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映画「対峙」を観る

2024年08月14日 | 映画

映画「対峙」をアマゾンプライムで観た、追加料金440円、2021年、111分、アメリカ、原題:Mass、監督フラン・クランツ、高校銃乱射事件の被害者家族と加害者家族による対話を描いたドラマ。

原題のMassはラテン語だと Missaミサ、キリスト教の典礼で、この映画の舞台は教会の会議室、最後に教会の聖歌隊の練習が流れ、癒しが演出される

主演、加害者の両親はリード・バーニー(1954年、米)、アン・ダウド(1956年、米)、被害者の両親はジェイソン・アイザックス(1963年、英)、マーサ・プリンプトン(1970年、米)

アメリカの高校で、生徒による銃乱射事件が発生、多くの生徒が殺害され、犯人の少年も校内で自ら命を絶った。事件から6年。息子の死を受け入れられずにいるペリー夫妻は、セラピストの勧めで、加害者の両親と会って話をすることに。教会の奥の小さな個室で立会人もなく顔を合わせた4人はぎこちなく挨拶を交わし、対話を始めるが・・・

最近のアメリカ映画では珍しいストーリーで見せる映画、舞台はほぼ室内の一室のみ、登場人物の二組の夫婦の会話のみの勝負、いかに盛り上げて手に汗握らせるような映画にするか、監督や脚本家の腕が試される映画だった

映画が始まる時点で何の話だか全く分からない、二組の中年夫婦が教会の一室に案内され、会話を始める、最初はぎこちない、しかし、だんだん話の内容からこの二組はある事件の加害者と被害者であることがわかってくる、そして、それは当人たちではなく、彼らの子供たちのことだとわかってくる・・・

ストーリーの補足と併せて映画を観た感想を述べたい

  • この映画はある学校で、一人の生徒が突然、銃を乱射して周りの生徒を殺害して、自らも自殺した、被害者の一人の親が登場人物の一組の夫婦であるが、話し合いの最初の方で、自分たちは訴訟を起こすつもりはない、何らかの賠償を請求するつもりはないことがわかる、このような心境になるまでには相当な心の葛藤と、事件の結果を受け入れる時間が必要であっただろう
  • 被害者の両親が加害者の両親に聞きたかったのは、子供がそんな行動をどうして起こしたのか事前にわからなかったのか、ということだ、加害者の両親がいろいろ子供の日ごろの行動を説明していくと、どうも加害者は孤独で友達も作れず、家の自室にこもりがちで、孤独をパソコンのゲームなどで癒していたことがわかってくる、親がいくら言っても心を開かない子供だったことが明らかになる
  • そんな子供を相手にどうしたらいいかわからない両親の苦悩がだんだんわかってくる、被害者は別に学校の成績が悪いわけではないが社会性に欠けているのだ、そして両親が心配して話しをすると「うるせーな」という感じで干渉をかたくなに拒否する子供だったことがわかる
  • ここまで来て、先日読んだアメリカの本、Jonathan Haidt著「The Anxious Generation」を思い出した、アメリカをはじめアングロサクソンの国々ではZ世代のメンタルヘルスがスマホとSNSの普及で急速に悪化し、子供の不安、憂鬱、孤立、不健康、時に凶暴性な行動が急激に増えていることが指摘されているのだ、この映画の加害者の少年もまさにこの不安世代であり、社会的順応性を喪失した世代であることが伺える、この子供の不安と銃社会が結合するととんでもない結果を招来することがこの映画で描かれているのだろう

  • 一番最後に加害者の母は、子供と話をして、勉強をしなさい、そうでないと幸せになれないわよ、と言うと、子供は幸せになりたくない、いい成績はいらない、と言う、なぜとと問い詰めると言い争いになる、あとは喚くだけ、「出ていけ!殴るぞ」と言われ怖くなった、と言う・・・まさに「The Anxious Generation」で描かれていた世界そのものだと感じた、この本では、ある両親がスマホとSNSに一日中没頭する子供を見て、「子供をスマホに奪われたような気がする」というコメントが紹介されている、まさにその世界だと思った
  • スマホの害悪は結構あるだろう、子供もそうだが大人もだ、私はLINEはやらないがLINEをやっている人を見るとしょっちゅうスマホの着信と返信を繰り返しており、落ち着かない、便利になったが失ったものも大きいでしょう、むかしが全部よかったわけではないが、新しい時代に親も子供もどう生きていくのか、もっと議論があってよいだろう
  • その点、この映画では最後の場面で、キリスト教の聖歌隊の聖歌の練習が聞こえてきて、その歌の内容に解決策があるような感じを受ける、だから原題はMassとなったのだろう(邦題は物語の現象面を重視した訳だろう)、この点、「The Anxious Generation」とは違う解決の方向性だが、解決策は一つではないでしょう

映画の最後に予想もしないようなどんでん返しがあるわけではない、その点、少し不満は残るが、観る価値はある映画だと思った



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