方ともシューベルトのピアノ三重奏がカップリングされており、両方ともよく聞いていたからだ。海辺のカフカ⇒大公トリオ⇒シューベルトピアノ三重奏、という連想である。特に第1楽章の雰囲気が「大公」の第5楽章かと勘違いするほど似ており、「海辺のカフカ」の雰囲気にも合っていると思っている、その曲を今日はじっくり聴けて良かった

ショスタコーヴィチ : ピアノ三重奏曲第2番はピアノの北住の説明だと第2次大戦の最期の1944年の作品で、友人のソレルチンスキーの死を悼んで作曲されたもの、初めて聴く曲だと思うが、確かに全体的に戦時中かつ友人の死ということに接して重々しい曲であった

そして、北住はピアノを使いながらこの曲に込められいる「ファシズム糞くらえ」というショスタコーヴィッチの暗喩が音符に込められているところを具体的に説明してくれたのは興味深かった、音符が読めないのでよくわからなかったが、音符のある部分を連続してドイツ語で読むと、そのように読める部分があるとのこと

つい先日聴いた彼の交響曲第5番もベートーヴェン風に「苦悩から歓喜へ」というスタイルをとっているが、実はそうではなく、スターリン体制の批判が込められていると言われているが具体的にどうそれが表れているとかの説明はなかったので、本当かな、と思っていたが、今日のように説明を受けると「なるほど、そういうこともあり得るな」と思った

さて、今日の観劇の感想を少し述べたい

  • 上にも書いた通り、今日の公演では主としてピアノの北住淳がマイクを握り、曲の説明などを丁寧にやってくれたのは有難かった、最後の方ではヴァイオリンの木野雅之も曲の紹介をしてくれて良かった、ただ黙って出てきて演奏して黙って終わる、というのは人気演奏家ならまだしも、特にこれからの若い人たちはどんどん自分たちをさらけ出して観客との距離を縮めてほしいと思う
  • 今日はプログラムの曲目を1時間40分くらいで終わり、残りの時間はアンコールを4曲も演奏してくれたのは良かった、特に日本の八木節は演奏中に「いよー」の掛け声も入れながらの熱演に盛んな拍手が起こった、アンコールは全曲良かった

いつまでもお元気でご活躍ください