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藤原歌劇団創立90周年記念公演「ファルスタッフ」を観劇

2025年02月05日 | オペラ・バレエ

ヴェルディの オペラ「ファルスタッフ」全3幕を観劇した、場所は東京文化会館 大ホール、3階D席6,000円、8割がた座席は埋まっていた、2時開演、5時終演

「ファルスタッフ」はヴェルディの最後の作品で喜劇、1893年ミラノスカラ座初演、初演の時にヴェルディは79才になっていた

歌劇団の宣伝文句は、太鼓腹の老騎士に学ぶ "人生哲学"「ウインザーの陽気な女房たち」が男性社会に物申す!?オペラの巨匠ヴェルディの終着点は、シェイクスピア原作の極上喜劇だった、とある

原作:シェイクスピア『ウィンザーの陽気な女房たち』
台本:アリーゴ・ボーイト
総監督:折江忠道
演出:岩田達宗

出演:
ファルスタッフ:上江隼人
フォード:岡昭宏
アリーチェ(フォード夫人):山口佳子
ナンネッタ(アリーチェ娘):光岡暁恵
フェントン(ナンネッタ恋人):中井亮一
メグ・ページ:古澤真紀子
クイックリー夫人:松原広美
カイウス(医師):所谷直生
バルドルフォ(使用人):井出司
ピスト―ラ(使用人):伊藤貴之

指揮:時任康文
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:藤原歌劇団合唱部

この日の公演について

  • この公演は藤原歌劇団創立90周年記念公演で、ラストを飾る演目
  • 開演45分前に到着して座席に座ると、これから劇団総監督折江忠道による作品解説がありますとアナウンスがあり驚いた、事前にそのような案内が公表になっていただろうに見逃していた、早めに来てよかった
  • 体形がファルスタッフそっくりな総監督が舞台のカーテン前に手話通訳の女性と一緒に現れ、大きな生声で自己紹介と来場の挨拶をされた、その後マイクを使い作品解説をしてくれたのは良かった
  • あらすじや登場人物の紹介を除いてポイントとなるところを簡単に記すと、この作品はエリザベス女王がシェークスピアの「ヘンリー4世」を見て感動して、そこに登場するファルスタッフが恋する物語を観たいと述べたのにシェイクスピアが応えて「ウィンザー城の陽気な女房たち」を作り、ベルディがオペラにしたもの、登場人物が10人と多く3幕6場の早い展開である、この作品で言いたいことは「人生自分の信ずる道をどんなことがあっても歩め、そうすればうまくいく、人生は冗談のように生きよ」ということだ、このオペラは歌の旋律で聴かせることに加え10人の歌声が縦横に重なりあって得も言われぬ構築力が見られることに特徴があり、それは1幕2場の9重唱や3幕2場の大フーガがそうだ、などの説明があった
  • 最後に次期総監督は角田和弘氏だとしてご本人が登壇して挨拶された

観劇した感想を記したい

  • 「ファルスタッフ」はあまり聴きこんだ作品ではないので論評は全体的な印象しか書けないが、今日の歌手、オーケストラ、演出はいずれもよかったと思った、ファルスタッフの上江隼人は最初こそ声量がイマイチだと思ったが段々調子が上がってきた
  • 舞台の場面転換は舞台上の円形の床に乗った舞台セットを人力で押して回転させ、裏表で別の場面を見せるやり方で、演劇でこのような舞台転換は観たことがあったが、オペラでこのようなやり方を観たのは初めてだった、機械のみで回転させることもできるのであろうが、手作り感を出すためにあえて人力も使って回転させる方式を採用してるのだろうと思った
  • いずれの舞台セットもオーソドックスな感じで良かったが、一番最初の「宿屋ガーター亭」のセッティングが何となく自分の抱いていたイメージと違っていた、階段状の室内になっていて宿屋と言う感じがしなかった
  • 劇の盛り上がりからすると3幕2場の「月明りが照らす公園。大きなオークの木の下」が一番盛り上がってよかった、歌手たちの演技・衣装・照明や歌も、演出もいずれも最後の大団円の盛り上がりを見せて楽しかった
  • 女性陣の4人だが、アリーチェ、メグ、クイックリーの3人は友達だし年齢も同じくらいの母親世代だが、ナンネッタはアリーチェの子供だから1世代若いはずである、ところが衣装や髪形などの外見上は世代の違いは感じなかったのでちょっと奇異に思った
  • セリフについては現代でよく使用される用語に置き換えて適宜使用(翻訳)されていたのはわかりやすかった、例えばファルスタッフの肥満をメタボと言ったり
  • 総監督も説明していた「人生を自分の信ずるところに従い歩め、冗談のように生きろ」とか、劇団宣伝文句の「太鼓腹の老騎士に学ぶ "人生哲学"」だが、自分は冗談云々についてのファルスタッフの人生哲学には感情移入はできなかった、ファルスタッフは反面教師でしかないと思ったがそれは人それぞれで良いのでしょう
  • この日の管弦楽は時任康文指揮の東京フィルであったが素晴らしい演奏だと思った、メリハリが効いた良い演奏だったと思う、この日の東京フィルは先日の阪田知樹リストピアノ協奏曲公演の際に見られた楽団員の元気無さそうな印象は感じられたかった、カーテンコール時にオーケストラピットも照明が当てられたのでオペラグラスで覗いてみると皆さん立ち上がって舞台の歌手たちに拍手を送っていたし、笑顔で隣どうしの同僚と感想を述べあっているような感じがして安心した

楽しめました