ゆっくり行きましょう

気ままに生活してるシニアの残日録

劇団民藝「囲われた空」を観劇

2024年12月19日 | 演劇

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA、劇団民藝公演「囲われた空 CAGING SKIES」を観劇した、6,600円、13時半開演、終演16時15分ころ、座席は8割以上埋まっていたか、中高年が多いと感じたが若い人も目についた

■原作:クリスティン・ルーネンズ
■脚色:デジレ・ゲーゼンツヴィ
■訳:河野哲子(『囲われた空 もう一人の〈ジョジョ・ラビット〉』小鳥遊書房刊)
■上演台本:丹野郁弓
■演出:小笠原 響
■出演:日色ともゑ、石巻美香、石川 桃、釜谷洸士

劇団民藝は1950年4月3日に(前身は1947年発足の民衆芸術劇場=第一次民藝)築地小劇場、新協劇団など「新劇」の本流を歩んできた滝沢修、宇野重吉らによって民衆に根ざした演劇をつくり出そうと旗あげされた

この劇団の歴史をwebサイトで見ると、俳優で知っている名前は、宇野重吉、北林谷栄、大滝秀治、樫山文枝、日色ともゑだけだった

劇団の歴史に書かれている過去に手掛けてきた作品を見ると、内外の小説、戯曲、創作劇などである

さて、この日の物語だが、民藝のwebページから要約すると

2019年に上映されたアメリカ映画『ジョジョ・ラビット』は、反ナチス映画として話題になりアカデミー賞脚色賞を受賞、この映画の原作小説『Caging Skies』をベネズエラ生まれのデジレ・ゲーゼンツヴィが戯曲化したもの

1944年、ウィーンにあるヨハニスの家、ヒトラーに忠誠を誓う17歳のヨハニス(釜谷洸士)は連合軍の爆撃によって重傷を負った、母のロスヴィタ(石巻美香)が怪我をした彼と祖母(日色ともゑ)の世話をしている

ある日、母の行動を不審に思ったヨハニスは、居間のソファの下からバイオリンを探り当てる、そこにはエルサ(石川 桃)、25歳のユダヤ人のパスポートが隠されていた、家族が寝静まってから書斎を調べると、壁にうっすら線があることに気づきナイフの刃を入れて押すとドアのように開き、壁の中には若い女性エルサがいた、そこから家族間の葛藤が始まる

観劇した感想を述べてみたい

  • 舞台が居間、書斎、寝室と3つに仕切られており、円形の回転する床の上にセットされ、人力により場面転換するという面白い設定であった、造作もよくできていると思った、ただ、場面転換が多すぎるように感じた
  • 出演者が4人だけという少人数なのが特徴で各俳優の演技が良く観れて良かった、主役はヨハニスの釜谷洸士とエルザの石川 桃だろう、釜谷はちょっと堅苦しいところが目立った、また、ところどころ大声で怒鳴るように話すところがあり、どうかなと思った、これは劇場収容人数が450人程度と大きすぎることもあるでしょう
  • 内容的にはナチスの思想の感化され、偏狭な考えに囲われた空間に生きていた若者がナチスが敵視するユダヤ人女性を家族がかくまっていたことに衝撃を受けるも、そのユダヤ人女性に惹かれていき葛藤する中でナチスの敗北により戦争が終わってぼう然とする、というところかと思ったが、第1幕の途中から集中力が途切れてしまい、演劇の内容が良く理解できなかった
  • 開演時間を間違えて開演1時間前に到着したので、プログラムを買い、席でじっくりと読み、大体のところは把握して臨んだけど、集中できなかった、なぜだろうか、何となく物語が観念的すぎて単調であるためかもしれない
  • 従って、劇団がこの演劇で何を観客に訴えたいのか、肝心のところがわからなかった、ナチスのような全体主義の思想にとらわれて自己を見失ってはいけない、ということなのか
  • プログラムの中には、「他人の命を救うためには自分や愛する者たちの生命を危険にさらされるか?」というデジレ・ゲーゼンツヴィ氏の解説があるが、惚れたエルザを助けるために家族を危険にさらすことができるのか、というのがそれなのか、そして結局、母がその犠牲になったということなのだろうか、そうであるとすれば、終戦後、エルザはヨハニスを置いて囲まれた空間を去って行き、二人はばらばらになるので、エルザを助けた代償はあまりに大きいということになる
  • プログラムに岡真理氏(早稲田大学文学学術院教授)の投稿があり、氏は「エルサを手に入れるためにヨハニスはあらゆる努力をし、彼をそれを愛ゆえの自己犠牲と考えるが、実際は自分本位な自己愛であることに気づかない」とあるから、そうなのかもしれない、更に氏は「エルサはヨハニスが自らの罪(ナチス信奉?)を告白して謝罪する機会を封じ、赦しを永遠に与えないという最悪の形で彼を罰する」と書いているのでヨハニスには救いがないということになる

さて、

  • この日は終演後、出演者と観客の交流会があったので参加してみた、半分以上の人が参加する熱の入れようだった、出演者のそれぞれのいろんな考えや苦労話、舞台裏の状況などが聞けて良かった、司会もうまかった

  • プログラムの岡真理氏の投稿を読んで「はて?」と思った、氏はエルサがヨハニスが罪を告白して謝罪する云々のあとに、元「慰安婦」のハルモニの「謝罪されなければ、赦すことができない」という言葉を思い出すと書いている、また、ナチズムに関係づけて「アラブ人はすべて敵」と見做す国民教育を行っているなどとイスラエルの批判をしている
  • 演劇にかこつけて慰安婦やパレスチナ問題などの自己の政治的主張をするのは演劇の政治利用であり慎むべきだ、そのような意見を主張をするのは自由だが、演劇と関係ないところでやってもらいたい

難しい演劇でした



最新の画像もっと見る

コメントを投稿