2022年11月、本多劇場での演劇公演、KERA・MAP #010 「しびれ雲」をテレビで録画して観た。
大胆な舞台設定と卓越したドラマで劇場空間を操る、日本演劇界の旗手ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が劇団以外の活動の場として2001年に始動した“KERA・MAP”シリーズの新作。
KERAは「今回は姑息に笑わせようとか無闇に緊張させようとかいった狙いが全く無い、真っ直ぐで暖かでささやかな群像劇、普遍的な人間の営みを描いていて、登場する人々もどこにでもいる平凡な人達、一方、失われてしまった家族と言う制度とか型みたいなものも描いている、お客さんはどこかしら自分と重ねる部分があるのではないでしょうか」と言っている。
更に「そろそろこうした芝居を作っておきたかった。50代最後に皆で創作できたのは幸せです。なので、リラックスして好きに観てもらいたいと思っています」と述べている。「小津作品に通じるようなものをつくって見たい」とも述べている。
ストーリーは、昭和の初期、ある地方の小さな島(梟島)で、小さなコミュニティがあり、未亡人の波子(緒川たまき)やその妹の千夏(ともさかりえ)、その夫の文吉(萩原聖人)をはじめとした人々が住み、家族、友人、恋人など、それぞれに人間関係を育む人々の日常が繰り広げられている。そんな島に、ある日忽然と謎の記憶喪失の男フジオ(井上芳雄)が現れて・・・
タイトルの「しびれ雲」とは不思議な形をした架空の雲で、島にはしびれ雲が浮かぶと、その日を境に潮目が変わるという言い伝えがある。 登場人物の人生も、しびれ雲をきっかけに変っていく。
2時間半くらいの劇だが、登場人物相互の人間関係を把握するのに時間がかかる、事前に予習しておいた方がわかりやすいだろう。場面転換が何回もあり、退屈させないが、私見ではもうちょっと短い公演時間の方が良いかなと感じた。
出演者では、ともさかりえが良い味を出していたと思うし、その他でも緒川たまき、井上芳雄、萩原聖人などがいい演技をしていたように思えた。なお、緒川たまき(52)は実生活ではKERA夫人であり、KERAが脚本・演出を手がけた作品に多く出演している。ストーリーは若干冗長なところはあったが、最後まで飽きずに観れた。
出演は、
井上芳雄:フジオ(島にやってきたばかりの男)
緒川たまき:石持波子(6年前に夫を亡くした)
ともさかりえ:門崎千夏(波子の妹)
松尾 諭:占部晋太郎(医者)
安澤千草:石持勝子(波子の義理の姉)
菅原永二:縄手万作(ネジ工場で働く)
清水葉月:縄手やよい(万作の妹)
富田望生:石持富子(波子の娘)
尾方宣久:菊池柿造(バーの経営者)
森 準人:石持伸男(勝子の息子)
石住昭彦:石持一男(伸男の祖父)
三宅弘城:佐久間一介(ケーキ屋)
三上市朗:石持竹男(勝子の夫、伸男の父)
萩原聖人:門崎文吉(千夏の夫)
作・演出
ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA、60才)
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