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ストレスのない生活を楽しむシニア

映画「敵」を観た

2025年01月26日 | 映画

池袋のシネマ・ロサで映画「敵」を観た、シニア料金1,200円、2023年製作、108分、監督・脚本吉田大八、原作筒井康隆、けっこう入っていた、シニアが多いが女性客も多かった、「シニアもの映画」はこれからもどんどん増えるだろう

筒井康隆が1998年に発表した同名小説の映画化、フランス近代演劇史を専門としていた大学教授をリタイアし、妻には先立たれ、日本家屋にひとり暮らす渡辺儀助77歳(長塚京三)、毎朝決まった時間に起床し、料理は自分でつくり、衣類や使う文房具一つに至るまでを丹念に扱う、時にはわずかな友人と酒を酌み交わし、教え子を招いてディナーも振る舞う、そんな穏やかな時間を過ごす儀助だったが、ある日、書斎のパソコンの画面に「敵がやって来る」と不穏なメッセージが流れてくると・・・

鑑賞した感想などを書いてみたい

  • この映画の前半は主人公の渡辺儀介の毎日の生活の様子を描いている、規則正しい生活リズム、自炊生活と食へのこだわり、買い物も洗濯も料理も全部自分でやり、机に向かい専門の仏文学エッセーの原稿を書いたりする、インテリの独り暮らしシニアの一つの理想的な生活でしょう、こういったものを淡々と描く映画は好きだ、欧州映画にこういったものが多いような気がしているが、日本でも昨年の役所広司のPERFECT DAYSなどがあった

  • この映画の儀介の普段の生活の特徴は、買い物以外はほとんど出かけずに家にいることであろう、自分が同じ立場になったらもっと積極的に出かけるだろう、映画や音楽鑑賞、美術鑑賞、街歩き、食べ歩き、ゴルフなどだが、一人で出かけたくなるような楽しみを持っているということがけっこう大事なのではないかと思った
  • 儀介を見ていると金に対する執着というものがあまり感じられなかった、節約しようだとか、金を儲けようなどの雰囲気は全く感じなかった、貯金がなくなったら死ぬと言う感じであったが、ここまで枯れた心境になれるものだろうかと思った
  • 金に対する欲望は感じられないが女に関する欲望・願望は全く枯れていないのが儀介の特徴で、これは同じ男としてわかるような気がした、男はこうでないと早死にするのかもしれない

  • 映画の後半はこの主題である「敵」に関する描写が中心となる、教え子を招いての自宅での食事の後の出来事や、たまに通うバーの女子大生アルバイトとの交流などに始まり亡くなった妻が出てきたり、現実と就寝中の夢と妄想や痴呆とが入り混じって、どこまでが現実かわからない、この辺りは私はあまり興味がわかないが、自分よりも何歳も若い教え子の既婚女性を自宅に招いて二人でワインを飲みながら食事をするなど現実には有り得ない設定ではないかと思ったが、妄想だからよいのでしょう、元気な証拠でもあるのでしょう
  • 「敵」とは何か映画の中でははっきりしてないと思う、現実と妄想とがごっちゃになってしまう症状のことを言うのか、別のことなのか、見ている人が考えろと言うことでしょう、この映画の新聞にのっていた映画評では「妻への思い、欲望、恐怖・・・、長年目を背けてきたものに襲われ、おびえきる渡辺の姿には身につまされる」とあった、潜在意識下にある何らかの暗い情念、悔い、願望などなのだろうか
  • ただ、これらの妄想について「敵」なのだろうかと思った、それが耄碌したシニアに襲ってきて苦しめるのだろうか、それは人によるだろう、楽天的な人はあまり気にしないかもしれない、何事も思いどうりにはならないよと達観している人も多いのではないか

  • この映画はモノクロで描かれているが、前半の現実はカラー、後半の妄想との戦いはモノクロと区別したほうが良かったのではないかと感じた、また、後半に老いの修羅場ともいえる場面が続くが、この物語は冒頭の夏から始まり、秋、冬、春と4つに区切って進められる、最後の春というのが妄想老人の最後であり、「また会いたいね」という儀介の言葉で終わる、春という季節と最期という点がミスマッチのような気もするけどどうなんだろう
  • 映画の最後で、儀介の遺産を相続した甥が遺品の中にあった双眼鏡を見て隣の家だろうか、何人かの人が集まって食事をしているのか何かしている場面を見て驚いて双眼鏡を落としてしまう場面があった、ここで何に驚いたのかわからなかった

後半はもやもや感が残った映画であったがシニアは観て良い映画でしょう



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