大垣行きの夜行列車・沼津発午前１時４７分に乗って

５０年前、まだ「ムーンライトながら」の名前はついていなかったと思う
家族には何も言わず
昼間のうちに駅のロッカーにボストンバックを入れておいた
荷物はそれだけ

三交代勤務の午後２時から１０時までの勤めを終えると
親友がHONDA750ccでぼくを沼津駅まで送ってくれた
酒の飲めない彼は
駅から１５分ほどのぼくの行きつけの居酒屋「路草」で
時間まで一緒にいてくれた

お世話になった女将さんとその娘のマコちゃんと最後のお別れをして
彼と駅に向かった

抑えきれない興奮のようなもの
親友との別れの時にぐっとさみしさがこみあげてきた

行くあてはない
暗いホームでひとりぼっちだ
とりあえず「大垣行き」に乗った
なんとかなる

あれからぼくは半世紀を生きたんだな
あの夜行列車が運行を終了したが
ぼくの放浪はまだまだ続きそうだ